【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【ああ、もったいない!】

2010年06月27日 | オムコイ便り

 雨が、降りそうで降らない。

 空には雨雲が漂ってはいるのだけれど、どうも迫力がない。

 正午の気温は、28℃。

 空梅雨みたいに、妙に蒸し暑い。

     *

 昨夜は、高速で流れていく雨雲の隙間から見事な満月が見えた。

 雨の前兆と言われる羽蟻が舞い出したので、すべての電灯を消していたから、その明るさがひときわ際立っている。

「おかしいなあ、今どき雨雲が途切れて満月が見えるなんて。それに、羽蟻が舞っても雨が全然降ってこないよ。今年は、絶対におかしい。これじゃあ、田植えができないよ」

 ラーが、しきりに首をかしげている。

 先日、例年通りに田植えができそうだと書いたのだけれど、雨の量が少ないために、ジョーの田んぼでもまだ半分しか田起こしができていないのだという。

「ジョーだけでなく、村中の人たちが頭を抱えているよ。クンター、どうする?今年は米不足で、誰も米を売ってくれないかもしれない」

 前にも書いたが、わが家には田んぼがない。

 そこで例年、収穫のあとに友人や知人から余剰米を買い取っているのだけれど、去年は2度の大洪水で収穫量が激減して、半年分の米しか確保することができなかった。

 その米も、そろそろ底をつきそうだ。

 そこで、11月の収穫まではなんとか町の米屋で買ってしのごうと思っていたのであるが、今年も米不足となれば、ことは深刻だ。

 なにしろ、町で売っている米はいわゆるタイ米できわめてまずい。

 しかも、やたらと高い。

 ところが、村の米は日本米に近く、ふっくらと炊けて実にうまい。

 この米が11月以降も食えなくなると思うと、それだけで食欲がなくなってくる。

 うーん、参ったなあ。

      *

 ところで、わが家の米の大半を2匹の飼い犬と10数羽の鶏が消費することは、すでに書いた。

 まあ、鶏はともかく、この2匹の飼い犬が、最近、餌に見向きもしなくなった。

 わが村では、犬の餌は水でほぐした残飯だけと決まっている。

 ところが、犬を赤ん坊のように可愛がるラーは、残ったおかずまで与えたために、彼らの舌はすっかりぜいたくになってしまったのである。

 しかも、クッティアオ屋を始めてからは、スープ用の大量の豚骨が彼らの餌になった。

 そして、最近では彼らはそのクッティアオ味にも飽きてしまい、スープをまぶした残飯はもとより、こともあろうに豚骨にすら「プイ」と顔を背けるような始末だ。

 彼らが食べ残した餌は、腹を空かせた近隣の犬どもがかっさらっていく。

「ラー、ぜいたくのさせ過ぎだよ。腹が減って死にそうになれば、何だって食べるんだから、しばらく餌をやるのをやめろ」

 そう厳命しているのだが、「餌を食べないのは具合が悪いからに違いない」と思い込んでいるラーや子供たちは、相変わらず大量の残飯を彼らに与えては、その大半を無駄にしてしまう。

 村の2年続きの米不足を心配している割りには、わが家の米不足など一向に意に介さない様子だ。

      *

 気温が高く、食べ物が傷みやすいタイでは、残飯や食べ残しを驚くほどの潔さで捨ててしまう光景をよく見かける。

 冷蔵庫がさほど普及していないこともその一因なのだろうが、その貧しさの割りには、日本でいう“もったいない”という概念はまったく発達していない。

 食い物に細かいことを言うと、「キーニョウ(ケチ)」という烙印を押されかねない。

 その背景には、わが村のような貧村でも飢え死にする者はいないという自然の豊かさと自給自足の技術、それに家の前を通りかかる人に「アンミーヨー(飯食ってけ)!」と声をかける助け合いの精神があるのに違いないが、それにしても、毎日無駄になる残飯を眺めていると、深い溜め息が出る。

 ああ、もったいない!

*写真は、豚骨ベースの筍スープ。筍は、もちろん山で採ってきたものだから無料ではあるが・・・。

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2 コメント

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ケチはあかんが (しんちゃん)
2010-06-28 00:15:23
飢えを思う煩うことのない人達です。我らが勤勉さ、倹約など彼らの頭にはありません。タイに暮らしてそんなもん何時までも持ってると病気になります。腐ろうが回りまわれば肥料です。戦争せずに無駄をする豊かさ。あっ、またこじつけだぁー。
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もったいない (クンター)
2010-06-29 12:46:30
しんちゃん

 そう言えば、“もったいない”を合言葉に社会貢献したアフリカの女性活動家がいたような記憶がありますが、タイでは無理でしょうかねえ。
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