「インターネットが危ない!」
窓際の机に向かっていると、店横で電話をかけていたラーがそう叫びながら飛び込んできた。
なに、ネットがあぶない?
すわ、また新型のウイルスでも蔓延し始めたか。
それとも、ネットを凌ぐような新たな画期的通信手段が誕生したか。
しかし、ネットに疎いラーがまさか、そんな話を親戚の老婆とするわけがない。
*
こちらに突進しながら指差す先は、裏庭に張り出したマンゴーの木の枝である。
そこは、ちょうど私が毎日ネットをつなぐテーブルの頭上に当たる。
「蛇だよ、蛇!緑色の蛇が、あそこに見えるでしょ」
しかし、緑色の葉っぱが邪魔をして、その姿を確認することができない。
そこで裏庭に出ようとすると、
「毒蛇だよ!あれに咬まれたら死ぬこともあるんだから、絶対に近づいちゃ駄目!」
そして、斜め前の雑貨屋に屯している村の衆に向かって、さらに声を張り上げた。
「毒蛇だよー!クンターがいつもインターネットをするところ!誰か、殺して!なにしろ、クンターがインターネットをするところなんだから!早く、早く。インターネット、インターネット!」
インターネットを知らない人も多いのだから、そんなことを連呼しても仕方がないのだが、すぐに顔見知りの若い衆が駆けつけてくれた。
そして、食べかけの菓子パンをかじりながら、枝の隙間を伺うようにその姿を確認する。
*
遠巻きにして見守っていると、彼が指差す枝の股に確かに胴回り10センチほどの薄緑色の蛇腹が見えた。
「クンター、危ないからもっと離れて」
そして、手にした竹の棒で慎重に狙いをつける。
一撃!
細長い胴体がだらんと垂れて、宙でカッと口を開いた。
そこへ、今度は横殴りの一撃。
どさっと地面に落ちたところで、頭に集中攻撃が加えられた。
頭部を完全に潰されてものたうつ胴体の半ばあたりが、ぷっくりと膨れている。
「ひき蛙でも飲み込んだのかな。それとも、赤ん坊かなあ。とにかく、これでよしと」
若い衆は、竹の棒を放り投げると、何食わぬ顔で去って行った。
そこへ、雑貨屋のおかみメーヨムも駆けつけてきた。
「クンター、危ないところだったねえ。頭の上に落ちてきたら、死んでたとこだったよ」
みんながそう言うところをみると、相当の猛毒なのだろう。
ラーが竹の棒ですくってみたら、体長は2メートルあまり。
抹茶のような淡い緑色である。
*
前回は、店横の壁際に小さなコブラ(たぶん)。
今回は、マンゴーの木の枝に緑蛇。
店横には安楽椅子をおいてよく本を読むし、マンゴーの木の下では朝、昼、夜とネットをつなぐ。
蛇の通り道になっているだろう崖上の傾斜地には、簡素な祭壇も、小さな畑も、生ゴミ捨て場もある。
しかも、隣家の方は草ぼうぼうだ。
うーん、デング熱どころか、毒蛇の巣窟。
ここをゴム草履でいつもウロウロしているのだから、いつ咬まれてもおかしくないだろう。
今後は「頭上注意」を励行するにしても、ネット処理に集中しているときに頭上に這い出してきて飛びかかられては、手の打ちようがない。
これも雨季の宿命とはいえ、ちとビビるなあ。
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まあ,どのヘビでも通常は攻撃性は低いため,気付かずに通り過ぎちゃうんでしょうが.なにかの間違いで頭に落ちてきたら,そりゃヘビだって泡を喰うでしょうから,思わずかみついちゃいますね.
くわばらくわばら.
さんのコメントの様に低いです。毒の量も少ないので象や水牛なんてとてもとても。が、猛毒です。マレーシアではこの蛇に咬まれて死ぬとニュースになるほどで、人間が咬まれる事は稀です。
確かに、猛毒がなければ観賞用にしたいくらいのきれいな緑色でした。写真でよく見かけるグリーンスネークのような光沢はなく、渋味のある色合いと紋様に惚れ惚れと見入ったくらいです。
*
しんちゃん
いわゆるグリーンスネークのような光沢はなく、体長も2メートル以上。腹も何かを飲み込んだかのように膨らんでいたので、別種なのかもしれませんね。とにかく、昨日から頭上と足元が気になって、首が疲れてなりません。