佐々木俊尚の「ITジャーナル」

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いま起きつつあるネットとテレビの融合モデル

2005-10-22 | Weblog
 楽天はTBSに対して、「共同持株会社を通じた統合に関する提案およびその要旨」という100ページあまりの文書を提出していた。この文書には、楽天がどのような「テレビとネットの融合モデル」を考えているかが具体的に書かれているらしい。そこで新聞や雑誌などのメディアはどこも必死で入手を図っていたのだが、とうとう読売が入手したようだ。20日の読売新聞東京本社版朝刊は「TBSへの統合提案全文判明、番組視聴に楽天ポイント」と題した記事を掲載した。

 <放送と通信を融合させた具体的な事業としては、(1)楽天グループ3000万会員の基盤を活用して「見たい番組」情報を提供(2)TBS番組や広告を視聴することで、買い物に利用できる楽天ポイントを付与(3)ブログを活用した視聴者同士のコミュニケーションの拡大――などを挙げ、「視聴者個人の好みに合わせ、番組と広告を統合的に組み合わせる」ことによって、相乗効果を図るモデルを打ち出した。これらの展開には、大手広告会社の電通の協力が不可欠であることも明記した>

 なんだかなあ、という感じである。読売の記事から読み取れるのは、楽天はまじめに通信と放送の融合を考えているのではなく、あくまでも自社ポータルの楽天市場の集客のために、いかにTBSを利用するかということでしかないのではないか。ライブドアから楽天へと続く一連のテレビ業界攻略を見てきて、最近そんな気持ちになってきた。ライブドアにしろ楽天にしろ、しょせんはポータルでしかない。要するにぶっちゃけて言ってしまえば、ポータルなんていうのはもはや古いビジネスモデルなのだ。

 ポータルサイトというビジネスモデルは、客をできるだけたくさん集め、それらの客にいかにたくさんのサービスを提供できるかが肝となる。前者の集客力に関して言えば、王者ヤフージャパンが圧倒的だ。そのヤフーを越えるためには、ヤフーを凌駕するリーチ率を持つメディア――すなわちテレビやラジオなどのマスメディアから客を呼び込むしかない。だからライブドアにしても楽天にしても、テレビ業界にさかんに触手を伸ばしている。

 しかしポータルビジネスの価値の極大化と、通信と放送の融合は、当たり前だが決して同じものではない。ポータル企業がテレビ業界に触手を伸ばしたからといって、それを「通信と放送の融合を目指している」と言ってしまうのは間違いだ。

 ネットとテレビの融合に関して言えば、楽天やライブドアが言っているのとはまったく別の方向性で、現時点でもかなりの部分まで道筋が見えつつある。

 先日のエントリーで歌川令三氏の「新聞がなくなる日」という本を紹介し、「コンテンツとコンテナー」モデルについて書いた。そのアナロジーをそのまま流用するのであれば、いま起きつつあるネットとテレビの融合モデルは、すなわちコンテナーの多様化である。

 以前「多チャンネル化」という言葉があった。チャンネルがどんどん増えていくのは間違いないが、いまここで言おうとしているコンテナーの多様化というのは、そうした多チャンネル化の延長戦にあり、さらにコンテナー自体の進化をも促そうというものだ。

 では、コンテナーの進化とは何なのだろうか。進化したコンテナーの具体的なケースは、ふたつある。しかしここで、ちょっとエントリーを書く時間が尽きてしまった。残りは数日内に。