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第1次安倍内閣の「日中歴史共同研究」は語る

2013-07-24 | 歴史史観
第1次安倍内閣の「日中歴史共同研究」は語る

日中戦争は日本の侵略戦争 大日方 純夫

 安倍晋三首相は、「侵略という定義については、学界的にも国際的にも定まっていない」(4月23日、参議院予算委員会)、「歴史家に任せるべきだ」(7月3日の日本記者クラブでの党首討論)などと、繰り返し発言しています。
 その安倍首相が、第1次安倍政権のときにスタートさせたのが日本・中国間の歴史共同研究です。「日中の歴史問題については専門家の判断に委ねたい」と考えたからです。

日中の「専門家」 侵略は共通前提

 では、これに参加した「専門家」たちは、日中戦争についてどのような判断を示したのでしょうか。
 
 日中歴史共同研究は、2006年12月から09年12月まで継続され、10年1月に『日中歴史共同研究第一期報告書』が公表されました。参加したのは、両国各10人の委員と、計27人の研究協力者です。

 公表された『報告書』の<近現代史>部分は、「第1部 近代日中関係の発端と変遷」(全3章)、「第2部 戦争の時代」(全3章)からなり、各章それぞれの立場で執筆する方式をとっています。第2部は「満州事変から盧溝橋事件まで」、「日中戦争―日本軍の侵略と中国の抗戦」、「日中戦争と太平洋戦争」の3章ですが、日中両国の各論文は、日本が侵略戦争を行ったということを、共通の前提にしています。

【日中歴史共同研究(近現代史分科会)の日本側委員=発足当時】
・北岡伸一(東大教授)
・小島朋之(慶応大学教授)途中から高原明生東大教授が外部執筆委員として担当章を引き継ぎ
・波多野澄雄(筑波大教授)
・坂元一哉(阪大教授)
・庄司潤一郎(防衛省防衛研究所研究室長)

 日本側座長の北岡伸一氏は、「日本の侵略は明確な事実だ」として、つぎのように書いています(『外交フォーラム』261号、10年4月)。
 「第一に、日本が中国に対して侵略戦争をしたことを認めることについて、多くの批判が寄せられた。これは私にとってまったく受け入れられない批判である。日本が侵略をしたのは明らかな事実だと考えている。これは、共同研究の成果でも何でもなく、以前から考えていることである。(中略)私だけではない。日本の歴史学者で日本が中国に侵略をしていないという人はほとんどいないと思う」

どんな定義でも変わらない判断

 北岡氏だけでなく、日中戦争が日本による侵略戦争だったという判断は、「日本の歴史学者」ほとんどの共通認識なのです。そして、それは「侵略」に関する「国際的」な「定義」うんぬんとは無縁だと、北岡氏はつぎのように明言しています。
 「一部に、侵略の定義が決まったのは比較的近年のことであり、それまでは侵略の範囲というのは明白でなかったので、当時の日本の行為は侵略とはいえない、という人がいる。しかし、侵略の定義の決定に時間がかかったのは、侵略と非侵略との間に微妙な部分があり、その境界を決めるのに時間がかかったからである。満州事変以後の日本の行動は、そのようなグレーゾーンの問題ではなく、いかなる定義になっても明らかに侵略と判断される事案である。それに国際法の議論がどうあろうが、歴史学で見れば、これは明らかに侵略なのである」

研究を指示した安倍首相の無視

 私も北岡氏の見解には大いに共感します。
 日中歴史共同研究は、日中の首脳が決定し、国家レベルで推進された初の公式の歴史対話です。しかし、その成果は、日本ではほとんど無視されています。
 一番無視しているのは、自ら共同研究に着手させたはずの安倍首相だといえるでしょう。

 ぜひ笠原十九司編『戦争を知らない国民のための日中歴史認識―「日中歴史共同研究<近現代史>」を読む』を参照してみてください。
(おびなた・すみお 早稲田大学教授)

(しんぶん赤旗2013年7月23日)

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