ヒデ系の瞳

平和憲法尊守

自衛隊情報保全隊 平和運動を敵視 国民監視、人権も民主主義も無視

2012-09-09 | 憲法
自衛隊 今も国民監視

違法な個人情報収集

情報保全隊の内部資料

陸海空自衛隊の情報保全隊を統合して2009年に新設された自衛隊情報保全隊のもとで、違法な国民監視活動とその記録化が続けられていることが3日、同隊の内部資料などで判明しました。陸上自衛隊の情報保全隊による国民監視は07年、日本共産党の志位和夫委員長が告発して明るみに出ましたが、その後も継続していたことが裏付けられました。監視された市民らが訴えた国民監視差し止め訴訟仙台地裁判決(今年3月26日)では「人格権を侵害した違法な情報収集」だとして国に賠償が命じられています。

平和運動参加者、イスラム教徒、自治体幹部…


(写真)「週報」と題した自衛隊情報保全隊の内部文書
 本紙が入手したのは「注意 特に厳重な取り扱いを要する」と指定し、「週報」と表題がついた自衛隊情報保全隊の内部文書。作成部署を記したとみられる欄には「情報保全課」と記載されています。同課は、部隊発足時の大臣訓令によると情報保全隊本部に置かれた部署。「情報の収集整理及び配布」などが任務です。

 「週報」は、10年11月25日から12月21日までの期間のもの。同隊が収集した国民監視情報が、1週間ごとに詳細に記録されています。

 市民団体や日本共産党などの監視対象ごとに項目分けし、活動内容、参加者数、日付などを記述。文書形式は、07年に表面化した陸自文書とほぼ同様です。

 監視対象者は、平和運動に参加する市民、日本共産党や社会民主党の議員、労働組合員、自治体幹部、新聞記者など広範囲です。

 「地方自治体等の動向」の項目も設け、基地のある自治体の動きや自治体幹部の発言などを監視。さらに沖縄県知事選での候補者の発言もチェックしています。

 イスラム教徒にたいしては「イスラム勢力・国際テロ組織関連動向」という項目を設け、テロ勢力扱いをしています。

 日本共産党や民主団体は「日共系」とした項目に記録。1人での行動まで記述し、規模を問わず監視していることがうかがえます。

 記述には、新聞などで報道されていない内容も含まれています。たとえば、10年12月12日に宮崎県えびの市内で行われた霧島演習場日米共同訓練抗議集会での前屋敷恵美党県議の発言は、報道されていません。しかし「週報」には発言が詳述されており、同隊が集会に潜入して情報収集したことを裏付けています。

 さらに07年の内部文書で監視対象とされた市民らによる「自衛隊の国民監視訴訟を支援するみやぎの会」が、仙台市内で開いた集会も参加人数まで把握して記録しています。

 仙台地裁判決では、「氏名、職業に加え、所属政党など思想信条に直結する個人情報」の収集を違法と断じました。今回の「週報」でも共産党議員らの名前を特定して発言や行動を監視するなど、違法性は明白です。

 本紙は、「週報」に記載された内容の裏付け調査を行い、実際に実施されたものであることを確認しました。

 防衛省広報課は、本紙の取材に対して「(内部文書の存在は)仙台高裁で係争中なので答えられない」としました。

 自衛隊情報保全隊 防衛相直轄の情報部隊。表向きは、防衛秘密の保護と漏えい防止を目的としていますが、実際には国民監視が主任務。陸海空3自衛隊に分かれていた情報保全隊は2009年に「自衛隊情報保全隊」に統合・新編。10年には民主党政権のもとで増員され、定員は約1000人。国民監視差し止め訴訟の仙台地裁判決は、差し止め請求は却下しましたが、「違法な情報収集」だと認め原告のうち5人に賠償支払いを国に命令。原告・被告双方が仙台高裁に控訴しました。

国民監視、人権も民主主義も無視

自衛隊情報保全隊の実態

市民の平和を願う行動から自治体幹部の発言、選挙での候補者の主張、宗教者の動向まで、国民生活のあらゆる場面を執拗(しつよう)に監視する自衛隊情報保全隊。すでに監視活動が明らかにされて強い批判を浴びながら、無反省に監視活動を続けていたのです。人権も思想信条の自由も踏みにじる憲法違反の実態は―。

「仲井眞氏は県外移設を…」

選挙候補者の活動 自治体幹部発言も

 情報保全隊の「週報」には、自治体幹部や選挙候補者の活動記録が多く記されていました。その執拗(しつよう)さは、戦前の憲兵隊をほうふつとさせます。

 「仲井眞(弘多=沖縄県知事)氏は県外移設を表明して立候補していることから、辺野古移設に向けた動きは難航すると思われる。(中略)将来、経済振興策等の条件如何(いかん)によっては、在任中に移設容認に転ずる可能性」

 沖縄県知事選挙(2010年11月28日投開票)の結果を分析。関連資料には、県知事選で普天間基地の県内移設に明確な反対を訴えた伊波洋一候補と仲井眞知事が選挙中に開いた集会の様子や参加者数を記録しています。(資料1)

 同年12月9日に告示された宮崎県知事選挙も日本共産党の津島忠勝候補(党宮崎県委員長)の街頭演説などを記録。県内にある霧島演習場では同月6日から日米共同訓練が行われていました。

 自治体幹部の発言に目を光らせていることもわかります。

 同月15日に日本共産党大分県委員会が行った県への申し入れを記録。翌年2月に日出生台(ひじゅうだい)演習場で予定していた米海兵隊の射撃訓練の中止を求めたものでした。

 この席で、副知事が回答した内容を情報保全隊の「週報」は詳しく記録。新聞などで報道されていない「(米海兵隊の訓練内容について)知り得た情報は出したい」との副知事の発言が記されています。独自の諜報(ちょうほう)活動で探ったとみられます。



「動員数、内容変化なし」

平和運動を敵視 ビラ文言も詳細に

 「週報」と題された自衛隊情報保全隊の内部文書は、監視対象ごとに項目を設けて、情報を記録しています。なかでも詳細なのが「防衛省・自衛隊・在日米軍等に関連する国内動向」です。

 この項目では、各地で行った平和運動などを記述しています。

 2010年11月21日に東京都福生市で「横田基地の撤去を求める西多摩の会」が取り組んだ座り込み行動。「週報」では、「毎月第3日曜日に行われている定例的なものであり、通算20回目である。今回の行動での動員数、主張内容に、過去の取り組みとの変化は認められない」と記述しています。(資料2)

 本紙の確認では、行動の日付・回数ともに一致していました。同隊が日常的に、発言内容や参加人数まで監視していることがうかがえます。

 さらに各地での平和運動を一覧表にして記録。12月8日の太平洋戦争開戦記念日にあわせて民主団体が行う行動は、場所、主催団体、参加人員、取り組み内容などの項目に分けて記載。街頭宣伝での内容や配布したビラの文言まで細かくチェックしています。

 自衛隊の諜報活動に詳しい元幹部は「自衛隊情報保全隊に統合されて、自衛隊ぐるみで集めた市民運動や個人の情報が一元的に管理・集積している。だから記録内容が以前より詳細になっている」と語ります。



イスラム教徒

テロ組織と決めつけ

礼拝者数下1ケタまで記録

 情報保全隊が、イスラム教徒を「国際テロ組織」とみなして監視していることも分かりました。

 「イスラム勢力・国際テロ組織関連動向」という項目では、全国のモスク(イスラム寺院)への礼拝について記していました。(資料3)

 礼拝したイスラム教徒については「東南アジア系」「中東系」「パキスタン系」「スンニ派」「駐日大使館関係者」「東京、近郊県イスラム教徒」などと分類。礼拝者数を下1ケタまで記録。執念深い監視を行っていることをうかがわせます。

 同時期の10年11月に、日本に住むイスラム教徒の個人情報が警視庁公安部外事3課から流出する事件が起きていました。

 約1000人にのぼる被害者が警視庁に謝罪と救済を求める中、情報保全隊は相変わらずイスラム教徒への監視活動を続けていたわけで、極めて悪質です。

 前出の自衛隊元幹部は、こう警告します。「情報保全隊が収集した情報は、政権中枢まで届いている可能性がある。国のお墨付きがあるから監視はエスカレートする。こんな危険で恐ろしいことはない」
(しんぶん赤旗2012・9・4)




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