岩手で転作地の貸しはがしにあってる伊藤栄基さんのその後の話が、地元岩手県の朝日新聞に掲載されたのだという。
同じ貸し剥がしにあってる西部農産の話も載せているので、おもしろい。
しかし、この貸しはがし問題、農村のあり方をリアルに伝えているだけに、農政は一筋縄ではいかないと、改めて多くの方に感じさせるに充分だ。
ただ、評価は千差万別。農協系の人はたいした事ではない、騒ぎすぎといっている。農水省は、時々で表現が違うが、できたら沈静化して欲しいと考えている。
農業界の多くの人は、これをたまたま一部におきた事、とらえ、そのうち沈静化すると踏んでいる。
たしかにそうかもしれない。
しかし、ことは、農水省農政を根底から崩しかねない深刻な事象と私は考えている。なぜなら、農水省農政の担い手に関する問題が凝縮しているからである。
考えても見て欲しい。
農政が目標としているのは、2015年でその数(=農業経営者)36万~42万経営体数である。
内訳は家族農業経営33万~37万。
集落営農2~4万(法人化が要件)。
株式会社等の法人経営1万。
それで現実を見て欲しい。
現在伊藤さんも含め、認定農御者は19万。
計算のために、まー多く見積もっておよそ、20万としよう。これをあと8年で36万から42万とおよそ1.8倍から2倍強にするという政策なのだ。
集落営農や会社も入っているがその数は、3-5万、太宗は認定農業者などの家族経営だ。これって現実的だろうか?
政策に関し私は次のように考えている。
①政策というのは、目標が現実的でなければならない。
②目標を実現するための手法(施策)は最も有効に働くものでなければならない。つまりターゲットとツールは有機的関連がなければならない。
③その施策だが、操作的でなければならない。操作性は農水官僚の手元に置かれなければならない。施策はその操作性を自由に駆使して目標が実現されなければならない。
これって当たり前のことと思うのだが。しかし、これら全てが農水省施策では担保されていない。
例えば「目標」。民間企業ならよっぽど実現のための革新的手法が見つからない限り、こんな見通しはたてないのではないか?
なぜなら社会トレンドと違うし、む逆行している。
社会トレンドに逆行する計画を作るのは、関係部署のアリバイづくりでしかなく、民間企業でこのようなことをしたら、よっぽどそうなる理由に説得力があるか、チャレンジ精神と体制がしかりしているか、だろう。そうでなければ、担当者は他へ回されてしまうに違いない。
農水省施策では、戦後農政の大改革などといっているが、農業経営者をわずか、8年間得およそ2倍にするという新たな実現チャレンジ手法がでたとも思えない。
とすれば、最低限、貸しはがしのような認定農業者に困難を与えるような施策はやめた方がいいと考えるのが、常識人の考えだろう。やめないまでも貸しはがしには強力なブレーキをかけるべきだろう。
そうしないと施策の方向が農村の中に浸透しないからである。
つまり農水省の施策群は、担い手施策の入り口、つまり目標設定のところで既に破綻を来してるだけでなく、もしそれを目標としてかかげたとしても、そのためには相当の努力が必要だし、ましてや認定農業者などの成長にブレーキをかける事態には断固対処しないと、施策の方向が農村に浸透しないにもかかわらずそれを担保する施策がないという意味で二重に深刻ではないか?。
そうした意味で、農水省は本気になって農業経営者育成策を施策として執行しようとしているのか、大いに疑われてしまう事になる。今回のことでそれが農業関係者以外の多くの国民に白日のとにさらされてしまったのではないだろうか。
集落営農による貸しはがし問題は、はからずも、担い手育成には誰も手を貸さない、日本の農業は担い手がいなくてもう終わり、と言うメッセージを出してしまったのではないか。これは農政の担い手育成に関わる根幹を揺さぶったことになる。この問題やがては沈静化するにしても、対処法を見ていても、農水省施策の破綻を結果するぐらいの深刻さがそこにあると私は思うのである。
惜しむらくは、多くの農業関係者は、担い手がいないと口では言うのに、上記のように曇りガラスから見ているためにまだ現実を直視できないようことである。
それどころか、うるさいことを言うマスコミ等は農家の敵だの様な風潮が一部にでてきている。残念な気がする。
05年に42万経営ができなかったら、はたして誰が責任を取るのだろうか?
かつて、多くの学者やマスコミが、おかしいおかしいと指摘したにもかかわらず、人口推計を右肩上がりで計算し、ために年金等社会福祉の政策の根底がゆらいだ経験を日本は持っている。推計や目標設定やら施策は、あくまで現実的なものにしたいものだ。
省庁のアリバイ工作では国家が成り立たなくなってしまう。
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