続・契約のひながたは、ありませんか？～法務は、秤り売りはしない。

少し前に、契約案の作成を依頼されて渡した営業担当者から、

契約書ではなく覚書で行きたいんですが、Ａ４　１枚ぐらいでお願いします。

と話があった。

自分で、お客さんに提示する前に契約案を確認して、これまでの相手方とのやりとり、経緯（いきさつ）から、そのようにしたほうがいいと思ったのだろう。

しかし、法務としては、業務の内容をしっかり契約にしておきたいという依頼であったので、また相手方とは初めてのお付き合いということだったので、多少、きちんと細かく規定した案文を渡していた。

「契約書」と「覚書」は、法的な効力は変わらないよ、という話をする。一般論としては、確かに覚書は、契約よりは簡単なもの、短いものというイメージがあるかもしれない。

契約は、締結。覚書は取り交わし、「本契約」を「本覚書」などの語句の修正はしなくてはいけない。

また、条項の文言を多少、当社の利益を損ねない程度に、相手と同じレベルで当社の権利主張を抑える形にすることで、ボリュームを減らすことはできよう。

しかし、盛り込むべき条項はやはり盛り込んでおかなければいかない。

たとえば、請負であれば、業務の内容金額もしくはその決定方法などは、最低限、契約であれ、覚書であれ、記載しておく必要がある。
業務の内容は、どこまで記載するかは別として、大まかな範囲は限定しておく必要があるだろう。範囲を画しておかないと、問題になる可能性があるからだ。

だから、ボリュームで契約の内容が決まるわけではない。

契約を覚書にしたい、までは理解できる。

しかし、
ボリュームで依頼されたのは、初めてだ。

契約について、そういう程度の理解しかない営業担当者が、まだいたのか、と思ったとき、大げさだが、頭がクラクラしてきた。

契約は、量ではない。

法務は、肉屋ではないっ！！　「契約」の秤り売りはしない。

法務としての力不足、法務として、まだまだやるべきことが多いことを感じた。