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ナスダストラップ

日々の生活で、見たこと聞いたこと感じたこと考えたことをそこはかとなく書き綴るブログ

T内

2015年04月30日 | T内
ロボットがアマゾンの倉庫作業員を救う?
http://www.gizmodo.jp/2014/12/post_16028.html


インターネット通販大手のamazonは、移動式の棚を使いピッキング作業の効率化を進めているという。

※ピッキング作業とはたくさんある商品の中から
 目的の商品を取ってくる作業の事である。

この移動棚ピッキングシステム、一目では効率的なのか疑問であった。
というのはamazonには膨大な注文が入るため
固定棚のピッキング作業でもかなりの効率化が見込めるのである。
しかし、少し考えると確かに移動棚の方が効率的のようである。


固定棚ピッキングの効率化はこうである。
まず、さまざまな注文から一つの棚の列の注文を全てまとめる。
そしてそれを1人のスタッフがピッキングする。

すると一つの棚の列を通る間にいくつもの商品をピッキングできる。
1次ピッキングされた商品を集めて2次ピッキングを行い一つの注文内容を一まとめにする。

重要なのは商品一つ当たりの平均ピッキング時間である。
これは商品数が増えるほど伸びていく。
商品数が1つしかなければ、商品を探す手間は0でピッキング時間はとても短くて済む。

恐らく、商品アイテム数が少なければ移動棚のメリットは小さいと思う。
数万アイテムか数十万アイテムかどこかに臨界点があって
それ以上では移動棚ピッキングの方が平均ピッキング時間が短くなるのだろう。

移動棚ピッキングでは固定棚ピッキングのようにピッキングを2段階に分ける必要もない。

棚が次々移動してくるので、平均ピッキング時間は20秒も掛からないのではないか。
1人7時間労働で1200アイテム以上ピッキングできることになる。

移動棚ピッキングは、いうなればピッキング作業のパイプライン化・ベルトコンベア化である。

T内

2015年04月05日 | T内
「データの見えざる手 ウェアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則」を読む。


読書中・・・。


著者は言う
人の幸せは加速度センサーで測れる
人間の活動の限界は熱力学の公式によって表せる
人との再会は不変的な法則によって起きる
会話の質の指標は身体運動の測定値から明確に定義できる
etc・・・

なんとも刺激的な内容である。

著者は腕時計型や名刺型のウェアラブルセンサの情報、
特に加速度情報を分析しさまざまな法則性を見出している。
その中には、既に経験的に知られていることもあれば全く予想外の事もある。
人の幸せは加速度センサーで測れるなどということを誰が思いつくだろうか?

これを証明するためのバックグラウンドとしてポジティブ心理学の進歩があるという。
心理学は今まで主に心理的に問題を抱えた人たちを対象として研究されてきた。
ポジティブ心理学は逆に心理的に健康な人たちを対象とした研究である。
つまり何故病気なのか?を調べるのではなく何故健康なのか?を調べるのである。
人の幸せは簡単なアンケートでもある程度定量的に調べることができる。

丹念な研究から得られた結果は驚くべきものである。
人の幸せ要因を、遺伝、環境要因、日々の習慣・行動・選択に分けると
遺伝が50%、環境要因が10%、日々の習慣・行動・選択が40%だというのである。

まず遺伝については双子の分析から得られた結果である。
一卵性の双子は遺伝子が全く同じである。
しかし、さまざまな理由で別々の家庭で育てられた人たちがいる。
同じ家庭で育てられた双子と、別々の家庭で育てられた双子を比較する事により
先天的要因と後天的要因を分離できるのである。
生まれた時点で幸せ要因の50%が決まっているとは驚きである。

次の環境要因にはさまざまな要素が含まれている。
人間関係・お金・学業・仕事・健康などである。
我々の多くはこれらの要素を向上させようと日々努力している。
それが幸せにつながると考えている人が多いだろう。
しかし、研究によればこれらを全て足し合わせても10%の影響力しか持っていないのである。
人間は良い環境にも悪い環境にも慣れてしまうのだ。

それよりも日々の習慣・行動・選択の方がずっと大きな影響力を持っている。
特に自ら積極的に行動を起こしたかどうかが重要なのだという。
一般に主体的な行動が奨励されるのは、
それが良い結果をもたらし幸せにつながると考えられているからである。
しかし、幸せの実現という観点からは主体的な行動は手段ではなく目的だというのである。
行動の結果に関わらず、人は主体的な行動そのものに幸せを感じるというのだ。
言われてみれば目的を達成した瞬間よりその過程の方が楽しいということは多い。

上記の帰結は発想の転換を要求する。人の幸せに目的の達成は不要だというのだ。
同時に「人を幸せにする道具」とは何かについて一つの答えを与える。
人を幸せにする道具とは、人の自発的な行動を促す道具なのである。

ドラえもんが出す道具はのび太を幸せにしているのだろうか?
最後に痛い目に遭うとしても、大抵のび太は嬉々として道具を使い始める。
ドラえもんが出す道具とドラえもんはのび太を幸せにしているのである。

アンケートによる幸せ評価と、ウェアラブルセンサによる加速度データを
突き合わせると明確な相関がみられた。幸せな人はよく動くのである。
つまり「人の幸せは加速度センサーで測れる」というのだ。


私が「人の幸せは加速度センサーで測れる」と聞いて連想したのは、
社会厚生関数は作れるのではないか?ということである。
社会厚生関数とは「社会の状態の良さ」を表すものだと私は理解している。
つまり社会厚生関数が高い社会ほど望ましいのである。
とすれば社会の目的は社会厚生関数を高めることともいえる。

しかし社会の良さを客観的に表すことが可能なのだろうか?これはとても難しい。
良い社会に対する価値観は人によってばらばらだし、仮に関数が定義できても
それを計算するデータが取れなければ実用的な指標にはならない。
なので私は社会厚生関数は実用的なツールにはならないが、
自分が考える良い社会を客観的な形で表現するツールとしては価値があるのではないかと考えていた。
つまり、良い社会とは何かについて無駄な議論を避けるためのツールとして使うということである。

しかし、人の幸せが加速度センサーで測れるのであれば
社会厚生関数を実際に作れる可能性が俄然高まってくる。
社会の良さを表す指標として長らく王座についているのはGDPである。
私もGDPが重要な指標であることは疑わないが、
GDP一辺倒の評価に疑問を感じる人は少なくないのではないだろうか。

著者はウェアラブルセンサを用いて計測した組織の幸せ「組織活性度」
を組織の改善に役立てるサービスを開始している。
これは会社における社会厚生関数を測る試みといえる。
同様に国や世界全体の社会厚生関数を定義し測ることも可能かもしれない。


また、ウェアラブルセンサのデータ分析は
ウェアラブルコンピュータのキラーアプリになるのではないかと思う。
apple watchを始めとしたウェアラブルコンピュータがブレイクするためには
キラーアプリが足りないという指摘がある。
加速度センサー等のデータを使ったライフログの分析は
身体的・精神的健康の維持増進に大きな効果を持つ可能性がある。

これらの分野はビッグデータの分析と関連して急速に進歩しており
社会に大きな影響を及ぼしていくものと考えられる。