今日の一貫

米価格下落は、戸別所得補償の想定内に収まっている 米麦日報9月16日

米価下落対策を求める声が高くなっている。
13日の衆院予算委員会では、自民党富山選出の宮腰光寛委員が米価下落への対応で民主党に質した。
米価下落で、宮城の小野寺委員のところには悲鳴が舞い込んできているという。
直接所得補償は、自民党の政策が日本での嚆矢だとの話もあった。
そのとおりだろう。
宮腰委員、「戸別所得補償モデル事業」が米価下落の張本人との主張
だから政府は米価下落措置を講じ、政府米として買い上げろ、というのが質問の趣旨なのだろう。

ただ、クールに言うなら両者(戸別所得補償モデル事業と米価下落)の因果関係は定かではない。
確かに、「補助金を差し引いた額でしかコメを買わない」、という交渉をする業者もいたようだが、
こうした圧力が、10年の米価下落の原因とするのは業界でも一般的ではない。
「米麦日報」9月16日を引用しておいたが、業界では、むしろ否定されている見解。
農協の中で通用するロジックのようだ。

農協の考えが委員発言に反映しているとみた方が良い。
たしかに、農協の政治運動が激しさを増している。
市町村議会から県議会、市町村長、知事、等々へ戦列へ加わるよう要望活動を進め
各地で集会を繰り返している(米農家は暇なのだろうか)。
民主党の政調も、ぶれ始めているようにも見える。
あらゆる政策の方向性が見えないと言われる民主党だが、農政でもこの10月試されているといえよう。
つまり、政局なのだ。
民主党、米政策をどうする?

こうした動きに迎合する必要は全くないと思っている。
理由は二つ。
一つは、「緊急で政府がコメを買って、需給をタイトにし、米価下落を阻止せよ」というのが主張だが、
コメ過剰、米価下落は構造的問題であり、小手先で米を買って対応しても何にも問題は解決しない、
農家にとって何かが良くなることのない政策でもある(これは多く農家にとっては理解しがたいかもしれない)。
一つは、米価下落は、今のところ、戸別所得補償の想定内にとどまっていて、下落対応は現時点では充分ということ。
つまり慌てる必要はないということだ。

前者だが、緊急的米価対策を講じても何にもならないことは、07年時予言したとおり
07年緊急対策で40万トンのコメ買い付け、生産調整強化対策をしておきながら、
わずか2年後の09年産米で過剰という事態になってしまった経験はわすれてはならない。
しかも、この四半世紀、狼少年や、いたちごっこのように繰り返されている事象でもある。
もし緊急対策なら、同時に構造改革への決意と具体的対応を農業団体に問い、行動を担保すべきだろう。

さらに、後者に関しては、
「下落」とされ、情緒的なプロパガンダも含めて語られている際の米価根拠は、全農の概算金。
これは全農の思惑値であり、議論の俎上にのる米価ではない。
(資料として後日のせておこう。以下米麦日報の試算を引用するノで、詳しくは引用部分を参照のこと)
全農の概算金にしても、コシヒカリはほぼ各県1万円前後水準となっている。
これに、手数料1、5千から2千円をプラスすれば、全農とて12千円弱の米価を想定しているのがわかる。

これは、戸別所得補償の基準価格11978円の想定内。
いやむしろ補償水準より高く、補償するに至らずと言うこと。
コシヒカリ以外の価格安銘柄にとっては願ってもな保証水準。

さらに下がれば、変動部分による補填もある。
それが加わると、財源から逆算した下落変動幅は、1114円だというから、支持価格は10,864円米価水準まで補填されると言うこと。
はたして、来年1月未までの全銘柄平均相対価格がこの水準より低くなるかが見物なのだが、米麦日報によれば、識者の間ではそこまで下がらない、という意見が大勢を占めているという。

政府は、「米価は全農が言うほどには下がらないし、また下がっても、約束した水準は守るから安心してください」といったメッセージを農家に出せばそれですむことだ。

農産物価格が適格に農家に伝わらないことが米・稲作農業の課題。
つまり中央集権的共計が最大の問題。
経営者が育たない理由となっている。
価格の乱高下と戦っている野菜農家は、マーケティングを強化しており、顧客対応にも熱心、
価格情報を適格に行うことが、経営者を育てる最大の前提になる。

以下米麦日報を引用しよう。

 米価の下落と戸別所得補償(モデル対策)との因果関係を否定する声が、業界内の定説になりつつある。そのメカニズムを、やや大胆な推定も交えて、本紙風に検証してみたい。

 まず戸別所得補償だが、当初想定通り上乗せ交付の財源を約1300億円、対象132ha、単収530kgを前提に60kg換算してみると、細かい計算を省いて以下の通りとなる。

 

①基準生産費(標準的な生産に要する費用)は13703円。これと

②基準価格(標準的な販売価格)11978円との差額が(診定額交付1725円、い

わゆる「岩盤」だ。

③「当年産の販売価格」が②基準価格を下回った場合、その差額を支払うのが

④上乗せ交付(下落時差額補填)で、財源から逆算すると1114円が上限になる。

「岩盤」は米価と無関係に支払われるため、問題になるのは上乗せ交付部分。

 

③「当年産の販売価格」は、来年1月未までの全銘柄平均相対価格で判断される。この全銘柄平均が、「実際の出回り呈ではなく前年産の最終検査数量ウェイトで按分されて弾き出されるため、正確なものとなりづらい」といった問題点を抱えているのはすでに指摘した通り。

 

JA系統の概算金と戸別所得補償とは、似たような「下値限界」を設定していることになる。この時点で、すでに米価の下落と戸別所得補償との因果関係は否定されてしまうのだが、産地も含めた業界内の関心は、来年1月以降にある。というのも関係者が「さすがに1月いっぱいくらいは暴落しないだろう」と口を揃えるからだ。

 

すると次の焦点は、1月以降の「もう一段下落」があるのか否か、だ。


関係者
A21年産の残玉の存在、22年産の出来の問題、さらに当用買いに徹し続けている卸、という構図からすると、1月まで持ちこたえられそうだという感触は共感できる。

ただし、その後は、JA系統はともかく、それ以外の産地業者が我慢しきれなくなって損切り・投げ売りする可能性を否定できない」


関係者
BJA系統にとって概算金水準は『岩盤』というより『下値限界』だが、共同計算という方式をとっているJA系統の場合、伝家の宝刀である『複数年共計』に踏み切れ

ば、結果的に最終精算を終えてみると、『岩盤』を割り込んで赤、という可能性はありうる」

 関係者C「明らかに現在の価格に最も影響を与えているのは21年産在庫の存在。いずれダンピング販売に踏み切らなければならないのだろうが、そのタイミングを間違えると、『22年産と21年産の抱き合わせ販売』などという暴挙に至りかねない」




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