つれづれなるままに弁護士(ネクスト法律事務所)

それは、普段なかなか聞けない、弁護士の本音の独り言

天国のサンタによろしく(見出し画像はありし日のサンタ)

2022-10-13 21:42:00 | 日記
昨日(というか時間的には既に今日)、出張から戻ってきたのは深夜1時過ぎ。
自宅のすぐそばまで来たとき、アスファルトの路上に雨に濡れて猫がちょこんと座っているのが見えた。
私の車が近づいても逃げようともしない。
猫を避けて10mほど進んだところで車を停めて、猫の様子を見に戻った。
痩せこけて、生気のない目。でも、昔、我が家で飼っていた猫サンタにそっくりの毛色。

雨に濡れないように近くの家の軒下の植え込みの陰に移動させてから家に帰ったけれど、風呂に入っている間も、どうにもこうにもあの猫のことが気になって落ち着かず、風呂から出て再び猫の所に。
猫は、私が移動させてやった植え込みの陰から這うように抜け出して、道路の同じ場所に、今度は横たわっていた。もう、体を支えて座っている体力も残っていないようだった。

深夜2時。
獣医さんに連れて行くこともできないので、とりあえず朝まで自宅で保護して、後のことはそれから考えようと手を伸ばした私に、猫は、最後の力を振り絞るように首を少しだけ持ち上げてフーッと威嚇してきた。

あぁ、そうか。
お前はちゃんと自分の死期がわかってるんだな。
何故だか俺にはわからないけど、この場所を自分の死に場所に決めたんだな。
お節介で無責任な人間風情が俺様の死ぬ邪魔をするなと言ってるんだな。

とはいえ、このままでは車に轢かれてしまうかもしれない。それはこの猫の望む逝き方ではないように思う。
雨も止みかけていたので、持っていたビニール傘を開いて猫の上に被せて、持っていたタオルを掛けてその場から離れた。
道路に開いて置かれたビニール傘は遠くからでも目立つから、ドライバーは猫を避けてくれるだろう。雨がまた降り始めても、少しの間ならビニール傘は猫の体を守ってくれるだろう。

今朝。
出勤前に猫の所に行くと、近くにいた工事現場のおじさんが私に声を掛けてきた。
「その猫、もう死んでるよ。かわいそうだから触っちゃダメだよ」

でも、猫はまだ生きていた。
もう、注意して見ないとわからないくらい呼吸は弱々しくなっていたけど。
もう、お節介な私を威嚇する力も残ってはいなかったけど。

私が被せたビニール傘は、風で飛んで行かないように、誰かが柄の部分を石で固定してくれていた。
私が掛けたタオル以外に何枚も別のタオルが猫に掛けられていた。



たくさんの人たちが、猫が安らかに逝けるように、せめて最期の時には人間の温もりに包まれて逝けるように、何処かから傘を押さえる石を持ってきたり、家に戻ってタオルを持ってきたりしてくれたんだ。
私だけじゃなかったんだ。
そう思ったら涙が出てきた。
練馬は、もしかしたら、とんでもなく優しい街なのではないかと思った。

仕事場に向かうために、私はすぐにその場を離れたけれど、猫は、たぶん、それから少しして天国に行ったのだと思う。さっき、猫がいた場所に行ってみたら、もう、猫の姿はなくなっていて、閉じたビニール傘と数枚のタオルが雨に濡れていたから。



おーい、猫。
天国に行ったら、俺が昔、飼っていたサンタによろしくな。
お前とそっくりの毛並みの、甘えん坊の雄猫が天国にいたら、それがサンタだよ。