花のアート写真工房

Ⅰ:透明水彩画集
Ⅱ:旅エッセイ(海外編)

【アートに対する情熱は、青春そのものです!】

フォトエッセイ:尾瀬からのメッセージ~その1「はじめに」

2009年04月25日 23時42分21秒 | 尾瀬からのメッセージ
          

            

           

 尾瀬ヶ原・尾瀬沼は、群馬県、福島県そして新潟県にはさまれた所に位置し、その周囲は、深い山々に囲まれている。そこは、20世紀に初めて世間に知れ渡った日本を代表する湿原である。

 約30年前までは、私の住んでいる家の近くにも湧き水が出る場所があり、モウセンゴケが生育していた。清水は水が冷たく夏が来ると格好な子供の遊び場で、至る所にあった。ただ、「湿原」という呼び名を知らなかっただけだ。

 現在では、有名な湿原も、周囲の開発で枯れてしまって、井戸を掘って何とか湿原を維持している。ある場所では、田んぼのど真ん中に湿原があり、土壌の栄養化が問題になっていて、関係者のご苦労が伺われる。また、繁殖力の強い自生の柘植の木で湿原がおびやかされた所など、日本各地の湿原がどんどん減少している。それも長い歴史の中で、たかだか百年ぐたいの急速な開発により、ひとの行動範囲が広くなったことが起因しているのかも知れない。

 フォトエッセイ「尾瀬からのメッセージ」は、湿原が織り成す自然の美しさや厳しさを季節・風・水・光・そして命を題材にして取り組んだ。
 



フォトエッセイ:尾瀬からのメッセージ~その2「かけめぐる季節」

2009年04月25日 23時42分03秒 | 尾瀬からのメッセージ
         

          

         

          

 5月中旬のミズバショウの花に始まり、レンゲツツジそしてニッコウキスゲへと開花はめまぐるしく移っていく。10月中旬の草紅葉で、また長い冬眠に入る。
 毎年同じ時期に咲くとは限らない。その年に積もった雪の量や気象などの変化により、咲き乱れる花の量にも影響がある。
 宿泊の予約する時に、山小屋の主人に今年の開花状況を聞いてみても、数ヵ月後のことは予測がつかないと言う。

 「行雲流水」と言うことばがある。雲はどんどん行き、水は絶え間なく流れる。同じ様に、人生も日々変化してやまないと言う意味らしい。昔から、日本には自然の移り変わりを、自分の心に置き換えて詠まれた歌が数多くある。日本人には、知らないうちに自然観を読み取る心が備わっているかも。しかし、今の世の中では、私たちには、そのような心のゆとりがあるのだろうか。

フォトエッセイ:尾瀬からのメッセージ~その3「風が吹くとき」

2009年04月25日 23時41分44秒 | 尾瀬からのメッセージ
       

       

         

 尾瀬を訪れるひとは、8月の下旬に入るとめっきり少なくなる。あたり一面閑散として時たま行きかう人に出くわすと、人懐かしい気持ちになる。生活感のないシーンと張り詰めた静寂な空間である。その中で、時折聞こえる鳥のさえずりと、風による木立や葉のこすれる音が不気味に聞こえる。

 風は、生き物のように息をしている。あるときは強く吹き、またあるときは弱くなる。そしてぴたっと止まる瞬間もある。花の写真撮影は、その時がシャッターチャンスである。
 その感覚を味わうなら、まず寝転んで目を閉じよう。葉のこすれる音がどこからともなく聞こえはじめ、徐々に大きくなり、そして徐々に去っていく。ヨシなどの葉が乾燥しきった秋口は、迫力ある風の息使いに自然の驚異すら覚える。
 数十年前、ステレオ効果を売りにした映画館が現れ、私は観に行ったことがあるが、その類ではない。
 童話の世界では、風が「ぴゅっー」とふくと何かの予感を連想させる。風は、目に見えないだけにドラマチックである。


 

フォトエッセイ:尾瀬からのメッセージ~その4「水中花」

2009年04月25日 23時41分28秒 | 尾瀬からのメッセージ


       

       

 水中花と言えば、私と同年齢な方(中高年)は、松坂慶子さんが歌っていた「愛の水中花」を思う浮かべるかもしれない。 これも愛~ あれも愛~ たぶん愛~ きっと愛~ と色っぽく歌われるとたまらない。

 また、ある人は、子供の頃に縁日で買った水中花を思い出すかもしれない。風鈴、ほおずきそして金魚などの一角に水中花を売る店もあった。コップの水にゆれる花は、涼しく見る角度により花びらが変形して楽しい。

 水かさの増した川に浸かったミズバショウは、水の屈折と水面のわすかな波紋があいまって実にきれいだ。もう何年もその写真を再度撮ろうとチャレンジしていが、なかなか遭遇しない。

 その目に映る不確かさ、曖昧さが、物事を理詰めで考えがちな私たちへの自然の挑戦かもしれない。

 

フォトエッセイ:尾瀬からのメッセージ~その5「いちばん輝くとき」

2009年04月25日 23時40分29秒 | 尾瀬からのメッセージ
         

         

          

自然界に存在する光には、太陽、火そして月の明かりなどがある。

 私は、キャンプファイヤーや飯ごうすいさんでマキが燃えるときの炎の勢いを見るのが好きだ。しかし、小学校や中学校のキャンプファイヤーは、よく雨のため延期や中止になった。旅立つ前に、自作の歌集で歌の練習までしたのに、残念な思いが脳裏によみがえってきた。

 尾瀬沼の朝は早い。4時前からごそごそと動き出す。格好な撮影ポイントには、カメラ三脚の行列ができた。その90度左の方向に赤い月明かりが湖面に揺らいでいた。月のあかりは、どことなくぼんやりとして、もの悲しさを覚える。

 昔から、月にまつわる歌は多い。私も、お月さまをみているだけで心がなごんでくる。