バンマスの独り言 (igakun-bass)

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ディープ・パープル at モントルー 2006

2006年09月04日 | 音楽:ポピュラー系
「風の盆」に想いをはせていた先日の涼しい晩、TOKYO MX TV が今年のパープルのモントルー公演を放映したので、日本の民謡からハードロックへとがらっとモードを転換します!

モントルー(スイスはレマン湖のほとり)といえばディープ・パープル(以下DP)にとって因縁の深い場所であることは有名です。
彼らの代表曲の一つでみんなが知っているあの「Smoke on the Water」が生まれるきっかけとなったカジノ火災のエピソードの場所ですし、代表的ハードロック・アルバム「マシン・ヘッド」の制作がなされた場所でもあります。
そんな過去の思い出のあるこの地での演奏はDPにとっては気合の入るものであったでしょう。

毎年この地で行われる「モントルー・ジャズ・フェスティバル」はその名称とは多少異なりジャズばかりでなくロックも含むワールドワイドな音楽を上演するポピュラー音楽シーンにとって重要な音楽祭として発展してきました。

DPは今年このフェスに出演、そのハードロックの雄たる堂々としたステージを披露したのでした・・・とニュース的には書かれるところでしょうが、DPにはチトうるさい僕はツッコミたいことがけっこうあったライブ・ステージでもありました。

ステージ全体の印象は先の東京公演に似たセッティングでしたね。ギターがモーズになってもパープルのメンバー、とりわけギタリストの立ち位置はステージに向かって右と決まっているようです。このバンドのフロントマンは言うまでもなくボーカルのイアン・ギランですが、コンサート会場につめかけるお客の多くがドラマーのイアン・ペイスに注目しています。

ペイスは偉大なドラマーとしてロック界の至宝です。そのテクニカルでスピーディーなドラミングは多くのドラマーの見本です。しなやかな手首の返しといいバスドラムの強烈なアクセント感といい、すばやいシンバルワークといい、彼のドラミングの全てがまるで奇跡のようなプレーヤーであります。

今回のモントルー公演ではカメラクルーの一人がペイスにぴったりと張り付いています。また固定カメラも取り付けられていて彼の動きをしっかりと映像化していました。
ふと気が付いたのは先にこのブログでもリポートした東京公演のドラム・セッティングよりもさらに低い感じでドラムスが組まれていたことです。
ペイスは以前からそうでしたが猫背でプレイしています。そのせいか腿の高さとスネア面がほぼ同じだったセッティングがヘソの高さにまで上がっていたのが印象的で前方のタム類はわずかに角度がついていますが、ライド・シンバルを含めて全ての打面が低位置になっていました。
それと東京で見た時から比べてもすごくお腹が出ていました。夏の間にあんなに太るなんて、ちょっと驚きでした。そのせいか、余計に猫背で出っ張った腹の前でスネアを叩くさまが少し老人になったように見えました。
素早いスティックワークは健在でリズムやテンポにモタリを感ぜず、曲の構成も見事完璧に把握している様子はまさにDPの原子炉といった迫力でした。
余談ですがペイスは先の東京公演の後、アキバでウォシュレット便座をお土産に購入したそうです。(洗浄便座は世界中で最も日本で普及していて先進国なのです)かわいい!

キーボードのドン・エイリーは東京に比べ別人のような熱のこもったプレイを見せ、東京でがっかりした僕は悔しい思いでした。多彩なサウンドと他の音楽からの引用は機知に富み十分楽しめるものでした。最近のパープルのライブレポを読むとこのキーボード・プレーヤーのソロが始まると観客は示し合わせたかのように着座するそうです。実際、東京でも観客が一息入れた時間でした。しかしこのモントルーではそんな「お約束」もなく、彼自身の白熱プレイによってステージのテンションは下がることなく維持されていたのでした。また駆使した数台のキーボードの調子もすごく良かったようで、マルチキーボードの素晴らしさを堪能出来ました。特にハモンドB-3のコンデションが良かったですね。

ベースのロジャー・グローバーに関しては特筆すべきことはありませんが、逆にそこが彼のベーシストとしての素晴らしさなのです。とにかく抜群の安定感でペイスと歩調を合わせます。ステージ上でのアドリブ・プレイの少ない人ですが、長年演奏してきた曲目を楽しそうに落ち着いて弾いています。リズム隊の相方(ペイス)が繰り出すアクセント(特に連続するシンコペーションの時など)にぴったりとベースラインをくっつけて、聴感上でも絶対に邪魔をしない・・・かといって低レベルのテクニックでもない・・・ところにベーシストとプロデューサーとを並行してやってきたこの人の抜群の耳のよさを感じました。ベースを弾く左手の指がキレイな人です。

ギターのモーズは東京とあまり変わらない「いつもの」プレイでしたが、彼のソロ・コーナーでサプライズがありましたね。
なんとツェッペリン(Whole Lotta Love)とジミ・ヘン(Voodoo Chile)を弾いたのです。いつものスペーシーなディレイを使った伸びやかなソロの途中に突然これらの曲を挿入。それと同時にステージではベースとドラムにもスポットが当たり、ピタっと伴奏を付けるペイスとグローバーがライトに浮かび上がりましたが、僕はペイスのジョン・ボーナムを聞いたのが初めてなのでちょっと涙が出そうになりました。一時は宿命のライバルバンドのドラマー(他界しましたが)のあの独特なドラミングを再現してくれましたね! さらにジミ・ヘンではミッチ・ミッチェル(ジミヘン・バンドのドラマー)の「巻き舌ドラミング」(僕の付けた名前で一般に流通してません)を意識したフィルを多用し、さらに泣かせてくれました! (おっと、話がペイスにそれてしまった)
このモーズという人のメロディー・ラインを聞くといつも感じるのですが「育ちがいいな」と思うのです。ラフなフレーズも時折ありますが、フレット上を駆け上がり急速に下降する早弾きの時でも一時よく耳にしたイングベイ的お下品なスケールが出てこないのでそう思うのです。また非常にクラシカルな和音の移動と転調をきれいに決めます。ドロっとしたブルース・フィーリングがないのも好きです。
「レイジー」におけるギターワークなど前任者リッチーと全く違うアプローチですが、爽快で流線型の音楽にしています。だから推進力がとてもあって気持ちのいい演奏になっています。
あとはこの人によく感じる「手癖でラインの終わりをケムに巻く」悪い癖がなくなれば今後も益々興味深いプレーヤーとなることと思います。

さてイアン・ギラン・・・今回最も問題だったギランについて感じたことを書きます。
ギラン大好き人間の僕ですが、モントルーでの彼のボーカルは残念ながらいただけませんでした。
体調でも悪かったのでしょうか? 東京最終公演では福岡からスタートしたツアー中に崩した体調が一向に回復しないままの歌唱であったと後日聞きましたが、モントルーではそれよりずっと悪く見えました。
すでに彼のボーカリストとしての声量(力量)はピーク時とは比べ物にならないほど落ちていますが、それにしてもあまりにひどい声量不足!
声もちょっとロッド・スチュワートみたいなハスキーボイスです。
悪いことにそれに加えて音程がかなりヤバイのです。

なんと♯したりするのです。

♯する癖というのは彼の場合、時折見つけることができるのですが、♭する癖よりもトレーニングで比較的に直すことができるこの♯音痴だと思っても、それでもあまりに醜態。
(ある音を♯させてブルーノートのフィーリングを出すテクはありますが彼のはあからさまにズレた感じ)

モントルーは「マシンヘッド」の故郷。このアルバムにリッチーの猛反対によって入れることを断念した名作バラード「When A Blind Man Cries」をこの地で演奏するのだから彼らの感慨もさぞ深いだろうに、こんなバラードの音の伸びで音程がずれるっていうのはもう致命的エラーでしょう! それもこの曲ではなんと♭音痴になっています!
音がちゃんとしたところまで上がりきらないのは、聞いていてすごくストレスがたまります!

どうした? ギラン。
耳になんらかの病気が発症しているのでしょうか。

声量に関しては今ディープ・パープルのコンサートで多く取り上げる曲がほとんど昔のヒット曲だということもあってキーが若かりしギランのキーなので(歳をとった彼には)フィットしないのはよ~く理解しています。
これが最近のアルバムからならばキーがそれなりに「今」に合わせているので無理がないのでしょうが悲しいかな多くの観客はしゃくりあげるようにシャウトする若い頃のギランを無意識下で期待しているのです。

で、声が思うように出ない。気持ちばかりが先走る。

音程の不安定さと声量の無さというダブルパンチじゃ、ボーカリストとしてKO寸前でしょう。
東京でも声量的にやや迫力に欠けた部分が散見されたわけですが、それでも上手く歌いまわして事なきを得ていたのですが今回はそうはいかなかったようです。

グローバーが後ろでギランの唄を一緒に歌っています。もちろんマイクレスですが、彼の気持ちはよく分かりました。ベースを弾いていても心配でしょうがない、といった感じですよね。何にも手伝えないもどかしさを感じつつバックを付けている古参のメンバーの表情を見る時、このバンドはいたわりあいの中で活動を続けているんだろうか、と思ってしまいます。元気なモーズを加入させで若返りを模索しているパープルですが、ペイスの妊婦のような腹とギランの急速な衰え(じゃないことを祈りますが)は老いが確実にこのバンドにも忍び寄ってきているのを実感します。

あ~あ、気分が暗くなる!
でもさすがにベテラン・バンドだなと思わせるアイディアがセットリストの随所に現れていたのはさすがでした。

特にモントルーはジャズ・フェスティバルという名がついていることもあって、DPもジャズを意識したんでしょうか、「Smoke on the Water」のオープニングはジャズにアレンジしたおしゃれなサウンドでしたね。ペイスやグローバーの4ビートが特に新鮮でした。また「レイジー」におけるギランのハープ・プレイはかっこよかったですね。
グルーブ感抜群のハープでしたが「声」を使わないプレイで素晴らしいと言われるのは彼にとっては心外でしょうね。

思えば2006年の「Rapture of the Deep」ツアー。ステージの背景にはそのアルバムのジャケット

が掲げられてました。
情けないオッサンのイラスト。その前のツアーの背景は日本では忌み嫌われる「白と黒の縦じま横断幕」

やめてよ~。 情けない!

すみません、いろいろ書いてしまいましたがモントルーでのディープ・パープルのライブを見られてとても喜んだことは事実でした。
特に今年の東京でのライブを見た者にとっては、そのステージの再現を見られた感動がありましたし、何と言っても今のDPを楽しめたということがとてもうれしかったのでした。

ギランの不調が心配ですが、このブログはハッピーエンドということで・・・

長々とお粗末さまでございました!   (あ~、4550文字。乙かれ!)




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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
見た、見た! (あべ たのも)
2006-09-04 18:16:40
ウチのテレビでは2チャンネルで見れたよ。

映像がすごくきれいで、見やすかった!

ギランのヴォーカル、確かにやばいけど

セットリストで充分満足できたので許す!



30分遅れで見始めたので、ビデオお願い!
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だれだっ!おぬし (igakun-bass@発行人)
2006-09-04 18:41:21
>「子連れ狼」の あべ たのも さま



日本の時代劇における比類なく最高にマッドネスなキャラクター、阿部頼母! 世界に誇れる毒薬使い。金田竜之介のはまり役!



しかして、おぬしの頼みとは深紫門取るーのダビングか!



むむっ、前半30分を見ていないとは、しくじりおったのう。



しとしとびっちゃん、しとびっちゃん、しーとーびーっちゃん。 毒持てこい~。



ギター、鍛錬なされ~。
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ええーっ! (はりけ~ん)
2006-09-06 01:04:40
そんなプログラムをMXがやってたんですかー!_| ̄|○

知らなかったです…毎週「妖怪人間ベム」も「ウルトラセブン」も見ている、MXの常連さんだったはずなのに。うーむ、残念。



それにしてもギランの衰えは、他人事ではないですね…加齢によるハイトーンボーカルの厳しさを痛感します。そうならないように、常日頃からの鍛錬が重要なんですね、って何もしてませんが(><)
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声が出ないもどかしさ! (igakun-bass@発行人)
2006-09-06 06:49:06
>はりけ~ん さま



ボーカルはねぇ、自分の肉体が楽器だから・・・老化とともに歌もね(><)



DPもハイトーン時代の曲ばかりやるからギランだけがシンドイ。でもね、古い曲をお客が欲しているのも現実。 バンドも辛いやね! 



この番組は2日19時にやったけど、次の9日放送の後半で残りの曲を少しやるそうだよ。
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