【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【黙らっしゃい!】

2010年11月20日 | オムコイ便り
 一昨日の晩飯どき、突然、左鼻の奥に特有の鈍い痛みを感じた。

 ありゃ、風邪かな。

 しかし、このところ明け方もさほど寒くない。

 いったい、どうしたんだろう。

 そういえば、3日ほど前から次男が学校から風邪をもらってきてコンコン咳をしている。

 それが、こちらに飛び火したのだろうか。

      *

 念のために薬を飲んで、早めに床に着いた。

 だが、すぐにくしゃみが出てきて、しまいには鼻水が止まらなくなった。

 昨日の朝になると、今度は咳である。

 まいったなあ。

 頭がぼんやりして、まったく使い物にならない。

 夕方にはめまいもしてきて、晩飯も喰わずにふとんに潜り込んだ。

 風邪で食欲がなくなることは滅多にないのだが、珍しいこともあるもんだ。

      *

 12時間近くもふとんの中にいたのだから、かなり眠ったはずなのだが、今朝も頭がすっきりしない。

 いや、咳はますますひどくなっている。

 目もかすんだ感じだ。

 熱はないから、インフルエンザではあるまいが・・・。

 クリニックに行こうと思ったら、今日は土曜日休診であることを思い出した。

 病院も救急外来しかやっていないから、何時間待たされるか分からない。

 とにかく、今日も家で安静にするしかないようだ。

     *

 だが、それは無理な話であった。

 うとうとしかけるたびに、ラーが様子を見にやってくるのだ。

 彼女の「様子見」は、日本で長年なじんできた控えめのそれとは違う。

 強引に頭を持ち上げ、こめかみや首筋にタイガーバームを塗りつけてマッサージを始める。

 無理矢理引っ張り起こして、レモン絞り湯を口に持ってくる。

 何やらごそごそ始めたかと思うと、プラスター(湿布薬の類)を小さく切って、耳の下や喉に貼り付ける。

 こっちの気分など、お構いなしである。

「おいおい、とにかくいまは静かに寝かせてくれよ」

「ただ寝てたって、治らない。やるべきことをやってから、寝ればいいじゃない」

 だが、やっと静かになったかと思うと、今度は「薬木茶が沸いたから炉端で体を温めながら飲め」「飯の支度ができたから食べろ」である。

「ラー、あとでお前さんの言う通りにするから、とにかくしばらく寝かせてくれ」

「駄目だよ、ご飯をしっかり食べるのが先決だよ。それから、薬を飲んで外でも散歩すれば、すぐによくなるから。それが、村のやり方なんだから。寝ばかりいちゃあ、ますますひどくなるよ」

「あのなあ、俺はカレン族じゃないの。日本人には、日本人のやり方があるんだから、しばらく放っておいてくれよ」

 思えば、この3年あまり、風邪の治療法をめぐって、何度同じ言い合いを繰り返してきたことだろう。

 ラーのやり方も、それなりに理には適っているのだけれど、静かに横になっていたいときに、あれこれと村のやり方を強要されるのは辛い。

 わずか3年で、村の衆同様の体になれるはずもないのである。

「さあ、起きて、起きて。一緒に、ご飯を食べましょう」

 まったく、何度言ったら分かるんだろう。

 面倒なので、非常手段を取ることにした。

「黙らっしゃい!」

 むろん、日本語である。

 ラーも、その意味を知っている。

 こんな場合、カレン語では「セラギ、セラギ(静かにしろ)」で、あんまり迫力がないから、この古風な日本語の方が効果的なのだ。

 期待どおり、ピタッと静かになった。

 だが、敵もさるもの。

 このところ耐性がついたか、有効期限は20分と持たない。

 また、寝室のドアが開いた。

「ねえねえ、クンター。食欲がないみたいだから、おかゆにしたよ。さあ、起きて、起きて」

 まったく、もう。

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