正に「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ(オットー・ビスマルカ)」を改めて示している。池上彰・
佐藤優の二人は本当に博識で、私の知らない事柄が次々に登場し、その分析の凄さに感嘆してしまった。
2015年の出版ながら、すでにロシア・ウクライナ問題を取り上げ、佐藤氏によればウクライナの国内状
況も不安定なためにフィンランド化(独立を保持しながら、社会主義国にならずNATOにも加わらない)
しか道はないだろうと指摘しています。
本書では世界史を学び直す必要性を説き、中東、オスマン帝国、明王朝、ドイツ帝国と続き、現代に起
きている諸問題の根本を解説していますが、理解するのに時間がかかる複雑な中東情勢、すでにイスラ
ム国が欧米よりもイスラム内部と敵対していること、トルコのエルドアン大統領が独裁者となり、オス
マン帝国の復活を目指していること、膨張志向の習近平政権が明王朝の時代に戻りつつあること、ロシ
ア語も堪能なドイツのメルケル前首相の出自を明らかにし、アメリカがロシアのスパイではないかと疑
っていたということ、サミット記者会見の裏側と、驚かされる事ばかりです。
映画「ビリギャル」も取り上げ、佐藤氏の鋭い分析に舌を巻きますが、そこからの日本の教育に関する
問題提起は見事。「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」という慶応義塾大学元塾長の小泉信
三氏の言葉を池上氏が紹介していますが、正に至言だと思います。
元々「反知性主義」とは、エリートによる知の独占に反発することで、現在の「学問などどうでもいい。
実証性もどうでもいい」という方向は間違っており、実証性、客観性を無視して自分の世界に閉じ籠っ
ては、かえって自分を見失うだけだと警鐘を鳴らしています。キチンとした事実を積み重ねたうえでの
議論が必要性を感じました。日本の政治家に、沢山の人々に是非読んでほしい。
大世界史 池上彰・佐藤優 文春文庫
佐藤優の二人は本当に博識で、私の知らない事柄が次々に登場し、その分析の凄さに感嘆してしまった。
2015年の出版ながら、すでにロシア・ウクライナ問題を取り上げ、佐藤氏によればウクライナの国内状
況も不安定なためにフィンランド化(独立を保持しながら、社会主義国にならずNATOにも加わらない)
しか道はないだろうと指摘しています。
本書では世界史を学び直す必要性を説き、中東、オスマン帝国、明王朝、ドイツ帝国と続き、現代に起
きている諸問題の根本を解説していますが、理解するのに時間がかかる複雑な中東情勢、すでにイスラ
ム国が欧米よりもイスラム内部と敵対していること、トルコのエルドアン大統領が独裁者となり、オス
マン帝国の復活を目指していること、膨張志向の習近平政権が明王朝の時代に戻りつつあること、ロシ
ア語も堪能なドイツのメルケル前首相の出自を明らかにし、アメリカがロシアのスパイではないかと疑
っていたということ、サミット記者会見の裏側と、驚かされる事ばかりです。
映画「ビリギャル」も取り上げ、佐藤氏の鋭い分析に舌を巻きますが、そこからの日本の教育に関する
問題提起は見事。「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」という慶応義塾大学元塾長の小泉信
三氏の言葉を池上氏が紹介していますが、正に至言だと思います。
元々「反知性主義」とは、エリートによる知の独占に反発することで、現在の「学問などどうでもいい。
実証性もどうでもいい」という方向は間違っており、実証性、客観性を無視して自分の世界に閉じ籠っ
ては、かえって自分を見失うだけだと警鐘を鳴らしています。キチンとした事実を積み重ねたうえでの
議論が必要性を感じました。日本の政治家に、沢山の人々に是非読んでほしい。
大世界史 池上彰・佐藤優 文春文庫