『EARTH』という映画が話題になったときに痛感したのだけれど、オーロラでも夕焼けでも、非常に鮮やかな瞬間はほんとうはひどく短いものだ。彩度だけについて言えば、自然というのはふだん、ほとんど茶色だとか濁った緑色のようなどっちつかずの色彩であるほうがずっと多いわけである。そこで、自然の鮮やかな瞬間をとらえようというところにカメラの使い道のひとつがあっても不思議はない。たとえばアンセル・アダムスが撮影したヨセミテの風景。それはモノクロームの世界なのだが、大きな自然の豊かな色彩が封じ込められていると感じられなくはないだろうか。彩度が高い自然というのは、むしろ画像処理が自在にできるようになってから目にする機会がぐっと増えた光景なのではないかと、私は『EARTH』に感じたのである。
一方『CARS』という映画に、2台の車がじゃれあいながらくねる坂道を疾走するシーンがあるのだが、これもアニメーションでなければ見られないシーンに違いない。実写であれば、カーブにかかればひたと路面に張り付くようにスローダウンするだろう。だからこそ、こちらもそのぎりぎりの危なさを感じないわけにはいかない。速いスピードを維持したまま、テンポを合わせて複数の車がくねる坂道を疾走していくシーンは、だからこそ“ありえないほど”官能的であるのに違いない。
曲がりくねった坂といえば、私にとってはなんといってもなじみ深いのが箱根の「いろは坂」なので、どうしてもイメージはいろは坂になる。いろは坂とくれば、紅葉の季節などが都合がよい。唐紅に水括るとは、とばかりに自然の絢爛が迫り、その蒸すような鮮やかさの眼下を、風とばかりにキャッツが疾走していく。
キャッツ?
(つづく)
すごいスピードで──羅風「流星」より
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一方『CARS』という映画に、2台の車がじゃれあいながらくねる坂道を疾走するシーンがあるのだが、これもアニメーションでなければ見られないシーンに違いない。実写であれば、カーブにかかればひたと路面に張り付くようにスローダウンするだろう。だからこそ、こちらもそのぎりぎりの危なさを感じないわけにはいかない。速いスピードを維持したまま、テンポを合わせて複数の車がくねる坂道を疾走していくシーンは、だからこそ“ありえないほど”官能的であるのに違いない。
曲がりくねった坂といえば、私にとってはなんといってもなじみ深いのが箱根の「いろは坂」なので、どうしてもイメージはいろは坂になる。いろは坂とくれば、紅葉の季節などが都合がよい。唐紅に水括るとは、とばかりに自然の絢爛が迫り、その蒸すような鮮やかさの眼下を、風とばかりにキャッツが疾走していく。
キャッツ?
(つづく)
すごいスピードで──羅風「流星」より
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