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東京都震災対策条例第43条第1項及び同条2項に基づく意見書(提出版)

2020-10-06 14:51:14 | としまえん問題

本年10月6日、小池都知事に以下の意見書を提出しました。

受理は東京都都市整備局市街地整備部防災都市づくり課。

受理番号は「都市整防第0001号」です。

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東京都知事 小池百合子 殿

東京都震災対策条例第43条第1項及び同条2項に基づく意見書

令和2年10月6日

意見者(代表)氏 名:平岩 利文

住 所:東京都●●●●●●●-●-●

連絡先:03(6457)4712(勤務先)

    090(●●●●)●●●●(携帯)

 

共同意見者他621名

(別紙共同意見者連名表のとおり)

 

意  見

1.(1)都市計画練馬城址公園(以下「練馬城址公園」)の具体的な整備計画が策定され、かつ、(2)東京都、練馬区、西武鉄道㈱、ワーナーブラザース ジャパン㈱及び伊藤忠商事㈱の5社によって締結された本年6月12日付け都市計画練馬城址公園の整備にかかる覚書(以下「覚書」)第6条第2項に定められた「第4条に定める練馬城址公園の機能の実現の一翼」がどのような形で図られるのか(覚書の表現を借りれば「配慮」されるのか)が明確になるまでは、東京都震災対策条例第47条第1項本文に基づき貴職より避難場所として指定されているとしまえん遊園地(以下「としまえん」)の施設解体撤去工事及び覚書第6条第1項に定めるスタジオツアー施設等の建設工事を見合わせるよう、覚書の全当事者に強く働きかけるとともに、

2.避難場所として今後も継続して指定されるであろう練馬城址公園の具体的な整備計画について、練馬区民及び東京都民から幅広く意見を徴集し、これを整備計画に可能な限り反映させるべきです。

 

理  由

 

1.本年8月31日、その跡地を練馬城址公園として整備するために閉園したとしまえんが「(練馬)区民にとって大切な場所である」ことについては今更論じるまでもありませんが(なお、本年6月19日付けで練馬区議会議長から貴職宛に提出された地方自治法第99条に基づく「都市計画練馬城址公園の事業化に関する意見書」にも同一の表現がありますが、その後、貴職及び東京都がかかる練馬区議会議長の主張を否定された事実は見当たりません。)、としまえんは練馬区民のみならず、東京都民全体にとっても「大切な場所」でした。

このことは、としまえん閉園後に、「練馬城址公園の広域防災拠点としての機能が実現されることが担保されるまでは、としまえんの施設解体撤去工事を見合わせて欲しい」、「せめてとしまえん内のプール施設だけは存置して欲しい」、「としまえん内にあったカールセル・エルドラドを含む歴史的にも高い意義を有するアトラクションを残して欲しい」といった各種の署名活動に対して、練馬区民のみならず多くの東京都民が賛同し、署名をしていることからも明らかです(なお、プール存置を望む署名者は現在、他府県にまで広がり1万名を超えております)。

2.SNS上では、「そもそも広域防災拠点としての練馬城址公園を整備するにあたって、としまえん内のアトラクションをすべて解体撤去する必要があったのか?」、「広域防災拠点としての練馬城址公園を整備するという説明だったのに、何故、としまえん跡地の半分近くに、としまえんのアトラクションを遥かに超える大きさの巨大なスタジオツアー施設等が建てられるのか?」、「スタジオツアー施設等が練馬城址公園に隣接して建てられて、果たして練馬城址公園の広域防災拠点の機能は当初の想定通り確保できるのか?」といった疑問の声が数多く上がっております。

加えて言えば、スタジオツアー施設等は、「博物館その他これに類するもの」としての建築が予定されております。しかし、これまで公開されている情報からすればスタジオツアー施設等が「博物館その他これに類するもの」と言い難いことは明らかです。実際、ワーナーブラザースは海外において「東京の練馬にテーマパークを作る」と言明しています。スタジオツアー施設等がテーマパークであることは疑いのない事実ですが、そもそも、としまえん跡地は第2種住居地域に指定されており、スタジオツアー施設等のような大規模テーマパークを含む「遊技場」は建築できないはずです。

3.練馬城址公園の広域防災拠点機能以外に、頭書意見で述べたとおり、としまえんを含む「豊島園」は、現在でも貴職による東京都の避難場所に指定されております(以下では特に必要のない限り、「としまえん」として表記します。)。

  避難場所として指定されている区域面積は228,116㎡、避難有効面積97,668㎡、避難地区の割当は春日町1丁目の一部、貫井1~5丁目、向山1~4丁目、中村1~3丁目、中村南1~3丁目、中村北1~4丁目の全20町丁、避難計画人口は63,669人、一人当たりの避難有効面積は1.53㎡、最遠距離は1.9kmと公表されていますが、実際の大地震時・火災発生時には、としまえんの知名度、練馬区のほぼ中心にあるという立地条件等から、当該避難地区以外からも多くの練馬区民・東京都民がとしまえんを目指して避難してくる事態が想定されます。

4.ところが、現在、としまえんの跡地は、同遊園地の施設解体撤去工事と、それに続くスタジオツアー施設等の建設工事のために工事用バリケードで覆われ、敷地内には工事関係者以外、立ち入りできない状態となっております。

すなわち、仮に、明日、大地震・火災が発生したとしても、少なくとも上記63,669人(実際には割当避難区域外であっても、としまえんへのアクセス容易性から同地を避難場所として目指して避難してくる人々。この中には私も、私の家族も含まれます。)が「避難すべき避難場所に入れない」という異常な事態になっているのです。

しかも、この状態はスタジオツアー施設の工事が完成する2023年まで継続します。

5.上記4のような事態が生じることは、どんなに遅く見積もっても覚書が締結された本年6月12日には容易に想像できたはずでした。

しかるに、上記割当避難地区の住民には、現在に至るまで、としまえんが避難場所として使用できなくなったこと及び代替避難場所の案内について、手紙1通、チラシ1枚送られてきておりません。

SNSで公開されている情報によれば、池尻成二練馬区議会議員が東京都の所管に上記状況を伝えて東京都の対応を確認したところ、概略、

「避難場所の指定はするが、次の定期的な避難場所の指定までは当該避難場所の維持管理は東京都の責任ではない。としまえん遊園地が避難場所として使用できなくなったのであれば代替避難場所は練馬区の責任において用意されたい。東京都としては相談にはのる」

との回答をされたとのことです。

 東京都知事である貴職が指定し、東京都が進める練馬城址公園整備と、東京都が署名当事者となっている覚書に従って進められるスタジオツアー施設等の建設工事のためにとしまえんが避難場所として使用できなくなっているにもかかわらず、です。

6.東京都震災対策条例第47条第1項本文、同条例施行規則第23条の文言を無視するかの如き東京都所管の上記回答には唖然とせざるを得ませんが、問題は、そもそも、「代替避難場所を予め準備し、割当避難地区の住民に告知する」という基本的かつ必要最低限の手順すら踏むことなく、「広域防災拠点」と銘打った練馬城址公園の整備とスタジオツアー施設等の建設に邁進しているという、練馬区民・東京都民の生命・身体の安全を軽視した東京都の姿勢にあります。

7.われわれ練馬区民、なかんずく、としまえんを故郷の一部のごとく愛してきた利用者は、「防災・人命救助の観点から、としまえんを閉園して広域防災拠点の機能を持つ練馬城址公園を作るのはやむを得ない」と誰もが納得してきました。少なくとも、現在、としまえんの閉園とスタジオツアー施設等の建設に対して異議を唱えている人々の中にも、無条件に「としまえんを閉園するな」と主張している方は見当たりません。

誰もが皆、「広域防災拠点の新しい公園としてとしまえんが生まれ変わるなら」と納得していたのです。

ところが、本年6月19日に突如(それまで西武鉄道㈱はとしまえん閉園について否定し続けていましたし、東京都もとしまえんの閉園について何らの発表もしていませんでした。)、としまえんの閉園が発表された後も、練馬城址公園を具体的にどのように広域防災拠点として活用するのかといった議論や情報はまったくと言っていいほど東京都からは発信されませんでした。われわれ練馬区民・東京都民に与えられた情報は「世界で2つ目のハリーポッター・スタジオツアー施設が作られる。高いインバウンド効果が見込める。」という「広域防災拠点」とは何の関係もない経済的な話ばかりでした。

としまえん閉園後、2日間にわたってスタジオツアー施設等の事業者(以下「事業者」)による説明会が開催されましたが、その説明会においても「いかにスタジオツアー施設等が素晴らしいか」が説明されるだけで、「そもそもスタジオツアー施設等は広域防災拠点としての練馬城址公園と具体的にどのような連携を図るのか」は何一つ説明されませんでした。

覚書第6条第2項において、スタジオツアー施設等の事業者は「第4条に定める機能(Bに「広域防災拠点機能」が明記されています。)の実現の一翼を担うことに配慮する」と定められているにもかかわらず、です。

8.事業者の苦しい立場も理解できます。

そもそも、現時点において、練馬城址公園の整備に関する具体的な計画は何も確定しておらず、確定してもいない「計画の実現の一翼」をどうやって担えというのか、そんなことを聞かれても困る、まずは東京都にどのように広域防災拠点としての練馬城址公園を整備するのか決めてもらってくれ、ということでしょう。実際に、それに類する発言が説明会の席上で事業者から出ていたと聞き及んでいます。

9.としまえん閉園後に起こった住民運動において上がっている主な疑問は例えば、以下のようなものです。

① 東京都が約束していた「練馬城址公園の広域防災拠点化」という話はどうなったのか?

② スタジオツアー施設等は練馬城址公園の広域防災拠点機能を阻害しないのか?

③ 震災時、近隣住民はスタジオツアー施設等の内部に避難できるのか?そもそも、そこは安全な場所なのか?

④ 1日1万人が来場するというスタジオツアー施設等を避難場所として近隣住民が使うことは現実問題として不可能なのではないか?

⑤ としまえんを避難場所として指定されていた者は、万一、スタジオツアー施設等の完成前に大地震・火災が発生したら、どこに避難すればいいのか?

10.現在、公表されている練馬城址公園の整備計画審議スケジュールでは、来年1月頃に中間まとめと都民意見の募集(パブリックコメント)、同年5月頃答申、となってます。

としまえんの解体撤去とスタジオツアー施設等の建設は、この都民意見の募集が終わる来年5月の答申まで待つべきです。

いったん、作業を止めることで、考え、議論し、検討する時間が得られます。

東京都と練馬区と事業者のみという限定された人たちだけの「スタジオツアー施設の誘致ありき」という議論ではなく、「としまえん跡地を、東京都民の命を救うための練馬城址公園に生まれ変わらせよう」と考える人たちの議論です。

考え、議論し、検討する時間があれば、多くの人が納得し、多くの人に愛される「としまえんの思い出とレガシーを備えた、広域防災拠点としての練馬城址公園」が作れます。

スタジオツアー施設等の建設が不可避であったとしても、そのような議論を経て生まれた練馬城址公園と一体のものとして、練馬城址公園の「機能の実現の一翼を担う」(覚書第6条第2項)スタジオツアー施設等が作られれば、周辺諸国からの観光客だけに愛される施設ではなく、地元住民にも東京都民にも愛されるスタジオツアー施設ができます。

パブリックコメントを通じて得られた意見によって、現在のプール施設の一部存置の有効・有益なアイディアが得られるかもしれません。そもそも、大容量の水を貯留できるプールが震災時・火災時に被災者・避難者のためにどれほど重要な役割を果たすかは想像に難くありませんし、少なくとも、そのような観点から「プール存置」を検証することは広域防災拠点及び避難場所としての練馬城址公園という面からは決して無駄でも、一部の人の心情論にとどまるものでもありません。

歴史的にも重要なとしまえんのアトラクションの一部を練馬城址公園内に存置できる方策が見つかるかもしれません。

限られた人たちだけで議論して策定された整備計画より、より、練馬区民に愛され、東京都民に愛される練馬城址公園を作ることができます。

11.スタジオツアー施設等を誘致・運営していく事業者としては、「既に事業者間での必要な契約も締結されており、この点については東京都も了解している。いまさら計画を変更したり、遅延させることは莫大な損害を発生させる。」として当初の予定通りの着工・開業を強く望むでしょう。

しかし、事業者と東京都では置かれた立場も、その肩に背負っている責任も異なります。

営利追及のために最も効率的な手法・工程を取るのは民間の事業者の権利です。

しかし、東京都と練馬区は、都民・区民に対してその生命・身体の安全を守る義務を負っています。その義務履行のためにどのような施策をとるのか、その施策に手続的な、あるいは、内容的な瑕疵はないのか、その施策のために何が犠牲になったのか、その犠牲は受忍限度内のものであるのかを丁寧に説明する義務もあります。

事業者の営利追求権以上に東京都と練馬区が都民・区民に対して負っている生命・身体の安全保持義務・施策説明責任の方が重要であることは今ここで論ずるまでもありません。ご自身の身を、国でもなく、企業でもなく、都民のために捧げようと決意されて都知事職にある貴職であれば十分ご理解されているはずです。

12.いみじくも、先般、都民ファーストの会の東京都議会議員が「10年間、膠着状態にあった公園整備計画を昨年から自分が間に入って動かした」とTwitterで告白されました。同時にこの議員は「あなたはどれだけとしまえんに行っていたのか、経営にどれくらい貢献したのか(と言いたい)。懐かしんだり惜しんだりするのはタダだし、誰でも出来る」ともツィートされました。

真実、スタジオツアー施設の誘致がこの議員の功績によるものかどうかはわかりません。そんなことは問題ではありません。しかし、2つ目の「懐かしんだり惜しんだりするのはタダだし、誰でも出来る」との発言。これほどわれわれ有権者を愚弄した発言を、私は寡聞にして知りません。

広域防災拠点機能を持つ練馬城址公園の整備が進まなかったのは、われわれ練馬区民・東京都民の責任ではありません。それは東京都庁の関係所管の責任であり、東京都議会議員の責任であり、そして、貴職を含めた歴代の東京都知事の責任です。そして、その責任を負っているすべての方々の給与、歳費、報酬。大きなお金を動かすことのできる議員や区長、貴職にとってみればあるいは「はした金」かもしれませんが、それらはすべて、われわれ練馬区民・東京都民が必死に働いて納めた税金です。

われわれはとしまえん閉園について、スタジオツアー施設の誘致について、その具体的な計画について、練馬城址公園との関係について、そして、スタジオツアー施設が広域防災拠点・避難場所に対してどのような役割を果たしてくれるのかについて、何一つ知らされてきませんでした。知らされたのはただ、「としまえん閉園」と「スタジオツアー施設誘致」という2つの事実だけでした。そして、その事実に意見を述べる機会も、異を唱える機会すら与えられないままに今、としまえんの解体工事が進められています。「民間事業者間の契約だから」というたった一つの理由で。

われわれは、ただ感情に流されて「としまえん閉園」を「懐かしんだり惜しんだり」しているのではありません。中には自分の思いをうまく表現できない人もいらっしゃいます。そういった方の言葉は、もしかしたら議員にも貴職にも、「単なる感情論、心情的なとしまえん閉園反対意見」としか聞こえないかもしれない。

しかし、そういった方々は、否、私も含めて現在、としまえん閉園とスタジオツアー施設の建設に疑問の声を上げている人々は、「94年間も愛されてきたとしまえんを閉園して作られるはずだった練馬城址公園の半分がスタジオツアー施設になるという。それは広域防災拠点、避難場所という観点から、われわれの命を守ってくれるという目的から、本当に正しい事なのか? としまえんの閉園は本当に意味があるのか?」と問うているにすぎません。練馬区に、東京都に、そして貴職に対して、です。

くだんの議員は、最近になって、「お尻に火がついてから動かしたため、ドタバタで調整を進めている状態」「いずれにせよ、説明が足りていなかった」「「開発先行」の印象を与えてしまった」「計画が固まっていくプロセスでいかに地元の意向を反映させるか、事業者に汲んでもらうか」「ご意見・ご要望を頂きた」い、とTwitter上に反省の投稿をされました。

私は、この議員の「タダだし、誰でも出来る」発言については深い憤りを覚えましたが、「お尻に火がついてから動かしたため、ドタバタで調整を進めている状態」「いずれにせよ、説明が足りていなかった」「「開発先行」の印象を与えてしまった」「計画が固まっていくプロセスでいかに地元の意向を反映させるか、事業者に汲んでもらうか」「ご意見・ご要望を頂きた」いという発言を高く評価します。この議員の告白ほど、としまえん閉園と、それに続く練馬城址公園とスタジオツアー施設等の現状を的確に表現した告白を、私は他に知らないからです。

この議員の認められた通りなのです。練馬城址公園とスタジオツアーの関係は、「ドタバタで調整を進めている状態」であり、「説明が足りていなかった」のであり、「開発先行の印象を与えてしまっ」ており、練馬区民・東京都民を無視して、情報をシャットダウンして進められてきてしまったものでした。

しかし、まだ間に合います。スタジオツアー施設等の工事は着工しておらず、としまえんの施設解体は完了していません。今、少しだけ立ち止まることで、これまでの問題点を検証して、将来に向けた建設的な議論をする時間が得られます。練馬区民・東京都民を参加させた形で、です。

13.既に2023年開業を目指して進められている民間事業者のスタジオツアー施設等の建設を、たとえ一時的であれ中止するように要請することは、たしかに貴職としては権限的にも心情的にも困難を極めるかもしれません。

しかし、今の練馬城址公園とスタジオツアー施設等の計画は、多くの(というよりほとんどの)練馬区民・東京都民の目には「インバウンドという経済的効果のみを重視したハリーポッター・スタジオツアー誘致がまずありき。練馬区民・東京都民の命に係わる広域防災拠点としての練馬城址公園の整備という本来の目的は、練馬区民・東京都民を排除した密室の議論の中でいつの間にか形骸化させられてしまった」としか映っていません。

インバウンドでお金を稼ぐことももちろん重要です。しかし、新型コロナの世界的流行という未曽有の災害に直面して、私たちはインバウンド産業がいかに脆弱なものかを見てしまいました。

政府や地方自治体がどんなに経済的な援助をしても、東日本大震災で故郷や家を失った人たちは幸せな生活を取り戻すまでに長い長い時間をかけなければならないということも私たちは知っています。

お金だけではない。故郷とか思い出といったものが、人が人として幸せに生きて行くためにどれほど大切か、ということも私たちは知っています。

14.犬猫殺処分0を公約に掲げられた貴職が、63,669人の避難場所を奪うような計画を率先して進めてはなりません。

としまえんは既にテレビ等で報道されている通り、たぬき等の小動物やこどもたちが大好きなカブトムシなどの昆虫の貴重な生息場所でもありました。人間の身勝手な都合で殺処分される犬猫の命に思いを馳せることのできる貴職が、スタジオツアー施設等の建設のため、貴重なとしまえん内の樹木を伐採し、小動物や昆虫の住処を奪い、生態系を破壊することに関与すべきではありません。  

新型コロナ感染拡大を止めるために政府と対立してでも独自の規制を貫き、民間事業者である飲食店に営業自粛を繰り返し訴え続けた貴職です。事情を話し、理を尽くして、スタジオツアー施設等の建設の一時中止を事業者に説得することもできるはずです。

どれほど税金の無駄遣いだと叩かれようとも、「安全ではあるが、安心ではない」と突っぱね続けて築地市場の豊洲移転を延期させた貴職です。「経済効果は高いかもしれないが、区民・都民の納得と信頼が得られていない」として、としまえん施設の解体・撤去工事を一時中断し、スタジオツアー施設等の建設を見直すようすべての関係者に働きかけることもできるはずです。

「としまえんの閉園やスタジオツアー施設等の建設」に疑問を呈し、異を唱えている人たちは、誰一人、広域防災拠点の必要性を否定していません。「広域防災拠点の機能を持った練馬城址公園の整備」には誰も反対していないのです。

また、スタジオツアー施設の誘致には反対をしている人たちも「ハリー・ポッター」というコンテンツが嫌いなわけではありません。むしろ、多くの人々は「ハリー・ポッター」をとしまえんと同じように愛しているのです。

それなのに「スタジオツアー施設等の建設反対」の声がここまで広がってしまった。「としまえん閉園反対」の声がここまで大きくなってしまった。

目的や目指すゴールには誰もが賛成しているのに、そこに至るまでの工程に多くの人が怒り、反対の声を上げている。

このような他に類を見ない不可思議で歪な状態を是正しないままスタジオツアー施設等や練馬城址公園の整備を強行すべきではありません。

そんなことをしても、東京都も練馬区も西武鉄道㈱もワーナーブラザース ジャパン㈱も伊藤忠商事㈱も、何よりとしまえん遊園地とハリー・ポッターと、この2つを愛している日本中・世界中のファンも幸せになれません。

お金は儲かるかもしれませんが、失うものが大きすぎます。

密室で計画し、説明を避け、「もう決まったことだから、10年前から決まっていたことだから」と練馬区民・東京都民の気持ちを顧みることなく頭ごなしに事業を強行してしまうことで失う練馬区民・東京都民の信頼・信用は30年では取り返せません。

国でもなく、企業でもなく、「都民ファースト」として、まず都民に寄り添おうと党名を掲げた貴職が、そのよう決断をすべきではありません。

 

結  語

以上を踏まえて、東京都震災対策条例43条3項に基づき、東京都知事におかれては、頭書意見を速やかに施策に反映されることを強く希望します。

以上