千代の日記

鬱病を抱えたお師匠さんの奮闘記 (千代の会のHPはhttp://www.chiyonokai.com//)

吉原の光と影

2010年08月20日 | 本と雑誌
富士松延千代のホームページ http://www8.ocn.ne.jp/~hirake58/
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新内と、吉原は切っても切れない関係で、私も、吉原マニア(?)であるので、吉原関係の本は、色々読むようにしています。
今、読んでいるのは「吉原花魁日記」(森光子著)←あの女優さんの森光子ではない
大正13年19歳で吉原に売られた少女のホントの日記(大正15年に出版)。
これは、吉原版「女工哀史」というか「蟹工船」といったところだろうか。
この頃になると、吉原の遊女全員を「花魁」と呼んだらしい。
吉原と言えば、歌舞伎や、映画で見る華やかな花魁道中。美しい遊女が並ぶ張り見世。
御大尽や、文化人が集い、賑やかな三味線の音色。色と欲と嘘とホントが入り混じった世界を連想する。花魁のイメージは、見識が高く、美しく、芸も知識も一流・・・これは、江戸中期以前の「太夫」と呼ばれる遊女のイメージ。
(その後、花魁の質も、客の質も低下の一途をたどるのだけれど)
江戸吉原は、数々の邦楽の題材にもなっているし、粋な世界の代表でもある。
それらは、ある意味、遊びに行く男性側からの見方でもあると思う。
けれど、それは、ほんの「光」の部分で、過酷な労働(やはり労働でしょう)、病気と、死が常に隣り合わせの恐ろしい世界でもあると思う。
特に、この本を読むと、悲惨限りない遊女たちの生活が書かれている。
年端も行かない主人公は、初見世に出てからは、毎日、肉体的にも精神的にも、辛い日々が続く。
今までにも、「光」と「影」の部分は、認識していたけれど、改めて、この本を読むと、それを強く感じます。
自分に対して、恋愛感情のない男性から、ただただ「はけ口」として扱われるって、考えただけでも恐ろしい。。。。
そのことに関しては、江戸時代でも、大正時代でも同じことだろうし、禿から廓で育てられた新造も、いきなり他所から連れてこられた主人公もおなじであろう。
そうして多くの遊女がだんだん、諦めと、慣れで、廓の水に馴染んでゆくのだろう。
個人的な差もあるかもしれないなぁ・・・と思う。主人公は、馴染めずに苦悩しつづけ、見事、脱出して結婚する。(よかったよかった)
花魁と言えば一番にイメージするのが「揚巻」や「高尾」であるけれども、実際、皆、出来ることなら「苦界」から、1日も早く抜け出したいと思っていたのではないか。同じ女性として容易に想像できる。
新内では、遊女が、お客と恋をして、身上がりして、借金がかさみ、、、、心中したり、足抜けしたりというお話が多い。
これまでの私の それらのお話に対する見方は、恋するのはいいけれど、そこまで、(先々のことを考えないで)逢わないでも、ほどほどに恋をすれば?と思っていたけれど、この本を読んで、毎日、廓で、明日のない絶望的な日々を送っていれば、たまたま、好きな人が出来れば、そりゃ、めちゃめちゃに夢中になってしまうだろうなぁ~と考え方を改めさせられた1冊でありました。




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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
そうですか。 (山画新内(蕎麦)太夫)
2010-08-21 07:13:51
そうですか。
実体験の凄いご本なのですね。
今年亡くなられたみなこさんは吉原芸者で芸を売っていたのですがそのバックボーンに花魁さん達が居たのです。
私も新内心中物が好きでよく語っていますがその背景の世界ももっと知らなくてはと自戒です。
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私も時代小説で吉原関係の本はよく読みますが、あ... (雪太郎)
2010-08-21 15:33:41
私も時代小説で吉原関係の本はよく読みますが、あくまでもそれは小説。しかも江戸時代の華やかなりし吉原です。
この本は大正時代に吉原入りした方のお話とのことですから、吉原の質も下がり、辛い時代だったことだろうと思います。
それに、江戸時代の吉原だって、太夫・花魁ともてはやされるのは、ほんの一握りの女性で、他はただただ身体を売る世界だったのですよね。
小唄にも吉原の風景はよく出てきますが、「苦界」ということを胸に刻んでみたい、と思いました。
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山画新内(蕎麦)太夫様>コメントありがとうござ... (富士松延千代)
2010-08-21 23:52:33
山画新内(蕎麦)太夫様>コメントありがとうございます。(^^)
私も、まだまだ勉強不足す。吉原は、存在した時代も長いし、奥が深いです。
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雪太郎さま>おっしゃるとおりだと思います。「初... (富士松延千代)
2010-08-21 23:58:41
雪太郎さま>おっしゃるとおりだと思います。「初回」「うら」「なじみ」とか、やぼな客は断る・・・とか、のんきな事を言っていた時代は江戸中期くらいまでで、しかもエリート花魁だけですよね。
この本の主人公は、日記に、「今日の客は12人」って書いてありました。12人!!(@@; ゲゲー!!これじゃ、体を壊さないほうが不思議です。
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私も浅草ライブの一か月ほど前に読みました。 (おまさ)
2010-08-23 10:03:26
私も浅草ライブの一か月ほど前に読みました。
正直、「わっ、今読む本じゃなかった」って思いましたです(笑)。
表舞台と裏舞台。
これを読んだことで奥行きのあるパフォーマンスができるようになるなんてことはないでしょうけど…。
知らないよりも知っていた方がいいですよね。
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おまささま>コメントありがとうございます。あま... (富士松延千代)
2010-08-23 23:43:24
おまささま>コメントありがとうございます。あまささんも読まれましたか・・・
確かに吉原のきらびやかな唄を唄うには、このお話は、暗すぎますね。そういう面もあるということをふまえて、それでもやはり、江戸の男たちの心を捕らえて離さなかった不夜城吉原を唄っていきましょうね☆
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遅ればせながら、僕は年に二回三ノ輪の浄閑寺に供... (仙堂新太郎)
2010-08-24 16:48:11
遅ればせながら、僕は年に二回三ノ輪の浄閑寺に供養に行ってます。
歌舞伎、長唄、映画等で音楽を担当していますので当然ですね、お墓の前で線香を手向けますと涙が零れ落ちます。
Blogに書いてます。

http://blogs.yahoo.co.jp/sendodazo
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仙道新太郎さま>コメントありがとうございます。... (富士松延千代)
2010-08-24 20:28:52
仙道新太郎さま>コメントありがとうございます。ブログ拝見させていただきました。お参りなさってるのですね。良いことだとおもいます☆可愛そうな女性達のご冥福をお祈りしたい気持ちです。
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