「お帰りなさいっ。」

「山」「旅」「食」を中心に綴りたいと思います。
ただいまって遊びにきて頂ければ嬉しいです。

お帰りなさい。

2011年01月30日 | いろいろ

初めて相方の家に行った日
緊張する私に、笑顔で
「お帰りなさい」
と言ってくれた。

その言葉は私の宝物になった。

相方が山で連絡が取れなくなったとき
片時も離れずに私の手を握っていてくれた。

知り合いに会った時には
必ず「私の娘です」と紹介してくれた。


その義母が亡くなった。


あの声も
あの手の温もりも
まだ私の耳に、手に、残っているのに。

葬儀のときに親戚の方が言った。
この家は家族の縁が薄い
なぜ、いまそんなことを言うの。

でも、縁が薄いとしたら私のせいかもしれない。
10年ちょっとの間に祖母を義父を友達を送ってきた。
私がこの家に不幸を運んできたのかもしれない。

もう誰も見送りたくない。
見送るくらいなら、自分が先にいきたい。

葬儀のあと、相方が言った。
「俺は絶対にヒサより先にいかないから」

なぜ、そんなに優しいの。
あなたの方が辛いはずなのに。

友達が山で亡くなったとき、私はあなたに山に行かないでって言った。
あなたにとって山がどんな存在なのか知っているのに。
自分が残されたくないから、あなたから山を奪おうとした。
でも、あなたは、ただ、うん、わかったと言って山に行かなくなった。

私はあなたの傍にいる資格のない卑しい心の持ち主なのに。

人を送ることの辛さを知っているのに
自分が辛いから、先にいきたいと思っている。

そんな私の気持を知りながら、知っているから、
あなたは、私に
「絶対に先にいかない」と言う。


悲しくて、悔しくて、情けなくて・・・



四十九日の法要が終わったあと、私の母が教えてくれた。
「お見舞いにきたとき、お義母さんが言ってくれたの。
“ヒサさんに初めて会って、その笑顔を見たときに、この子を娘にしたいと心から思った”
そう言ってくれたのよ」

お義母さん、ありがとう。
私はあなたの娘になれて幸せです。

お義母さんはまだ私の傍にいてくれる。

笑わなきゃ。



心配して声をかけてくれた皆さん、
一緒に泣いてくれた皆さん、
そして、そっと見守っていてくれた皆さん、
ありがとうございました。

心から笑うのにはもう少し時間がかかるかもしれません。
泣き言ばかりこぼすかもしれません。
でも、これからも見守って頂けたら嬉しいです。    ひさ