「慎重なる楽観主義」
この言葉が、現在の経営環境における経営のスタンスを端的に表していると思います。将来展望を持った伸びる中堅・中小企業は、経営の質、組織の質、社員の質を高めようとしています。現在の業績に浮かれることなく、慎重さを前提としつつも、将来に向けた投資を行なっています。経営者のマインドが1990年代の苦い経験を頭に刻みつつ、悲観論から楽観論へと転換してきました。
現在、賃金制度再構築のテーマが多いのですが、「人件費を削減したい」と言った、経営陣からのご要望は殆ど聞かれません。「社員のやる気を高めたい」「組織力を高める行動を社員に求めたい」など、将来に向けて人財投資を重視したいという姿勢が伺えます。賃金制度の改定には人件費アップが伴いますが、賃金制度の手をつけるということは、人件費アップを覚悟しているとも言えます。
更に、優秀な人材を引き付けるには、将来への展望を示すことが大切です。
賃金制度や評価制度の再構築の際に、社員へのインタビューを行ないますが、
1.どう努力すれば昇格・昇給が出来るのかが分からない
2.何を誰が評価しているのかハッキリしない
3.将来の展望が見通せない
などの意見が共通の問題点として浮かび上がってきます。
すなわち、組織の将来像を示し、社員に何を期待しているかを明らかにすることが求められています。
その為に、将来像・ビジョンや成長目標を示す動きが始まっています。ビジョンは不確実性がゆえにコミットすることへのリスクも伴います。悲観的に考えるとビジョンのコミットメントは出来ません。
そのような中で、「慎重かつ楽観的な姿勢」といった一見矛盾した経営スタンスが出てきます。
このバランス感覚が経営の妙といえるのでしょう。