バンマスの独り言 (igakun-bass)

趣味と実践の音楽以外に日々感じる喜びや怒り、感動を記録するためのブログです。コメント大歓迎です!

思わず笑ってしまった演奏

2010年06月27日 | 音楽:クラシック系
ちょうど1年前、僕はこのブログで下記のような詩(歌詞の意訳)を紹介しました。




夕映えのなかで (ヨゼフ・フォン・アイヒェンドルフ詩)

苦しいことやら 楽しいことやら いろんなことが いっぱいあったなあ 
どんな時でも わしらはいつも 手ぇつないで歩いてきたんや 
そやけど いまは もう 歩かんでもええ 
この丘の草のうえに ちょっと腰でもおろそうや 
一緒に このきれいな盆地の景色を ながめようや


田舎の景色はきれいやなあ あっちに小高い山があって 谷があって 
こっちの方まで小川が流れとるやないか 
早いもんやで 今日は もう日が暮れかかってきよった 
ひばりだけが元気に啼いとるなあ まだ昼間のつもりでおるんかいなあ 
二羽で 仲良う 夕闇の中を のぼっていきよるやないか


おまえも もうちょっと こっちよれ もうじき 眠る時間になるんやで
二人きりになってしもうたなあ さびしいか 
そうか ほな はなれんようにしょ はぐれんようにしょ


見てみい 夕焼けや 狭い田舎も こうしてみると 広々と見えるもんやないか
しずかやなあ 平和なもんやで 
あたり一面が夕焼けやで だいだい色にに染まってきよった 
これが夕映えいうやつやで 
ほんに きれいなもんやないかいな


疲れたか そうか わしも疲れた 
なんやしらんけど 旅の疲れいうやつかいなあ 
えらい重とう ずうんと肩に のしかかってきよる 
これが 死ぬ・・・ということなんかいなあ・・・



これはリヒャルト・シュトラウス(1864-1949)の生涯で最後の作品であり、彼が残した全作品の頂点にあるとさえ思える歌曲(歌の付いた管弦楽曲)「4つの最後の歌」の終曲「夕映えの中で」の詩をくだけた表現を使って日本語訳したものでした。

「4つの最後の歌」のうち第1曲「春」を除いた3曲はどれも何かに別れを告げる歌であり、それらは
すなわち、<夏への(第2曲)><一日への(第3曲)><人生への(第4曲)>告別の歌となっています。

とりわけ僕が愛聴してやまないのが第4曲「夕映えの中で」です、と一年前にお話をしましたね。

「美しい夕暮れと死の影」(2009.6.22)

この一文は数百話に及ぶ僕のこのブログの中でもとりわけ大切にしたいページで、ここには僕の心情の一片が、クラシック音楽の紹介という形にはなっていますが、表現されていると思っています。

一方、この曲は音楽的にもクラシックというジャンルの中でこれほどすばらしいオーケストレーションの曲はそうそう無いと断言できるほどで、その精緻な楽器使いと静謐な表現、人生の終わりを優しく諦観しているかのような表情付け、さらに管弦楽を知り尽くしたかのように響くオーケストラの効果抜群な<鳴り>等にその根拠を見出せます。

とにかくすばらしいという一言に尽きる音楽の一つなのですが、それほど愛してやまない音楽なのに今までこれが一番だ!と思える演奏(アルバム)に出会わずにいました。

それがついこの前、調べ物のために図書館にいた時、まったく偶然に見つけたCDアルバムに何となく気になる胸騒ぎを感じ、借り出してみて、ついに出会ってしまったのです!

それが今日紹介する演奏です。



ファビオ・ルイージ 指揮
シュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン歌劇場管弦楽団)
アニヤ・ハルテロス (ソプラノ)

かの有名な「アルプス交響曲」と「4つの最後の歌」が収録(2007)されているアルバムです。

現代管弦楽法の頂点にある「アルプス交響曲」の規模・構想の大きさ、巨大管弦楽を必要とするスペキュタクラーな音楽には中学生の頃より心酔していましたが、そんなこけおどし的な巨大さよりも、この歳になって大いに共感できるのはカップリングされた「4つの最後の歌」に聴ける精神世界の充実した響きに他なりません。

さっそくこのアルバムをプレーヤーにセットし「4つの最後の歌」の「夕映えの中で」を一番最初に再生したのは言うまでもありませんが、この曲の前奏部分で僕は思わず笑ってしまいました。
上手く言葉にならないのですが本当にこの演奏に出会えたことを笑ってしまったのです。

そう、ようやく自分の好みの表現に出会えたのです。
なにも躊躇(ちゅうちょ)する余地のない、ダイレクトに心に入ってくる演奏(表現)だったのです。
こういう<出会い>は過去にも色々なジャンルの音楽でありましたが、僕には「4つの最後の歌」でこの出会いがついに訪れたことを誰に感謝すればいいのか初めて聴いた瞬間には思いつかず、つい一人で笑ってしまったのです。人間、うれしいと笑うでしょ?


最初にこの曲の事をブログに書いてからちょうど一年。なにか因縁めいたものを感じつつ、あの時くしくもコメントを頂いてその存在を知ることになった<tさん>の「静かで穏やかな日常」を綴った世界に出会い、この一年静かな感動を味わわせてもらってきたことなど、この曲によってご縁ができたあれこれを思い出しながら、今回出会えた<腑に落ちる>演奏を楽しんでいるところです。

だから僕はこの曲に感謝しなければならないことが多いのですよ!

同じ楽譜から演奏されているのに指揮者・演奏者によってこんなにも感動のカタチが違うものなのか・・・これこそがクラシックを聴く楽しみでもあるのです。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。