嫁兼女将のラーが、突然私のためにカレンバッグを織ると言い出した。
彼女の場合、何事も「突然」に始まることが多い。
そして、日がな一日家に腰を据えて行う根気のいる織物よりも、山や川に出てガンガン攻める魚獲り、カエル獲り、ヘビ獲りなどの狩猟採集活動の方を得意とする。
今月半ばまで連続した女性ゲストが、カレン織りに興味を持ち、中の二組もが染めや織りのワークショップに参加してきたことが刺激になったのか。
それとも、結婚前の約束を7年目にしてようやく実行する気になったのか。
真相は、よく分らない。
私としては、ありがたく織ってもらうだけだ。
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雑貨屋で染めた糸を買ってきたのは、10日ほど前のこと。
数色買ってきたが、私のバッグは日本の国旗の色である白と赤で織るという。
ゲストのSさんにも手伝ってもらいながら、まずは毛糸巻きの要領で糸を丸めてゆく。
使うのは、ビアチャン(象印ビール)の2本の空き瓶だ。
これが、私も子供の頃にやらされたように糸を引っ掛けた2本の腕の代わりになる、
いつも織っている次姉の家などには竹で作った紡ぎ機があるのだが、わが家にはない。
数日後、赤と白を2個ずつ巻き終わって準備完了だ。
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次に、それを持って姉の家に行き、数時間して戻ってきた。
すでに、赤と白の縦糸が竹を使った用具にセットされている。
織物が得意な姉に手伝ってもらったのだろう。
これを、玄関口のテラスの手すりに据え付け、腰当てを当ててテンションをかける。
「腰織り」と呼ばれるゆえんである。
あとは、ピンと張った縦糸の間に、柄に応じて交互に赤と白の横糸を通し、剣の形のような木の用具でこれを詰め織ってゆく。
なんぞと、いかにも分ったようなことを書いているが、縦糸には抑え用の数本の棒が挟み込まれており、何がどうなっているのかサッパリ分らない。
おまけに、ラー自身も細かい手法を忘れてしまった様子で、たびたび姉の家や近所の親戚の家に飛び出してゆくから、一向にはかどらない。
さらに、「見て見て、きれいな柄でしょ?」「見て、見て、うまく織れたでしょ?」「ねえねえ、織ってもらって嬉しい?」なんぞとしょっちゅう声をかけてくるので、うるさくて仕方がない、
さらにさらに、夜になると「腰が痛い」「肩が凝った」とマッサージを求めるので、こんなことなら織ってもらわない方が増しだ、なんぞとひそかに悪態もつきたくなるというものだ。
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まあ、それにしても。
織っているときの様子は実に楽しそうだし、あれこれと考えながら織り柄を工夫している時の顔は子供のようで、さほど悪くはない光景だ。
バッグの場合、慣れた人でも1週間ほどかかるという。
本人は「3日で仕上げてみせる」と息巻いていたのだが、すでに4日が過ぎた。
勢いでやっつける魚獲りやカエル獲りとは、まったく勝手が違うようである。
さてさて、どうなることやら。
ここはカレン式にのんびりゆったり、気長に待つこととしよう。
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こんな織物の勉強をしてみたい。
機会があったら、ぜひおいでください。