東埼玉病院 総合診療科ブログ

勉強会やカンファレンスでの話題、臨床以外での活動などについて書いていきます!

第3回埼玉ポートフォリオ発表会

2018-02-25 13:45:36 | 初期・後期研修関連

 昨日は、さいたま新都心の地域医療教育センターにて、第3回埼玉ポートフォリオ発表会がありました。今回は学習企画として、「ポートフォリオができるまで~指導する・されるの裏側みせます~」と題して、当院の専攻医の深澤先生(東京医療センターから半年間当院で研修中)が作ったポートフォリオの作成過程を提示したうえで、「ポートフォリオをどのようなプロセスで作成していくのがよいのか」について、参加者の皆様とディスカッションを行いました。それぞれの施設の工夫などを共有する機会にもなり、個人的にも非常に得るものが大きかったです。

 学習企画のあとは、専攻医3名によるポートフォリオ発表会があり、それぞれのポートフォリオの発表とその内容に対するポジティブフィードバックや改善するとよくなる点など、ご意見を参加者からいただきました。

 今回で、3回目となりますが、着々と発表されるポートフォリオの質が高まっている気もしますし、埼玉内での施設間のつながりも強くなってきているのを個人的には感じています。

 どの施設で研修しているかではなく、オール埼玉で専攻医を育てていけるような環境づくりができればなと、夢がふくらみました。


第2回埼玉ポートフォリオ発表会 

2017-03-06 18:50:38 | 初期・後期研修関連

 3/4(土)に、浦和で第2回埼玉ポートフォリオ発表会が開催されました。昨年の1回目に引き続き、今回も参加させていただきました。今永・外山・山田が参加し、山田先生が自分が作成したポートフォリオを発表してくれています。

 計3名の後期研修医が発表しましたが、どれも複雑な症例で、それぞれの研修医が苦労しながら学び取っているものを感じました。指導医としては、それぞれのポートフォリオへのフロアからのフィードバックが、「どのように指導を行えばよいか」という観点から非常に勉強になりました。

 懇親会では、さらにつながりを深めることができ、今後が楽しみになりました。オール埼玉で、後期研修医を育てていけるような雰囲気や体制があるといいなと個人的には感じました。

 今年は写真をとるのを忘れてしまい、失敗です・・・。


第1回埼玉ポートフォリオ発表会

2016-03-07 22:28:12 | 初期・後期研修関連

 

 先週の土曜日に、さいたま協同病院で、第1回埼玉ポートフォリオ発表会が開かれました。県外からの参加者も含めて30名程度の参加者があり、4名の後期研修医が自身のポートフォリオを発表し、それに対して熱いディスカッションが繰り広げられました。当院からも渡邊先生と林先生の2名が発表してくれました。

 ポートフォリオとは、教育学の分野では「学習者の成果や省察の記録、指導者の指導と評価などをファイルに蓄積していくもの」と定義されているようです。近年、医学教育にも取り入れられており、プライマリケア連合学会の専門医試験受験資格を得るためにはこのポートフォリオという形式で、様々な領域の事例を書き上げて提出する必要があります。ポートフォリオの中で、自分が、どのような力を使って何をできたのか、そしてそこから何を学んだのかを示していくこととなります。しかし、研修する側も指導する側もポートフォリオ作成に関しては戸惑いもあり、正直自分自身もうまく指導できているのか自信がありません。今回、他施設の後期研修医の発表を聞いたり、当院の2名の研修医への皆様からのフィードバックを聞いて、指導医としても多くの気づきがありました。貴重な機会を提供してくださった、関口先生をはじめとする「さいたま総合診療医・家庭医センター」の方々には感謝します。

 そして、今回、渡邊先生のポートフォリオ「カンファレンス・レクチャーを通して特別養護老人ホームの看取り体制の構築に貢献した1例」がベストポートフォリオに選ばれました。林先生の発表内容もよかったと思います。2人ともお疲れさまでした。

 今回、ポートフォリオの会ではありましたが、埼玉県内の総合診療医・家庭医が多く集まった貴重な機会であり、今後さらにつながりができていけばいいなと感じましたし、埼玉全体で後期研修医を盛り上げていけるような場づくりは大事だろうなと思いました。

 


後期研修医に対して、特別養護老人ホームでどのような教育をすればよいのか?

2015-04-13 20:46:17 | 初期・後期研修関連
 東埼玉病院の総合診療科では、特養の嘱託医もしています。特養の回診は指導医と後期研修医がセットになって行っていますが、1回に20人くらいずつの診察をするので、ついついばたばた終わってしまいがちです。しかし、その中で、施設スタッフから必要な情報を引き出しながらキモを逃さずに診察するのは大事な技術だなあと思います。それは一見落ち着いている状態の入所者さんに関してもいえることです。後期研修医にとっては、訪問診療と比べるとやや学ぶべき内容がわかりづらいかなと感じおり、こういうところを今日は気を付けてみてみようということを伝えることがあります。たとえば、「Polypharmacyのこと」、「栄養のこと」、「嚥下のこと」、「転倒予防のこと」など・・・。一見変化がないようにみえる入所者さんに対して定期的な診察でどのようなポイントをおさえていくか、そのヒントになればいいなと。 まあ、自分もついつい忘れがちではあるんですけどね。前回に引き続きまた研修ネタではありますが、以前調べた内容ものせておきます。


<施設での教育>
★カナダでは、家庭医の2割が定期的にナーシングホームの診療を行っている。
★ナーシングホームでの研修は、内科医の高齢者診療での知識や態度に効果がある(Cheetiら2002,Baumら2007)
★McMaster大学の家庭医グループがLTC(Long term cae) homesでどのようなことを学ぶべきかを提案
①CanMEDS competenciesとLTCでの教育プログラム
 Medical expert・・・症例ベースでPolypharmacy、認知症ケア、転倒予防など
 Communicator・・・専門職・家族から情報をどのように集めるか、家族とのケアカンファでの議論を誘導
 Collaborator・・・専門職チームと協働して働くようトレーニング
 Manager・・・家族面談や専門職ケアカンファを指揮する、LTCセッティングでの医師の役割やコール体制をどのように組み合わせるかなどの議論
 Health advocate・・・個々の患者のニーズとコミュニティのニーズを合わせる重要性を教える
 Scholar・・・ガイドラインや個々のケースでのアプローチを論文で定期的にProfessional・・・倫理的なシナリオを提示していく(不適切な抑制をみたら?)
②LTCローテーションでカバーするcore topics
認知症の問題行動、せん妄へのアプローチ、能力評価、End of life planning、転倒予防、Infectious control、感染症の治療、 Polypharmacy、多職種連携、抑制の使用、終末期の症状マネージメント

 
 McMaster大学の家庭医グループの提案は、なるほどわかりやすいなあと以前思い、後期研修医の人には提示したりして、少しこのようなことを意識して診療してみてはとアドバイスしています。結構、施設臨床も奥が深いなと私自身最近も感じており、勉強させていただいてます。


 写真は病院近くの菜の花畑です!















後期研修医の振り返り

2015-04-10 18:47:45 | 初期・後期研修関連
 当科では、東京医療センターの総合内科から、後期研修医が半年ごとくらいにローテーションで研修に来ます。地域医療の研修として、通常の外来や病棟以外に在宅医療・施設診療・健診・地域のヘルスプロモーションなどを重点的に研修してもらっています。最初は急性期医療との“場の違い”などに戸惑うことも多いようですが、そのなかで様々な経験を積んでくれているようです。
 そのような経験を言語化していく作業も重要と考え、毎日一言、その日感じたことや印象に残ったことなどを夕方(夜?)のカンファレンスのあとに言ってもらうようにしています(「日々の振り返り」)。時にはこちらがはっとするような発言もあります。「そんなこと感じていたんだなとか」、「わかるわかる、自分もそこは戸惑うよ」とか。指導医としてもいろいろな気づきがありますね。
 あと、後期研修医には朝の時間をつかって、来て2週間程度の時点・研修が半分過ぎた時点・研修終了時の3回振り返りのセッションを行っています。今日は、4月からきた後期研修医の導入時のセッションを行いました。詳細をのせると本人嫌がるでしょうから(笑)のせませんが、早くも今までとは異なる新たな視点を感じているようでした。橋川先生、これから半年間お互いがんばりましょうね!
 ちなみに、昨年の国立病院総合医学会で、「日々の振り返り」の記録をもとに後期研修医が在宅医療でどのようなことを感じているのかを質的に分析したものを発表しました。7つの大カテゴリーに分類できたのですが、それを代表的な発言とともにのせておきます。

①<在宅医療の難しさ>  
 「身体的な変化にどのように対応するか。検査にどうしても頼ってしまう。」   「入院はしたくない人。家でどこまでみるか。」

②<患者を“生活”という視点でみることの重要性>
 「病院で急性期を過ごして帰った姿、想像していなかった。」  「○○さん、その人なりの生活をどのように維持していくか。」

③<“連携”の重要性と難しさ>
 「OOさんのケアカンファはよかった。それぞれの職種から意見が出て。連携重要と感じた。」
 「様々な職種とお話しする機会多い。伝えかたなど病院にいる時とは変えないと。うまく伝わらないことも。」

④<患者・家族とのコミュニケーションの奥深さ>
 「○○さんの家族はこだわりが強かった。対応の仕方を変える必要があった。」
 「○○さんの気持ちを、○○先生はうまく引き出していた。自分では引き出せず、どのように話せばうまく引き出せるか参考になった。」

⑤<“患者の死”に対する思いや迷い>
 「(亡くなりそうな)○○さん、(本人の死に対するいろいろな思いに対して)どうすればよいのか。もやもやしていた。言語化できない。」

⑥<家族ケアの重要性と難しさ>
 「どの家も、医学的なこと以上に介護や家族のことが(問題)多い。アドバイスは大変。経験重要。」

⑦<医師としての責任性と視野の広がりの獲得>
「まだわからない部分もあるが、以前と比べるといろいろな視野で見られるようになり、わかる部分が増えた。」

ちなみに、Buchmanらは、在宅医療でより効果的に教育できることとして、「QOL重視のケア」、「患者・家族の疾病経験への深い理解」、「低いテクノロジーのなかで重症患者をみること」、「終末期における心理的・スピリチュアルなサポート」、「多職種協働の中での役割」などを挙げています。(S Buchman,et al . Canadian Family Physician 2012) 
ある程度、似通っている部分が出たのかなと思いました。

在宅医療において、どのようなことを教育できるのか、教育すべきなのかについてはまだまだ確立されたものはなく、いまだに試行錯誤な部分は多いですし、まずは経験して、そこから様々なことを感じとってもらい、それについてディスカッションしていくのが重要かと感じています。