東埼玉病院 総合診療科ブログ

勉強会やカンファレンスでの話題、臨床以外での活動などについて書いていきます!

平成28年度 蓮田市在宅医療推進フォーラム

2016-11-20 19:01:18 | 在宅医療連携推進事業

 今日は蓮田市の在宅医療推進フォーラムが開催されました。今年で4回目になります。

 一部では、鎌田實先生を講師として、「”がんばらない”けど“あきらめない”」という演題で講演がありました。地域医療にはじまり、現在は戦闘地帯への医療援助など常に様々なことを実践されてきた先生だけにすべての発言において説得力がありました。そのような言葉がない時代から、地域包括ケアを実践されてきた鎌田先生だからこそ語れることがたくさんあり、この地域でも住民が安心して暮らせるような地域包括ケアをどのようにつくりあげていけばよいのか、専門職だけではなく、住民も含めたみんながヒントをもらえた、そんな講演でした。

 二部では、当科の外山医師がコーディネーターとなって、在宅医療・介護スタッフや患者さんの家族が登壇し、パネルディスカッションが行われました。それぞれの職種がどのように在宅医療・介護にかかわっているか、患者さんの家族がどのようにご家族をご自宅で看取ったかなど、在宅医療・介護の実際がわかるような、そんな内容となっていました。すごくわかりやすくなっており、住民の方にも在宅での療養がどのようなものか、どのようにサポートする仕組みができているのかを理解いただけたのではないかと感じました。

 フォーラムの企画・運営を行われていた蓮田市の職員の方々は、本当に大変なことであったと思いましたが、すばらしいフォーラムであったと思います。行政の方々はいつも裏方に徹しながらも、この地域の在宅医療・介護に関して熱心に取り組まれており、頭がさがる思いです。

 

 


第70回国立病院総合医学会に参加してきました

2016-11-13 19:05:27 | 学会活動

 今永は、11/10夜に沖縄に向かい、11/11金曜日に第70回国立病院総合医学会に参加してきました。諸事情で1日のみの参加でこちらに戻ってきましたが、11/11は自分自身の発表も行い、他職種の発表なども聞いて、いろいろと勉強させていただきました。

 今回は、一昨年度から、退院調整看護師の朝倉Nsと一緒に行っている在宅療養支援に関する研修についての発表です。昨年度も第1報として同学会で発表しておりますが、今年度は昨年度からコース化した研修について発表しました。詳しくは下記の抄録を見ていただければと思います。本当は、朝倉Nsが発表予定でしたが、他の仕事が入り、私が代理で発表してきた次第です。ポスター作成も含めて、すべて朝倉Nsが用意されました。

 年々、国立病院総合医学会でも在宅分野の発表が増えてきており、やはり国立病院機構でも関心の高い領域となってきていることがわかります。非常に参考になる演題もありました。いろいろと情報交換もできたので、今後生かしていければなと思います。

 

 「在宅マインドを持った病院医療者」育成の試み・第2報

[演者] 今永 光彦:1  [著者] 朝倉 智美:1, 外山 哲也:1, 竹内 宏美:1

1:NHO 東埼玉病院 地域医療連携室

 当院では、在宅療養に向けた退院支援の充実の一環として、総合診療科医師と退院調整看護師が中心となり勉強会を開催している。平成26年度は講義形式中心の勉強会を行ったが、その際の課題を踏まえて、平成27年度は、院内外の多職種と連携し在宅療養を見据えた支援ができる人材を育成することを目的に研修を企画した。研修は全5回で1コースとし、研修前に参加者を公募して固定化した。研修修了者には院長名で修了証を交付した。参加者は、看護師13名、理学療法士4名、作業療法士4名、薬剤師7名、栄養士3名、MSW1名、医師4名の計36名であった。その他、有志で院外のケアマネージャー・訪問看護師・訪問リハビリ(理学療法士・作業療法士)が参加した。研修は、ミニレクチャーと事例を用いたグループワークの組み合わせ形式で行い、各回のテーマは、、「支援に必要な情報の整理と共有」「模擬多職種カンファレンス」「模擬退院前カンファレンス」「療養場所の意思決定支援」「在宅療養プランの提案」とした。全研修終了後のアンケートでは、全員が在宅療養をイメージできるようになったと回答しており、研修開始時と研修修了後のアンケート比較では「専門職としての支援」「多職種との連携」「院外スタッフとの連携」についての項目で、「行えている」の割合が増加し「行えていない」の割合が減少した。また、自由記載では、他職種の理解が深まったことや、実際の支援で在宅療養を意識して関わりたいなどの意見が見られた。今後は、より多くの院内スタッフが在宅療養を見据えた支援ができるように同様の研修を継続するとともに、研修修了者へのステップアップ研修の提供ができるように準備を進めている。


施設入所者における尿路感染症では耐性菌を意識して治療を行うべきか

2016-11-01 22:25:49 | 勉強会

 尿路感染症は施設入所者の感染症としてはコモンなものです。実際に自分たちも特養の嘱託医をやっていて、頻繁に遭遇します。欧米では施設入所者における耐性菌の増加が問題となっているようですが、耐性菌を意識した経験的治療を行う必要があるのでしょうか?今回はこのテーマについて勉強会で調べてみました。

 

  • Faine BAらの報告(Ann Phamacother 2015

救急受診してUTIと診断された360例をケースとしたケースコントロールスタディ(米国)⇒6.7%が多剤耐性。多変量解析で「男性」「血液透析」「ナーシングホーム入所者」が有意なリスク因子であった。

 

  • Xie Cらの報告(Intern Med 2012

救急受診した65歳以上のナーシングホーム入所者と一般高齢者の耐性菌を比較した過去起点コホート研究(オーストラリア)⇒有意にナーシングホーム入所者において耐性菌の割合が高かった。

 

  • Sundvall PDらの報告(BMC Geriatr 2014

 

スウェーデンの22か所のナーシングホーム入所者421名を対象とした横断研究。UTIの症状あるなしに関わらず尿培養をとり、耐性菌の割合を調査。

35%に何らかの耐性菌があった(カテーテル留置者は45%)。前月の抗菌薬使用歴・半年以内の入院歴がリスク因子であった。

 (ちなみに2003年と2012年を比較して耐性菌は増加していなかった。)

 

  • Faganらの報告(BMC Geriatrics 2015

65歳以上の232名のナーシングホーム入所者と3554名のコミュニティグループの尿培養結果を比較した横断研究(ノルウェイ)。

⇒耐性菌の有無に関して有意差なし。男性と比較して、女性では有意に大腸菌が多く、腸球菌が少なかった。女性では有意に耐性菌が少なかった。

 
  • Das Rらの報告(Infect Control Hosp Epidemiol 2009

米国の5つのナーシングホーム入所者551名を対象とした2年間のコホート研究(透析患者や尿道カテーテル留置患者は除外)。240450回のUTIエピソードあり。そのうち菌が生えた267検体を対象として分析。

大腸菌が5割以上、その他クレブシエラやプロテウスがそれぞれ15%弱。これらの菌においては7580%以上、TMP-SMXセファゾリンが感受性あり、ファーストチョイスとなるであろうと結論。

 

  • まとめ

 

施設入所者は耐性菌のリスク因子と言えそうではありますが、最後の文献内に書いてあったこととして国によってもだいぶ違うようです。国内の報告は調べた範囲では少なく、非常に小規模な報告があったのみでした(山本ら,老医誌2007)。

 

文献もふまえると、男性・最近の抗菌薬使用歴・入院歴などある施設入所者は、耐性菌のリスクは意識しつつ、診療にあたる必要があるのでしょう。その反面Das Rらの文献にもあるように、多数の入所者はそれほど広域の抗菌薬を使う必要はないと思われ、臨床的な重症度なども考えながら余裕があればできるだけ広域の抗菌薬を控えるのがいいのでしょうね。

 

まあ、あたりまえのことですが・・・。