タウンハウスで来るはずの医者を、苛立ちながら待つリンカーン・ライムの元へ、いつものように
皺くちゃなスーツを着たニューヨーク市警重大犯罪課所属ロン・セリットーが訪ねてくる。犯罪の
発生だ!しかも「極秘」だという。リンカーン、美貌の刑事アメリア・サックス、セリットー、介
護士のトム、そして地方検事補のローレル、さらには後から、我らがプラスキー(常にリンカーン
にルーキーと呼ばれるが今回も大活躍で、いつも応援したくなる)も加わり、チームは米国政府謀
略機関を敵に回す。
本シリーズでは初めから犯人が登場する。大抵姿を現さない犯人が不気味な空気を作るが、ジェフ
リー・ディーヴァーは犯人像を克明に描きながら、頭脳明晰な犯人のち密な行動により、リンカー
ンやアメリアが窮地に陥ることになる。この辺りの展開はいつもながら読者を惹きこみ、ついつい
読み進めてしまう。
天才犯罪学者のリンカーンだが、遠く離れたバハマでの事件に証拠資料の調査もままならず、地元
警察の非協力的態度に、ついにバハマへと赴く。真っ赤なストームアロー(電動車いす)でバハマ
の国際空港を出るリンカーンの姿に感動を覚えた、シリーズの最初の頃(ボーン・コレクター)で
は自殺することを本気で考えていたことを思い出した。本シリーズでは四肢麻痺のリンカーンの懸
命なリハビリと驚異的な医療の進歩に驚かされる。
何度も危機を脱してきたリンカーンのチーム(勿論介護士トム・レストンも含めて)は作品を重ね
るごとに練度を高め、何気ない会話も愉しむことが出来るし、お互いの行動に密接な関連性を感じ
させる。年末年始の休暇にも最適な本です。
ゴースト・スナイパー ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫