よしーの世界

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黒船前後の世界   加藤祐三

2023-01-19 06:30:09 | 
日本史での幕末の扱いは国内情勢が中心であり、幕府は鎖国状態だったため、世界とのかかわり方が今一

つ分かりにくい。それが近年様々な文献、資料を国内で見ることが出来るようになって研究が進んでいる

という。当時それまで世界の海で勢力を競ったスペイン、ポルトガル、オランダは陰りを見せ、イギリス

が超大国となり、新興国アメリカが勢力を伸ばそうとしていた。


多数の軍艦を有するイギリスは中国に対して、中国(清朝)が禁輸しているインド産アヘンを密輸して利

益を確保している。この時の中英貿易バランス(1837年7月~38年6月)は中国からのイギリスに対して

の輸出で茶が2390ポンド、絹が513ポンド、その他を合わせて3147ポンド。イギリスから中国に対しては

アヘン3376ポンド、錦1641ポンド、金属620ポンドとアヘン以外ではイギリスの大幅な赤字だった。中国

がアヘンの密貿易に対して厳しい立場をとるとイギリスは中国を攻め(アヘン戦争)屈服させ、賠償金を

得、香港を植民地としている。


結果的に幕府はアヘン戦争での中国の敗北を受け、大国との避戦を念頭に置き、開国に方針を変えた。さ

らにイギリスが中国とのアヘン戦争が長引いたため日本に対して出遅れ、アメリカの派遣したペリーが日

本と和親条約を結び、開国の道を最初に開かせることになった。


幕末は「竜馬が行く(司馬遼太郎)」のように坂本龍馬や西郷隆盛、桂小五郎らの活躍を見るだけで、興

奮し、読んでいて熱くもなるが、当然欧米列強の海外進出という情勢が大きな影響を徳川幕府に与えてい

る。軍艦を備える必要性から幕府は識別するために日の丸を用いるようになり、当時の人々がそれまでの

藩中心ではなく、国として日本を考える下地を作ったことになる。


学術的要素が強い本(補注も詳細で長い)だったので、就寝前に読みだすと3、4ページ程度で途端に眠く

なってしまい、読み終えるのに時間がかかってしまいましたが、幕末を考える上で、より視野が広くなり、

非常に興味深い本です。


   黒船前後の世界   加藤祐三                   岩波書店
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