秘密保全法案―その危険な仕組み
政府が国会への提出を狙う「秘密保全法案」に各界から危惧する声が強まっています。法案の詳細は明らかではありませんが、政府の有識者会議がまとめた報告書からは、国民の知る権利を奪う危険な仕組みが見えてきました。
不都合な情報隠す恐れ
政府や行政機関が持つ「秘密」の漏洩を罰で禁止する法案です。
政府の検討案では、「秘密」を漏らすと「10年以下の懲役、罰金刑」となっており、国家公務員法の「懲役1年以下または50万円以下の罰金」と比べても、厳罰化は明らかです。また「秘密保全法案」にともなって、政府は懲役5年以下と定めていた自衛隊法の防衛秘密の漏洩も「10年以下」に引き上げるとしています。
どんなことが「秘密」になるのでしょう。報告書では、①国の安全 ②外交 ③公共の安全と秩序の維持に関する情報―の3分野を「特別秘密」と呼んでいますが、範囲は広く曖昧です。
しかも、どの情報を「特別秘密」にするか決めるのは、情報を持つ政府や行政機関側です。政府にとって不都合な情報が隠される恐れがあります。
例えば、原子力発電所や在日米軍基地に関わる情報や、環太平洋連携協定(TPP)でどんな交渉をやっているかなど、国民が当然知りたいと思う情報が隠されることが予想されます。
内部告発や取材も対象
「特別秘密」になるのは、国の行政機関が持つ情報にとどまりません。独立行政法人や地方自治体、さらには行政から委託を受けた企業や大学が持つ情報も「特別秘密」の対象です。本人が知らないうちに「特別秘密」に関わりかねません。
この「秘密」に関わる人が故意に情報を流すだけでなく、例えばデータが入ったパソコンが盗まれ、「特別秘密」が第三者に流れても処罰の対象です。組織の不正や法律違反を内部告発した場合であっても、そこに「特別秘密」があれば「犯罪」となります。
情報を持つ側だけでなく、新聞記者や市民が取材や調査することも「特定取得行為」として処罰されます。
例えば、新聞記者が取材したものの「特別秘密」を入手できなかった場合でも「未遂」として罰せられることになっています。
また、市民団体が「市民生活に関わる重大な情報だ」と関係者にビラで情報提供を呼びかける行為も「教唆」「扇動」として処罰の対象となっています。ビラを数人でつくったことが「共謀」として、犯罪扱いされる恐るべきものです。
「適性評価」で人権侵害
有識者会議では、「適性評価制度」の導入を求めています。
この制度は、「特別秘密」を扱うのに“適切”な人物か“不適切”か、判断するものです。
同制度では、対象者の経歴や飲酒、借金などの情報、さらに家族や友人など身近な人物についても調べることになっています。さらに「わが国の不利益となる行動をしないこと」などが評価のポイントとなっています。
適性評価制度は、プライバシーの保護や差別的取扱いの禁止に抵触し、人権侵害の危険が大きい制度です。
導入されれば、行政機関のみならず委託先の企業や大学関係者とその家族や知人など、広範に監視対象とされてしまいます。
日弁連は、昨年11月に発表した意見書で「知る権利が侵害されるなど、憲法上の諸原理と正面から衝突するもの」と反対の声を上げています。日本新聞協会も反対声明を発表しています。
そうした声に押され、藤村修官房長官は19日、「(今国会への)提出についてはっきり決めているわけではない」と述べています。
米との軍事協力強化狙う
秘密保全法案の真の狙いは、日米の安全保障・防衛協力の強化にあります。2007年に日米両政府が結んだ「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する協定」では、秘密軍事情報にアクセスできる資格者の登録簿を保持することが求められています。
日弁連も同法案の問題点をまとめたパンフレットを作成し、こうした背景を指摘。「日本の主権者は、日本国民?それとも米政府?」と批判しています。
反対の声広げたい 憲法会議代表幹事の吉田健一弁護士の話
原発のことやTPP(環太平洋連携協定)の秘密交渉、米軍基地など、国民に知らせるべき情報が多くある中、それを秘密にして隠そうとする狙いは明らかです。
「秘密保全法案」は、「公共の安全に関わる情報」も秘密の対象とし、広範な国民を処罰の対象とする、1985年に国会に提出され、国民やマスメディアの大きな批判を受け、断念に追い込んだ「国家機密法」よりさらに危険なものとなっています。
大阪市の「思想調査」を法制度として公認するような「適性評価制度」は、国家機密法にもありませんでした。
IHI(旧石川島播磨重工)などでたたかう労働組合員の差別事件のなかでも明らかにされたように軍事産業では、労働者がすでに選別され、排除され、人権侵害が横行してきました。それを「保全法案」は公然と認めたうえ広く波及させることになります。例えば、原発に批判的な大学教員が研究から排除されるようなことが、どこでも横行することになるでしょう。
法案の背景には、アメリカと財界の要求があります。この制度の狙いを多くの人に伝え、反対の声を広げていくことが求められます。
政府が国会への提出を狙う「秘密保全法案」に各界から危惧する声が強まっています。法案の詳細は明らかではありませんが、政府の有識者会議がまとめた報告書からは、国民の知る権利を奪う危険な仕組みが見えてきました。
不都合な情報隠す恐れ
政府や行政機関が持つ「秘密」の漏洩を罰で禁止する法案です。
政府の検討案では、「秘密」を漏らすと「10年以下の懲役、罰金刑」となっており、国家公務員法の「懲役1年以下または50万円以下の罰金」と比べても、厳罰化は明らかです。また「秘密保全法案」にともなって、政府は懲役5年以下と定めていた自衛隊法の防衛秘密の漏洩も「10年以下」に引き上げるとしています。
どんなことが「秘密」になるのでしょう。報告書では、①国の安全 ②外交 ③公共の安全と秩序の維持に関する情報―の3分野を「特別秘密」と呼んでいますが、範囲は広く曖昧です。
しかも、どの情報を「特別秘密」にするか決めるのは、情報を持つ政府や行政機関側です。政府にとって不都合な情報が隠される恐れがあります。
例えば、原子力発電所や在日米軍基地に関わる情報や、環太平洋連携協定(TPP)でどんな交渉をやっているかなど、国民が当然知りたいと思う情報が隠されることが予想されます。
内部告発や取材も対象
「特別秘密」になるのは、国の行政機関が持つ情報にとどまりません。独立行政法人や地方自治体、さらには行政から委託を受けた企業や大学が持つ情報も「特別秘密」の対象です。本人が知らないうちに「特別秘密」に関わりかねません。
この「秘密」に関わる人が故意に情報を流すだけでなく、例えばデータが入ったパソコンが盗まれ、「特別秘密」が第三者に流れても処罰の対象です。組織の不正や法律違反を内部告発した場合であっても、そこに「特別秘密」があれば「犯罪」となります。
情報を持つ側だけでなく、新聞記者や市民が取材や調査することも「特定取得行為」として処罰されます。
例えば、新聞記者が取材したものの「特別秘密」を入手できなかった場合でも「未遂」として罰せられることになっています。
また、市民団体が「市民生活に関わる重大な情報だ」と関係者にビラで情報提供を呼びかける行為も「教唆」「扇動」として処罰の対象となっています。ビラを数人でつくったことが「共謀」として、犯罪扱いされる恐るべきものです。
「適性評価」で人権侵害
有識者会議では、「適性評価制度」の導入を求めています。
この制度は、「特別秘密」を扱うのに“適切”な人物か“不適切”か、判断するものです。
同制度では、対象者の経歴や飲酒、借金などの情報、さらに家族や友人など身近な人物についても調べることになっています。さらに「わが国の不利益となる行動をしないこと」などが評価のポイントとなっています。
適性評価制度は、プライバシーの保護や差別的取扱いの禁止に抵触し、人権侵害の危険が大きい制度です。
導入されれば、行政機関のみならず委託先の企業や大学関係者とその家族や知人など、広範に監視対象とされてしまいます。
日弁連は、昨年11月に発表した意見書で「知る権利が侵害されるなど、憲法上の諸原理と正面から衝突するもの」と反対の声を上げています。日本新聞協会も反対声明を発表しています。
そうした声に押され、藤村修官房長官は19日、「(今国会への)提出についてはっきり決めているわけではない」と述べています。
米との軍事協力強化狙う
秘密保全法案の真の狙いは、日米の安全保障・防衛協力の強化にあります。2007年に日米両政府が結んだ「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する協定」では、秘密軍事情報にアクセスできる資格者の登録簿を保持することが求められています。
日弁連も同法案の問題点をまとめたパンフレットを作成し、こうした背景を指摘。「日本の主権者は、日本国民?それとも米政府?」と批判しています。
反対の声広げたい 憲法会議代表幹事の吉田健一弁護士の話
原発のことやTPP(環太平洋連携協定)の秘密交渉、米軍基地など、国民に知らせるべき情報が多くある中、それを秘密にして隠そうとする狙いは明らかです。
「秘密保全法案」は、「公共の安全に関わる情報」も秘密の対象とし、広範な国民を処罰の対象とする、1985年に国会に提出され、国民やマスメディアの大きな批判を受け、断念に追い込んだ「国家機密法」よりさらに危険なものとなっています。
大阪市の「思想調査」を法制度として公認するような「適性評価制度」は、国家機密法にもありませんでした。
IHI(旧石川島播磨重工)などでたたかう労働組合員の差別事件のなかでも明らかにされたように軍事産業では、労働者がすでに選別され、排除され、人権侵害が横行してきました。それを「保全法案」は公然と認めたうえ広く波及させることになります。例えば、原発に批判的な大学教員が研究から排除されるようなことが、どこでも横行することになるでしょう。
法案の背景には、アメリカと財界の要求があります。この制度の狙いを多くの人に伝え、反対の声を広げていくことが求められます。