東埼玉病院 総合診療科ブログ

勉強会やカンファレンスでの話題、臨床以外での活動などについて書いていきます!

第18回日本在宅医学会大会

2016-07-22 20:08:34 | 学会活動

 先週末の7/16~7/17に都内で第18回日本在宅医学会大会が開催されました。今回は日本在宅ケア学会学術集会との共催となっています。当院からも参加いたしました。

 ・一般口演:「入院した在宅非がん患者において、入院後1年以内の死亡と関連する因子は何か?」 (今永発表) 

              http://www.procomu.jp/zaitaku-joint2016/pdf/abst/ippan_oral.pdf 

 ・日本在宅医学会専門医委員会企画:「ポートフォリオ学習」 (外山座長)

 当初の予定の3倍以上も参加者があり、ポートフォリオ学習への指導医や研修者の関心の高さにびっくりでした。みなさん、試行錯誤しながら指導したり、ポートフォリオを作ったりしているようです。

              http://www.procomu.jp/zaitaku-joint2016/pdf/abst/ws.pdf

 ・モーニングセミナー:「在宅医療における老衰の臨床」  (今永講演)

 朝の早い時間でしたので、あまり人が来ないかなと思っておりましたが、180名入る部屋が立ち見となっていて、正直びっくりしました・・・。緊張しました。質問やご指摘もたくさんしていただき、私自身、老衰への考察が深まりました。ありがとうございました。

              http://www.procomu.jp/zaitaku-joint2016/pdf/abst/morning.pdf

 

  今回もいろいろな刺激をもらいました。


日本医事新報7月第2週号の質疑応答~死亡診断書の死因の書き方~

2016-07-15 20:26:42 | 講演・著書など

 7/9発刊された日本医事新報の質疑応答のコーナーに、「死亡診断書の死因の書き方」という題名で書かせていただきました。このコーナーは読者からの質問に回答者が答えるという形式となっており、今回回答者として書かせていただきました。

 内容としては、「老衰」・「認知症」・「肺炎」・「進行がわからないがん」などについて、どのような判断で死亡診断の死因を書いていけばよいかのご質問でした。実際のは具体的な質問が4つあり、それぞれにお答えする形式になっています。

 難しいテーマでどのように書いてよいか迷いましたが、一部文献を引用しながら私見も含めて書かせていただきました。自分自身も、「そうだよね、これって迷うよね。」といった内容のご質問でしたので、自分の死因のつけ方を振り返るいい機会となりました。死因に関しては、死亡統計という非常に重要な側面があります。それと同時に家族にとっても様々な思いが、死亡診断書・死因に対してはあります。以前、あるご家族から、「死亡診断書をみて、家族は亡くなったのだなと納得するのです。その病名は家族にとって重要なのです。」ということを教えていただいたことがあります。本当にそうだなと感じました。

           

 

 


施設入所のがん患者における疼痛コントロール・オピオイド使用

2016-07-05 21:50:53 | 勉強会

  自分たちが嘱託医業務を行っている特養でもだいぶ看取りを行っていて、最近は疼痛があるがん患者さんの看取りもできるようになってきています。しかし、疼痛コントロールを上手にしながら施設で看取るためにはまだ課題も多いかなと感じています。また、それとは別で、在宅でみているがん患者さんにおいて、オピオイドを使っているとショートステイ先を探すのが困難であることもあり、地域の施設をがん患者さんが利用することのむずかしさやバリアーを感じることも多くあります。ということで、今回は上記のようなテーマについて調べてみました。

 
<施設入所のがん患者における疼痛コントロール・オピオイド使用>
  • 施設入所者においてがん患者は多い?

USnursing home(NH) residents9%ががんの診断をうけている

               (Johnson VM,J Palliat Med 2005

★日本では特養2.1%、老健2.5

            (医療施設・介護施設の利用者に対する横断調査 H23年)

★今後、高齢者のがん患者が増えることが予測されており、がん患者のケアにおいてNHの役割が大きくなると言われている。


  • 施設入所のがん患者において、疼痛コントロールやオピオイド使用は適切に行われているのか?

Todd BMらの報告(Geriatr Gerontol Int 2013

がんで死亡した55名のNH入所者を後ろ向きにカルテ調査

ホスピス登録された患者は有意にオピオイド投与をより受けており(認知機能で調整) 、苦痛も有意に少なかった。重度の認知機能低下がある患者は有意にオピオイド投与が少なかった(ホスピス登録で調整)。⇒重度の認知機能低下がある場合には苦痛がとられていないのではないかと結論。

Camilla Bらの報告(J Am Geriatr Soc 2015

8094名のNHに新たに入所したがん患者を対象とした横断研究

65%以上が疼痛あり(28.3%が毎日痛みあり)、そのうち13.5%が重度,61.3%が中等度の疼痛。

疼痛ある患者の3割が医療用麻薬の投与なし(毎日痛みある患者の17%・重度疼痛患者の11.7%・中等度疼痛患者の16.9%に投与なし)。

痛みがあるが医療用麻薬投与をうけていない患者は、「85歳超え」・「認知機能障害あり」・「経管栄養あり」・「抑制あり」でより多かった。(調整あり)

⇒多くのNH入所のがん患者が痛みの治療がなされていないと結論。


  • 日本の現状はどうなのか?

施設のがん患者の疼痛コントロールやオピオイド使用を検討した研究は見当たらず

★森本らの報告(Palliative Care Research 2015

神戸市内の高齢者福祉施設(特養・老健・グループホーム・有料老人ホームなど)350施設を対象とした看取りと終末期ケアに関するアンケート調査(314施設が回答)。

看取りを実施している施設は39%、点滴可能施設は58%あったが、医療用麻薬を使える施設は23%であった。⇒医療用麻薬を使える施設は少ない。

★医療用麻薬適正使用ガイダンス(厚労省 H24年)

介護施設での医療用麻薬管理:自宅と同様の管理でよい、金庫管理でなくてもよい、すみやかにレスキュー使用できる体制を。


  海外も含めて、まだまだ施設入所のがん患者に対する適切な疼痛コントロールやオピオイド使用がなされていない現状があるようです。今後、独居や老々介護が増えるなか、施設でのがん患者へのサポート(一時的なショートによる介護負担軽減や施設でがん患者を看取ること)は重要なテーマとなるのではないかと考えています。地域に何かしらのアプローチができないか・・・模索していければと思っています。