つれづれなるままに弁護士(ネクスト法律事務所)

それは、普段なかなか聞けない、弁護士の本音の独り言

Rさんへの手紙

2020-10-18 16:53:00 | としまえん問題


※いちばん左がRさんからもらったお手紙。
エルちゃん、カルちゃんがプールに入っているイラスト付き❤️
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Rさんへ

 

お返事が遅くなってごめんなさい。

カラフルで可愛いエルちゃん・カルちゃんのイラスト入りお手紙、ありがとうございました。

プールと木や植物・動物たちを心配する気持ちが伝わってきて、読んでいてとても温かい気持ちになりました。

 

お手紙の文章や丁寧なイラストから、Rさんが賢い女の子なことがわかりました。

その辺のことはぴぴーんとわかっちゃうのです。私には( ̄▽ ̄)☝️

 

なのでこのお手紙では、ちょっとだけ難しい話を書いてみようと思います。

 

Rさん、私、そしてたくさんの人が大好きだったとしまえんは今年8月31日で閉園しました。

今、としまえんの閉園を残念がったり、あるいは、閉園までの経緯に疑問を感じる大勢の人たちが思い思いの声を上げています。

プールだけでも残して欲しいという人。

大切な樹木は切っちゃだめだという人。

小動物や昆虫たちを助けてほしいという人。

ハリーポッター・スタジオツアーなんていらないという人。

色んな人が色んな考えから色んな声を上げていて、Rさんのようにそれを応援してくれている子どもたちもたくさんいます。

みんな「自分は正しいことをしているんだ」と自信をもって活動をしています。

 

でも、そういうときほど、ちょっと立ち止まって、自分のしていることは本当に正しいのか、としまえんを閉園させてハリーポッター・スタジオツアーを作ろうとしている人たちは本当に間違っているのか、としまえんの樹木を切ってしまうのは本当にいけないことなのか、小動物や昆虫の住処を奪うことは絶対に許されないことなのか、プールを壊すことは何故ダメなのか、見つめ直してみることも大切です。

そうすることで、今、自分は本当は何に声を上げなければいけないのか、どんな言葉で、どんな方法で声を上げるべきなのか、あるいは声を上げるべきじゃないのかが見えてきます。

 

自分がしていることを見つめ直すときに一番いいのは、相手の立場になって考えてみることです。そして、できるだけ自分の身近な例に置きかえて考えてみる。

 

としまえんを閉園させて、樹木を切って小動物や昆虫のすみかを奪いハリーポッター・スタジオツアーを作ろうとしている人たち。プールを壊して練馬城址公園にしようとしている人たち。そして、それに反対している人たち。

 

自分の身近な例に置きかえてみましょう。

私はRさんの住んでいる家を知りませんが、たとえば、Rさんがお金持ちの家の女の子で、広い庭のある大きな家に住んでいるとしましょう。

Rさんの家の庭には毎年春に綺麗な可愛い花を咲かせるモッコウバラがたくさん植えられています。モッコウバラの甘い蜜を求めてたくさんの昆虫や小鳥たちもやってきます。庭の真ん中にはお父さんが作ってくれたブランコがあります。小さい頃よく遊んだビニール・プールも置いてあります。暑い夏の日にはお母さんがビニール・プールに水を入れてくれて近所の友だちと水遊びをしました。ブランコも友だちに大人気でした。近所のおばさんたちはモッコウバラの花が咲く季節になると、「きれいねぇ」といつもほめてくれます。

 

でも、モッコウバラは花の咲く季節が終わってもどんどん枝を伸ばし葉を茂らせ、お父さんは毎週日曜日になると真夏に汗だくで枝や葉を切らなければなりません。放っておくとお隣の家の庭にまで枝が伸びていってしまうからです。

Rさんの家族は話し合って、「これ以上、モッコウバラを育て続けることはできない。Rも大きくなったのでブランコとプールは取り払って捨ててしまおう。そして、大き過ぎた家を小さな家に建て替えて、その代わり、広くなる庭に今度は近所の人たちが遊びに来てくれる小さなバーベキュー場を作ろう」ということになりました。

ところが、モッコウバラを取り払おうとしていたらいつも花を見に来ていたおばさんたちが「私はこのモッコウバラが大好きだから抜くのは反対」と言い出しました。小さな弟や妹たちをブランコに乗せてあげたいRさんの友だちや、ビニールプールでまだ遊びたい友だちが「ブランコを残して。ビニール・プールを捨てないで」と家に押しかけてきました。

 

モッコウバラが好きなおばさんの気持ちも、ブランコやビニール・プールが大好きな友だちの気持ちも分かるのですが、それらはどれもみんなRさんの家のもので、Rさんの家の庭にあるものです。

Rさんのお父さんとお母さんは困ってしまいました。

 

これがRさんの身近な例に置きかえてみた今のとしまえんの問題です。

としまえんの問題は、としまえんを経営していた西武鉄道さんという会社や、ハリーポッター・スタジオツアーを作ろうとしているワーナーさん、東京都や練馬区といった地方自治体が相手。人間であるRさんの家族と同じには考えられない、と思いますか?

でも、法律では会社であっても人間と同じく権利や義務を持つことができます。これを「法人」といいます。地方自治体も同じ。そして、「人間から切り離された会社や地方自治体」というのは原則としてないのです。西武鉄道さんにもワーナーさんにも東京都にも練馬区にも、そこで働いてお金を稼いで、家族を一生懸命養っている人たちがいるのです。

 

さて、こういう状態になってしまったとき、Rさんや、Rさんのお父さんやお母さんはどうするでしょう?

「みんな、なに勝手なこと言ってるの?そもそもモッコウバラもブランコもビニール・プールもウチのものでしょ。私たちが私たちのものを切ろうが壊そうが捨てようが勝手でしょ?」

そう言いますか?

たしかに自分のものをどうしようと自由なのです。それは人間でも会社でも同じ。

近所のおばさんたちは勝手にモッコウバラが大好き、と言ってるだけなのです。

友だちは勝手にブランコとビニール・プールをもっと使わせてよと言ってるだけなのです。

そのためにRさんの家族は自分の家の自分の庭を作り変えることもできないのでしょうか?

それもなんだか、少し、おかしい気がします。

 

「私たちが私たちのものを切ろうが壊そうが捨てようが勝手だ」

「モッコウバラもブランコもビニール・プールも捨てるな」

お互いが言い続けていたら、その町はとても息苦しい、住みにくい町になってしまうでしょう。

法律的に正しいことだけがすべてじゃない。法律的に正しいことをしていれば確かに警察に逮捕されたり裁判にかけられたりすることはありません。でも、それだけでみんなと仲良く暮らしていけるかといったら、そうでもありません。

弁護士をしている私がこんなことを言うのも変ですが、世の中は法律だけで動いているのではありません。法律を守ることは大切。でも、世の中はみんなが法律を守りつつ、法律ではない部分で動いている方が多いのです。

「私たちが私たちのものを切ろうが壊そうが捨てようが勝手だ」というのは法律に従った正論。

「モッコウバラもブランコもビニール・プールも捨てるな」というのは単に自分の気持ちを相手にぶつけているだけ。

でも、世の中って、そういう人たちの考え方や気持ちのぶつかり合いでできている。

そして、そういうぶつかり合いを仲直りに変える知恵を僕らは持っている。もちろんRさんも。

その知恵は、「法律」とはちょっと違うものなのです。

 

Rさんは賢い子どもだと思うので、この手紙にはその仲直りの答えは書きません。

自分で、あるいは仲のいい友だちと考えてみてください。

考えてみることは絶対に無駄じゃない。いつか、仲のいい友だちと喧嘩しそうになったとき、きっと役に立ちます。

 

弁護士平岩利文

 

追伸:もし、Rさんが植物が大好きなら、お父さんとお母さんに頼んで屋久島というところにある縄文杉という木を見に行ってみてください。

縄文杉は「4000年以上生きている」「いや7000年以上だ」といわれている、気が遠くなるような長い時間を生きてきた杉の木です。ユネスコの世界遺産にも指定されています。

私は絵が下手っぴいなので代わりに昔私が見に行った縄文杉の写真を送ります。



 当時、私は弁護士になるための試験に受からなくて、行き詰った毎日を過ごしていました。

何故、縄文杉を見に行ったのか、その理由は忘れてしまいましたが、目の前で見た縄文杉は「何をくよくよしてるんだ。宇宙の寿命に比べたらお前の悩みなんてチリのようなもんだ。ゆっくり、大きく生きろ」と言っているような気がしました。「私が生きてきた時間と比べたってお前の一生なんて一枚の葉っぱみたいなもんだ。大丈夫、心配するな」と言っているような気がしました。

試験に受からなくて悩んで苦しんでいた自分がとてもちっぽけに思えました。

それからしばらくして、私は試験に受かりました。

植物というのは、人間を悩みから救ってくれる不思議な力を持っている。

暑い暑い夏の日、大きなクロガネモチの木陰で休むだけでホッとするのも同じです。

としまえんで伐採されてしまう予定の木を一本でも助けられれば、もしかしたら7000年後、人間を勇気づけて助けてくれる巨木になるかもしれない。

私やRさんやその子供やそのまた子供の代でも間に合わないかもしれないけれど、7000年後の子孫が、成長した木を見上げているのを想像すると少しだけワクワクしませんか?

 

追伸2:としまえんは閉園してしまったけれど、それをきっかけにして私はRさんからお手紙をもらい、こうしてRさんにお手紙を出すことができました。

これまで会ったこともない、もしかしたら一生会うはずもなかった一人の女の子に手紙で何かを伝えることができた、というだけでもとしまえんはすごく意味のある存在だったのだと私は思っています。


としまえんの伐採樹木を救いたい

2020-10-18 12:45:07 | としまえん問題

ポプラ@氷川台三丁目公園さん、千客万来さん、buttobiさん 、なるみんさん、hamaさんから寄せられたとしまえんの伐採樹木の救済案・利用案。一部、表現に私が手を加えた個所もあるが、ほとんど彼らが送ってくれた原案どおりだ。

伐採される樹木に心を痛めている人たちは、ただ単に「木を切るな~、木を切るな~」と騒いでいるのではない。

こういう具体的な意見を持って必死に活動している人たちを、SNS上や私が公開した樹木保存アンケートで「ノイジー・マイノリティ」などと揶揄する方もいる。

さて。本当にノイジーなのは誰だろう?

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(趣旨)

西武さんがこれまで園内で大事に育てていた木を切るのは、としまえんのファンにとっても、もちろん西武さんにとっても、悲しいこと。 人の都合で切られてしまう樹木への感謝と供養の気持ちとして、最後までその命を大事にしたい。 それにより、閉園に泣く人たちの悲しい気持ちを、前向きな気持ちに昇華させたい。

西武さんがこの考え方に共感していただけるなら、以下の提案を検討していただきたい。

(提案)

(1)まだ残っている樹木の種子や、生えて間もない苗木、移植可能な樹木があれば、実生や植えかえ等により、園外で大切に育てたい。

移植先については、練馬区内の小中学校、幼稚園、公園、緑化樹木医育成場などを考えている。

いずれにしろ、移植の可能性等を判断するためにいちど、造園業者さんなどの専門家にとしまえん跡地内を見ていただく機会を頂きたい。

(2)伐採される樹木は、その一部を、材木として2次利用することを考えたい。

※イム設計さんによれば、「樹木の二次利用は考えていない」(9月30日返答)とのことだったが、 西武グループさんは、グループビジョンの中で、 「地域・社会の発展、環境の保全に貢献」すること、 「常に、自然環境、地球環境への配慮を忘れない」ことを宣言されている(https://www.seibuholdings.co.jp/sustainability/environment/)。 このような企業姿勢に共感する市民と共同して、以下の伐採樹木の二次利用を前向きに検討できないか?

① ドングリ作戦

ドングリや小さな苗木(例えば樹高20cm以下)を採取するための子連れ採取イベントを開催できないか。 としまえんのドングリや小さな苗木を預かって、自宅や学校などで大事に育ててみたいという人の声がたくさん寄せられている。

30年後、スタジオツアー跡地が練馬城址公園になるとき、多くの人々が育ててくれた木を、再びとしまえんの地(練馬城址公園)に戻してあげる、というストーリーも考えている(東京都が募集するパブリック・コメント等を通じて東京都にも提案していきたい)。

  • 子どもを含む数人の有志のとしまえん跡地への立入許可が必要となる。現在進行中の工事との関係があるので、イベント趣旨に適したエリアと立ち入り可能な候補日時を指定して頂きたい。
  • 参考サイトとして、一般社団法人街の木ものづくりネットワーク(マチモノ)街の木の命をつなぐ「マチモノ植樹プロジェクト」

http://machimono.web.fc2.com/Syokuju/Syokuju.html

② 西武グループにおける再利用

a:伐採した樹木を使って、「としまえん公式グッズ(木工品)」を製作し、販売してほしい。たとえば、としまえんの伐採樹木を使ったカルーセル・エルドラドのオルゴールなど。

グッズの企画担当者が新製品企画を立てられる間、伐採材の廃棄を一部保留してほしい。

としまえん閉園後もとしまえんグッズを求める人たちが後を絶たない現状を見れば、「としまえん公式グッズ(木工品)」に対する潜在的需要は相当程度あると思う。

b:従前から行われている間伐材の再利用のように、駅のベンチなど、自社で使う備品への利用を検討してほしい(https://www.seiburailway.jp/company/eco/for-the-future-of-the-earth/index.html)。

「自然環境、地球環境への配慮を忘れない」観点からの伐採木利用は必ず西武グループへの評価につながる。

「西武鉄道の各駅を巡って、『形を変えたとしまえんの樹木』を探すスタンプラリー」など、楽しい鉄道企画なども検討してもらいたい。

③  外部団体による再利用

c:上記abが不可能であるなら、伐採した樹木を使った記念品を作ってくれるような企業に売却してほしい(そのようなマッチングをしてくれる仲介業者もある→ https://wood-kiba.com/)。

ただし、この場合、買い手が見つかるまでの間、伐採材の廃棄を一部保留してほしい。

「としまえんの記憶」という特別なストーリーのついた伐採材なので、このようなストーリーを付加価値として評価してくれる買い手は見つかるはず。

※伐採材の保存費用として西武さんで負担しきれない分については募金も呼びかける。

d:上記cと同趣旨だが、伐採材木を、「としまえんの木」を使った作品を作ってくれるような大学に提供してほしい(近隣には、武蔵野美術大学や日本大学芸術学部など、工業デザインやアートを扱う大学がある)。

作品として、後世に残るもの(カルーセル・エルドラドの模型など)を作ってくれる若い人に、としまえんの伐採木を託したい。

※作品制作に必要な費用の募金を呼びかけることも考えている。

e:上記a~dのいずれも対応不可ということであれば、せめて伐採される木のほんの一部でかまわないので市民有志に譲ってほしい。

有志が伐採作業の合間に、軽トラなどで取りに伺うので、工事現場の担当者さんに取り次いでほしい。市民有志の引き取りなのでごく少量になるが、記念品を作りたい人など、何らかの活用を考えてくれる人や企業を最後まで探したい。

以上