東埼玉病院 総合診療科ブログ

勉強会やカンファレンスでの話題、臨床以外での活動などについて書いていきます!

日本プライマリケア連合学会誌41巻4号に「在宅医療における死因としての老衰の診断に関する調査」が掲載されました

2018-12-31 12:52:50 | 勉強会

以前投稿した論文が、日本プライマリケア連合学会誌41巻4号に掲載されました。

「在宅医療における死因としての老衰の診断に関する調査」という論文で、昨年行った全国在宅療養支援診療所連絡会の会員を対象に行ったアンケート調査の一部結果をまとめたものです。在宅医がどのように老衰の診断を行っているかを検証したものとなっています。ご興味のある方はぜひご覧になってください。J-STAGEで閲覧できるようになっています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/41/4/41_169/_article/-char/ja

 


CDI(Clostridium difficile infection)におけるプロバイオティクスの効果について

2018-12-15 17:10:17 | 勉強会

 今週行った勉強会の内容をのせたいと思います。高齢者が増えるなか、日常診療でCDIに遭遇する機会も多々あります。今回は、そのなかでもCDIにおけるプロバイオティクスの効果についてまとめてみました。

 

<CDI(Clostridium difficile infection)におけるプロバイオティクスの効果について>

•予防

★本邦のガイドライン(2018年11月)

CDIの発症リスクを有する患者において、プロバイオティクス製剤による予防を弱く推奨

★IDSAガイドライン(2017年)

CDI の一次予防のためのプロバイオティクスの投与を推奨するにはデータが不十分である(推奨なし)

★Johnston BCらの報告(Infect Control Hosp Epidemiol 2018)

18のRCTに対してメタ分析

⇒unadjusted model(OR:0.37,95%CI:0.25-0.55)

 adjusted model(OR:0.35,95%CI:0.23-0.55)

サブグループ解析では、CDIリスク5%以上の臨床セッティングでより利益あり

単種より多種のプロバイオティクスの方が利益あり

★Goldenberg JZらの報告(Cochrane Database 2017)

31のRCTを分析⇒プラセボ群4.0%、プロバイオティクス群1.5%(RR:0.40,95%CI:0.30-0.52) ただし、CDIリスク5%未満の臨床セッティングでは有意差がなかった。

★Shen NTらの報告(Gastroenterology 2017)

19のRCTを分析⇒プラセボ群3.9%、プロバイオティクス群1.6%(RR:0.42,95%CI:0.30-0.57)

抗菌薬投与開始から早めに始めれば始めるほど効果高い

(2日以内RR:0.32、3日以降RR:0.70)

 

<IDSAガイドラインが出た2017年以後のメタ分析で、予防に関して効果を示す研究が出てきているよう

ただし、CDIのリスクが高いセッティングかによって効果が異なる

⇒リスク高い患者に対しては使用がよいか、また使用するなら早めに使用開始するのがよさそう>

 

•治療(併用薬として)

★本邦のガイドライン(2018年11月)

プロバイオティクスはCDIの治療に有効とする十分なエビデンスはみられない(実施しないことを弱く推奨)

★Hempelらの報告(JAMA 2012)

CDIを含めた抗生物質関連下痢症(AAD)におけるプロバイオティクスの効果を検証したメタ分析(31のRCT)⇒重症の下痢患者が有意に減少(RR:0.52,95%CI:0.36-0.75) しかし、CDIに限定した研究ではない

★Pillaiらの報告(Cochrane Database 2008)

CDIの患者を対象として、VCMやMNZに併用して治療したRCT4つを分析⇒1つは有意に減少、3つは有意差なく、併用薬として使用するエビデンスは乏しいと結論

★Barker AKらの報告(J Antimicrob Chemother 2017)

33例の軽度~中等度のCDIを対象としたパイロットのRCT

⇒下痢の回数や期間は有意に減少 ただし、より規模の大きい研究が必要とコメント

 

<現時点ではプロバイオティクスが併用治療として有効である証拠は乏しいか>

 

 プロバイオティクスといっても、様々な種類のくすりがあり、それぞれのくすりによって入っている菌種も異なる現状があります。日本で発売されている整腸剤には比較的エビデンスがある菌種が必ずしも入っていないようです。そのあたりが効果の解釈においても難しいところかなと感じました。害はあまりないので(免疫抑制剤使用中の患者などで敗血症になることが稀にあるくらいのよう)、リスクが高そうな患者に対して予防的に使用してみるのはよいかなと個人的には思いました。