よしーの世界

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大世界史   池上彰・佐藤優

2022-03-06 08:47:11 | 
正に「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ(オットー・ビスマルカ)」を改めて示している。池上彰・

佐藤優の二人は本当に博識で、私の知らない事柄が次々に登場し、その分析の凄さに感嘆してしまった。

2015年の出版ながら、すでにロシア・ウクライナ問題を取り上げ、佐藤氏によればウクライナの国内状

況も不安定なためにフィンランド化(独立を保持しながら、社会主義国にならずNATOにも加わらない) 

しか道はないだろうと指摘しています。


本書では世界史を学び直す必要性を説き、中東、オスマン帝国、明王朝、ドイツ帝国と続き、現代に起

きている諸問題の根本を解説していますが、理解するのに時間がかかる複雑な中東情勢、すでにイスラ

ム国が欧米よりもイスラム内部と敵対していること、トルコのエルドアン大統領が独裁者となり、オス

マン帝国の復活を目指していること、膨張志向の習近平政権が明王朝の時代に戻りつつあること、ロシ

ア語も堪能なドイツのメルケル前首相の出自を明らかにし、アメリカがロシアのスパイではないかと疑

っていたということ、サミット記者会見の裏側と、驚かされる事ばかりです。


映画「ビリギャル」も取り上げ、佐藤氏の鋭い分析に舌を巻きますが、そこからの日本の教育に関する

問題提起は見事。「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」という慶応義塾大学元塾長の小泉信

三氏の言葉を池上氏が紹介していますが、正に至言だと思います。


元々「反知性主義」とは、エリートによる知の独占に反発することで、現在の「学問などどうでもいい。

実証性もどうでもいい」という方向は間違っており、実証性、客観性を無視して自分の世界に閉じ籠っ

ては、かえって自分を見失うだけだと警鐘を鳴らしています。キチンとした事実を積み重ねたうえでの

議論が必要性を感じました。日本の政治家に、沢山の人々に是非読んでほしい。


       大世界史   池上彰・佐藤優          文春文庫


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