【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【分福茶釜の正体】

2014年08月22日 | オムコイ便り

 この得体の知れない物体、昨夜わが宿に宿泊した「ETオムコイ訪問団」の乗り物である(昨日の記事参照)。

 宇宙からのご一行だから、UFOということになるのだろうが、こうしてハッキリと確認された以上、もう「未確認飛行物体」とは言えまい。

 その愛らしい形と訪問団たちの狸のような風貌から、村の衆は「分福茶釜」と呼んでいるのだが。

     *

 ネタバレのくだらん前置きはこのくらいにしよう。

 これ、昨日オボートー(地区行政執行事務所)がわが家の周辺に配布したゴム箱なんである。

 素敵なエコ・グリーン(?)の蓋も本体も、堂々たる風格の受け台も、材質はすべて古タイヤ。



 数台の加工車を持ち込んだ業者たちが、1週間ほど村の公民館に泊まり込んで製作した力作だ。

 本体は加熱プレスした材を折り曲げてボルトで留め、底には水抜きの穴もある。

 試しに蹴飛ばしてみたが、なかなかに頑丈だ。

     *

 苦節7年。

 待ちに待った回収用ゴミ箱である。

 いや、数年前からわが家から20メートルほど離れたところまでは入っていたのだ。

 ところが、いくらオボートーに文句を言っても「しばらく待て」の一点張り。

 そのせいで、各家のゴミは勝手に焼かれたり、裏の崖に捨てられたり。

 大雨が降ればその残骸が流れ出して、わが宿のガイドコースである川向こうの棚田や展望台に至る川沿いの道は悲惨な状態と化していた。

 わが家でも、昨年に宿を開いてからゴミや空き瓶、ペットボトルなどが急増し、そろそろ近所の衆を糾合してオボートーを打ち壊そうかと企んでいたところだったのだ。

 やれやれ。

     *

 もっとも、すでに入っているところでもゴミの分別はなされていないし、末路は山奥への埋め立てだという未確認情報もある。

 おそらく、それが真相に近いような気もするが、そこまで気にしていてはこちらの身が保たないし、ゴミの山に囲まれて暮らさざるを得ない。

 ともかくも、皮相な悲願は叶った。

 役所で配布申し込み手続きをしてから、前述の製作期間も含めて2週間も待たされた。

 だが、ついにやってきたのだ。

 暇な番頭さんは、その愛らしい茶釜をうっとりと日がな一日眺めたり、撫でさすったり。

     *

 そうだ、こうしてはいられない。

 トイレの裏には、溜まりに溜まったゴミが山積みされているのだ。

 回収の日を逃しては一大事だ。

 そこで、同じく茶釜のまわりで喜び踊っている女将のラーに声をかけた。

「お~い、記念すべき初回収の日はいつだあ?」

「アッ、それを訊くのを忘れていたよお」

「・・・」

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