冒頭から日本における外国人労働者の実態が次々に出てきます。例えば1991年に大手自動車会社の下請
け零細工場で働いていたバングラディシュ人の男性は、安全装置の付いていない金属プレス機に挟まれ、
指を三本落としたのに会社が労働災害申請をしてくれず、100万円だけ渡して帰国させようとしたり、2
005年には岐阜県の縫製工場で「研修・技能実習」として働いていた女性たちは、1カ月で合計400時間
以上働かされていたり、2008年には、「技能実習生」の中国人女性たちが山梨県のクリーニング工場か
ら東京まで逃げてきて、筆者たちに助けを求めてきました。彼女たちは「縫製」「婦人子供服製造」の
技能実習という名目で来日したのに、縫製の仕事はもらえず、クリーニング工場で信じられない低賃金
で、ずっと働かさせられていたそうです。
2019年に事業主から届け出があった外国人労働者は、およそ166万人、筆者は「移民社会」はすでに始
まっていると言います。それが政権が特定の人びとの反発を恐れて「移民」という言葉を使うことをた
めらい、正当に就労できる在留資格(ビザ)を作ろうとせずに、はじめは観光ビザでオーバーステイ、
今では技能実習生や留学生たちが、就労名目以外のビザで働く労働者が多いため、極端な低賃金で働く
奴隷労働の温床になっているとのことです。
本書の筆者は長年日本経済を支えてきた外国人労働者問題の最前線に身を置き、様々な案件に対処して
きました。本来政府が主体となって解決を図るべき問題です。劣悪な環境で働いてきた彼らは、円安も
あり、ドンドン日本から離れていく事によって、現場は熟練工、現場監督などが完全に人手不足に陥っ
ています。
日本人も海外で働き、観光にも赴きます。私たちの同胞が見知らぬ地で嫌な目に合うことが無いように、
政府も日本で働く人々の現状を知り、キチンとした対策を打たなければいけません。本書を沢山の人が
読み、外国人労働者の実情を知ってほしい。
国家と移民 外国人労働者と日本の未来 鳥井一平 集英社新書