チェンマイへの搭乗まで、2時間ぐらい暇であった。
今回の旅行のスケジュールは、飛行機の便とホテルの予約以外はまったく立てていなかった。ただ、バンコク郊外にある線路市場とはどんなものなのか?また、チェンマイ北部で暮らす山岳民族、特に首長族の女性に興味があるため、その目的を果たす旅でもあった。
とりあえず、明日の予定を考え情報収集のため電話をかけることにした。コインを入れても繋がらない。四苦八苦してテレホンカードを購入しても同様であった。タイでは、日本のようにダイアルを押してもピィ、ピィと音がしなく、もたもたしていると時間切れになって繋がらない。結局電話をかけるのをあきらめた。
えんじ色のパスポートを持ってる婦人に声をかけた。日本語で誰かにしゃべりたかったからだ。
彼女は、チェンマイに住んでいて東京からの帰りであった。チェンマイのゲストハウスを舞台にした、9月中旬に封切した「プール」という映画について聞いてみた。その映画について彼女も知っていたが、残念ながら観る暇がなかったそうだ。
彼女は迷惑そうに「映画どうだった」と聞き返した。母と娘のナイーブな心の移り変わりをとらえた内容で、私には難しくて解らなかったと答えて、その場を去った。
家を7時に出て、12時時間後に、やっとチェンマイの地に降り立った。
名前を書いたプラカードを胸のあたりにかざした人や、プラカードを頭上に持ち上げ左右に動かして必死にお客さんを探している人など、迎えの人々が私の目に飛び込んできた。その光景は色鮮やかであった。その中には日本人のネームも。