洋楽な日々

洋楽を中心とした音楽の紹介。海外サッカー、格闘技等の雑文も。

エリオット・スミス

2004-11-01 | CD
Elliott Smith / From A Basement On The Hill

 エリオット・スミスの、遺作。他界する以前に作りかけていたものを恋人らが完成させた彼の最後の作品である。新作が心底待ち遠しいと思わせる数少ないアーチストの一人だっただけに1年前の訃報は本当に残念だった。

 諸説あるが、おそらくは自ら命を絶ったとみられている。そして何となくそれが以外な事ではないという思いもあった。彼の心の原風景を見ることは出来ないが、その風貌、言動、そしてその音楽から、彼が極めて繊細な人間であることは想像に難くない。また、映画「グッド・ウィル・ハンティング」の音楽によって環境が急激に変わってしまったことに対して、大いに戸惑っていただろうことも。

 世界で一番美しいメロディを書くSSW。彼はこう形容されることが多い。誇張されたキャッチコピーだな、と思う一方でそう表現されてもいいかな、とも思う。美しさと表裏一体の儚さ。儚さが醸し出す美しさと言うべきか。そんなようなものが彼の音楽には色濃いような気がする。それは彼の死の後追い的にそういう思いが強くなっているのかもしれないのだが・・・。

 「XO」「Figure8」と大傑作を続ける一方で薬物漬けになってしまったあまりにも繊細な天才SSW。

 ジャケットの思いつめたような目が何か象徴的なこの最後の作品は歪んだ「やかましい」ギターで幕を開ける。ザラザラした印象。「XO」のジャケットの印象のせいか、彼の音楽にはモノクロームのイメージが強い。華やかではないモノクロームで美しいメロディ。素晴らしい楽曲群。精神は病んでいっても才能は全く枯渇してはいなかった。前2作に勝るとも劣らない名盤である。それだけに本当に惜しい。