バンマスの独り言 (igakun-bass)

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さよなら・・・スラヴァ

2007年04月29日 | 音楽:クラシック系
もうかなり以前の事になるんですが、NHK交響楽団と指揮者:小澤征爾が当時で32年ぶりに和解して開かれたコンサート(サントリーホール)に行ったことがありました。

確か、阪神淡路大震災からあまり日が経っていない時期だったと思います。
N饗は当時で32年前に若き指揮者小澤を「生意気だ」というような理由で彼の指揮予定のコンサートをボイコットしたいわいる「N饗事件」を起こしたのでした。事の良し悪しは別として、その時以来、海外へとその活躍の場を広げていった小澤とN饗はこのコンサートで久しぶりの再会となったわけです。

この記念すべきコンサートは折からの大震災直後とあってお祭りムードとは程遠い、僕が経験したクラシック・コンサートでも異色の雰囲気の中で行われたのです。

この時の共演者:ソリストが、先日80歳で亡くなられたスラヴァことムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ(チェロ)じいさんでした。
おそらく音楽家では最も多い世界各国からの勲章授与歴をもつ現代最高のチェリストであったこの大の親日家はこのコンサートでドヴォルザークのチェロ・コンチェルトを弾いたのですが、それが終わると小澤に通訳をさせて静かに語り始めたのです。

「先の震災で亡くなられた5千人にも上る方々のためにこれからバッハを弾きます。でも演奏が終わっても拍手をしないでください。その時皆さんと共に静かに黙祷を捧げたいと思います」
と言って、バッハの無伴奏チェロ組曲第2番からニ短調の「サラバンド」を演奏しました。
通常より重々しい重音(複数の弦を一緒に弾くこと)と遅めの沈痛極まりない音楽が会場に吸い込まれるように流れ出しました。
大きく朗朗と鳴り響くチェロがまさに泣いていました。
指揮者小澤もこの時ばかりは指揮台にオケの方に向いて座り、N饗の奏者全員と共に目を閉じて聴き入っていました。

僕なんかこの日演奏されたバルトークやドヴォルザークの感動も一気にどこかへ行ってしまって、バッハの深遠な世界にどんどん沈降していったのです。
低音楽器の持つ人間臭い嘆きの響きは、震災の犠牲者を追悼するという趣旨によりさらに一層意味深く響き渡りました。

僕などはこの夜、クラシック・コンサートで初めて泣きました。止めどもなく流れる涙に多少の恥ずかしさもあったのですが、泣けるものは泣けます。我慢せずにバッハに泣きました。

そのコンサートは最初、全員の黙祷で開始されたのですが、その終わりもスラヴァ主導による祈りで終了したのです。
お祭り的明るさを想像していたコンサートだったんですが、静かな幕引きとなったのです。



そのスラヴァことロストロさんが亡くなって、僕がクラシック界で最も尊敬していた音楽家とのあの感動の一夜を思い出したのでした。

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2 コメント

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皮肉にも・・・。 (再びリーマン)
2007-05-01 23:10:11
合掌!!クラシックで泣く!在り得るよねぇ,歌詞が無いだけに聴く側の感性に因るだろうけど。

でも,今朝会社で業界新聞を読んでて・・・絶句!
皮肉だよね。4/21から80歳記念のドキュメンタリー映画「ロストロボーヴィッチ/人生の祭典」が封切られた矢先だもんなぁ!(渋谷シアターイメージフォーラム)
奥さんはオペラ歌手だったんだね。
再び,合掌!
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合掌 (igakun-bass@発行人)
2007-05-02 18:52:31
>リーマンドラマー さま

コメント、ありがとう!
クラシックの話題にはなかなかコメントをもらえなくて寂しいことが多いので・・・。

シェイズのドラマーさんは泣けるようなメロディーが大好きで、実は隠れクラシック・ファンなのですよ、みなさん。

ウチのリズム隊はロマンティストなんですね~。
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