「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの教室:古代エジブト文明の『円の面積を求める公式』に小学生がチャレンジ

2012年07月02日 | 教室の風景



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未知なものに対する探求心は、新たな知識を獲得する喜びを原動力としていると思います。

それは、大人は無論のこと、子どもにとっても大切なことで、学習を指導する場合、常にその点に留意して指導することが大切です。

最近、ある小学校の小6の授業で、小5の終わりに習った円に関する問題について復習するために、まず公式を生徒に聞いてみました。

すると、過半数を超える生徒が、すでにその公式を忘れていることが判りました。

円に関する問題、例えば円周の長さ・円の面積・おうぎ形のまわりの長さや面積などを復習する時、求積公式を覚えているか、確認する必要があります。

公式を覚えることが、無味乾燥な学習と思われがちですが、はたしてそうでしょうか。

算数・数学は論理的に考える教科ということで、覚えることを軽視(忌避)し、公式の定着度が弱い場合、その公式を使って問題を考える喜びさえ知らずに、意図せず算数嫌いを増殖させることにもなります。

この事実は、求積公式だけではなく、割合や速さの公式にも当てはまります。

「あのね、割合の公式・速さの公式なんか覚えちゃダメなんだよ」などと、変に馴れなれしいタイトルで、公式不要論をブログで展開している塾教師もいます。

しかし、公式を教えずに割合や速さを教えるという趣旨を活かす対応策が不十分で、生徒が興味を持って公式を学習するために必要な指導力が無い結果、そのような主張をしているように、私には思われます。

公立中学校で中3に対し、同様に円に絡む長さや面積の問題を出すと、予想以上にその公式を忘れている生徒が多いのに驚かされるという事実からすれば、小6が小5で習った公式を忘れていても致し方ないと感じました。

小6の授業では、求積問題をやる前に、まず私はおよそ以下のような話からスタートして、公式の持つ意義と重要性を理解してもらうよう指導しました。


(アベリア)

「紀元前2000年頃、古代バビロニアでは、円周の長さが直径の(3+1/7)倍であることは知られていました。

また、紀元前1700年から1800年頃には、古代エジプトにおいて円の面積を求める方法も考案されていました。

大河の河口に古代文明は発生しましたが、その河口は肥沃な土地に恵まれました。

それは、毎年川が氾濫し、上流から養分を含む土砂を運搬し堆積させてきたからです。

反面、川の氾濫のために、所有する土地の境界線が不明瞭となることもしばしばだったでしょう。

その結果、それらの地域では、境界線を確定するために、測量技術や数学が発達したといわれています。


紀元前3世紀、古代ギリシャの数学者であり、さまざまな分野においてたぐいまれな才能を発揮したアルキメデスは、円周率の概数が3.14であることを示しました。

このように人間の長い歴史の中で、多くの人たちの努力の成果として、君たちが習っている円周の長さを求める式や、円の面積を求める式が生み出されました。

多くの人たちの涙ぐましい努力を無にすることなく、人類の貴重な知の資産を受け継ぎ、君たちはこのような公式をしっかりと覚えて使えるようにしなければなりません。」


(ネジバナ)

小6の授業で「円に関する問題」を復習した理由は、平面図形の面積を求める公式はすべて小学校課程で習い終わるので、「平面図形の公式を総チェック」をすること、円周率(3.14)を使うので「小数計算のチェック」をすること、ちょっと複雑な円に関する問題は、「計算の工夫(分配の法則)」をすることにより、楽に計算ができるかどうかをチェックすることなど、これら3つの学力を試して復習できるからです。

ところで、平面図形の面積を求める公式は、その図形を書いてその公式が導き出された理由を説明できなければなりません。

公式が導き出される過程を脇に置いて、公式を丸暗記すれば良いのだという考えでは、算数・数学の力を高めることはできません。

しかし、円周の長さを求める式や、円の面積を求める公式は、説明が難しく丸暗記せざるを得ませんので、その公式がどの様な変遷を経て作り出されたのか、生徒が興味が持てるように周辺部を掘り下げて説明する必要があります。

(確かに、円の面積を求めるのに、円を半円に分けて細かく切れ目を入れて開き、それを合わせて長方形(平行四辺形)にしてしまい、公式を説明することは可能です。)

なかなか公式の成り立ちを説明できないという観点から、円に関する公式が、小中学生に忘れられ易いことは、残念ながら納得できます。


(トケイソウ)

『紀元前1700年から1800年頃には、古代エジプトにおいて円の面積を求める方法も考案されていました』と記述しましたが、最近のテレビでそのことを古代エジプトの人たちの暮らしとともに話題にした番組がありました。

古代エジプトのパピルスに記された、その当時の数学の問題として、円の面積を求める考え方が示されていたことも取り上げていました。

その公式とは、『円の面積=(直径-直径×1/9)の2乗』という式で、円の直径からその1/9を引いた長さを一片とする正方形の面積と、求める円の面積が等しいとする公式です。

小学生に教える円の面積を求める公式は、『半径×半径×円周率(3.14)』です。

私は、古代エジプトで考案された円の面積を求める公式が、実際はどの程度正確な面積を求められるのか知りたくなり、上の式を変形して、今小学生が使っている円の面積の公式と対応させてみました。

(直径-直径×1/9)の2乗
=(直径×8/9)の2乗 (本来はこれを公式とすべきだと思います。)
=(半径×2×8/9)の2乗  (直径に半径×2を代入)
=半径×半径×16/9×16/9
=半径×半径×256/81

この式の変形は、理解いただけましたでしょうか?

この結果からすると、小学生が使う円周率3.14と、上の式の256/81が近ければ、かなり正確な円の面積を求める式であることが判ります。

そこで、比較のために分数を小数に直してみると、256/81=256÷81=3.1604938・・・と続く小数となりました。
(小学生には、小数第二位まで計算するように指示)

この数値を、3.14159で割ると、1.0060172・・・、計算ミスかと思って再度電卓を打ち直しましたが、やはりこの数値が出ます。(小学生には、3.16を3.14でわって小数第三位まで求めるように指示)

この結果から、およそ4000年前の古代エジプトにおいて、現在知られている円周率を使う場合と、驚くことに0.6%の誤差で円の面積を求めていたことが判りました。

この計算過程を、江東区の南央小学校や第二大島小学校の小5や小6の生徒に、アドバイスを与えながらやってもらいました。

公立小学校では、小数どうしの除法は小5で、また分数どうしの乗除は小6で学習する内容ですので、出来る計算は限定されます。

しかし、自分のノートの上で、古代の人々が使った公式を、本当に正確な面積が出せるものなのかを助言を得ながら判定することは、生徒にとって興味深いことでした。

直径を10cmと仮に置き、古代と現在習っている公式に当てはめて、比較する方法もありますが、やはり公式自体の評価をすることのほうが、意味あることでしょう。

ある学校では、この私の授業を行った日が学校公開日で、生徒が黒板に書かれた古代エジブトの公式にチャレンジしている姿を参観しながら、一緒になって保護者も興味津々といった面持ちで聞き入っていました。


(八重のクチナシ)

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1 コメント

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灘中学の数字入試問題がニュースになっていて、 (Hyoop)
2017-02-08 15:43:32
問題を探してもガラケーで見る事が出来るサイトが見付からず、偶然ここにたどり着きました。

ところで、速さと割合の公式ですが、
速さの公式は時速なら、時速を表す時に使う単位、km/hを式にしたものだと思います。
例えば80kmを平均時速40km(40km/h)で何時間掛かるかなら、
80÷40=2
で2時間となり、
これなら公式や単位がそのまま理屈なので簡単だし、計算するには必ず公式を使います。。

次に割合の公式は、
全体の中のある条件を充たしたものの数字÷全体の数字=%÷100
みたいな感じで良いのでしょうか?
実際に割合の計算は日常で幾つかのやり方をしてます。
例えば、2000円の商品が3割引で幾らになるか計算する時は、
??
2000×(7/10)=1400
で1400円と計算してます。
(7/10)は分数のつもりです。

頭が働かない時に、問題がややこしくて、元の数字と、割ったり掛けたりする数字が、どれにあたるか考えるのが面倒な時は、手間がかかりますが、最初に書いたやり方(公式?)で
(簡単な問題ですが先程と同じもので)
??
(X/2000)=(70/100)
みたいにして計算してます。
これだと関係ない数字が紛れ混んでいて、頭が働かない時でも、
2000と100、Xと70が対応するので間違わずにすみます。

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