ハーベスト・タイム『収穫の時』

毎月発行の月刊紙『収穫のとき』掲載の聖書のお話など。

小さなことから実行する一年

2005-01-18 | 中川健一のおはなし
◆1月号◆小さなことから実行する一年


 明けましておめでとうございます。

 毎年、大きな夢、新しい幻を掲げて新年をスタートするのが恒例になっていますが、今年は「小さなことから実行する一年」でありたいと願わされています。それは、昨年末のある出来事がいまだに心に残っているからです。
 昨年の12月5日(日)の午後、札幌で3日間の仕事を終えた私は、午後3時半の飛行機で東京に発つべく、M牧師夫妻が運転する車に乗って空港に向かっていました。翌日の6日(月)は東京での月例会が予定されていました。なんとしてもその夜の内に東京に帰りつかねば、大変なことになります。しかし、前夜から降り始めた大雪で高速道路が閉鎖されたため、渋滞気味の一般道を雪道にハンドルを取られながら空港に向かうことになりました。20分遅れで空港に到着しましたが、飛行機も20分遅れとなっていましたので、なんとか間に合い、搭乗口に駆け込みました。
 機内は満席状態でしたが、これで今夜中に東京に帰れると一息つきました。ところが、事態は思わぬ方向に進展しました。機内に入ったまま2時間も待たされ、その後欠航となったのです。機体は25番スポットという地点に牽引車で運ばれ(大雪のために自力で動けない)、乗客はタラップ車が用意してくれた階段を使って地上に下り、バスに乗せられて元の搭乗口に戻されました。東京に着いているはずの時間に、私たちは出発点に戻されたのです。その後、予約変更の手続きを行ない、札幌駅前のホテルにチェックインした時には、夜の九時になっていました。
 急きょ、ホテルから知り合いのH牧師に電話を入れ、事情を説明してピンチヒッターをお願いしました。翌朝、私はH牧師に携帯電話を入れ、それをそのままマイクで復唱していただくという形で、開会の祈りを札幌のホテルから会場に送りました。幸い神様の守りがあったようで、出席者の皆さんは祝福されてお帰りになられたようです。私のほうは、その夜に札幌から大阪に直行し、翌7日(火)に大阪の月例会で奉仕することができました。
 この出来事を通して、二つのことを考えました。一つは、問題の中に置かれても、心は平安だったということです。自分でも不思議でしたが、事態の進展を冷静に受け止めることができました。また、ホテルにチェックインした時には、感謝の祈りさえ口から出てきました。神が与えてくださる平安を実感した瞬間でした。
 もう一つは、神様のお許しがなければ、メッセージを語ることはできないということです。時が与えられているうちに、為すべきことを為そうと再決心しました。


 その夜私は、疲れた体を休めながら、その日のことを振り返りました。平安ではあったのですが、どうしても気になる一つの場面が頭に残っていました。それは、2時間も機内で待たされた後、タラップ車が用意してくれた階段を下りる時のことでした。すぐ後ろから、男性の罵倒するような声が聞こえたのです。私はとっさに後ろを振り向きました。60代後半の小柄な婦人が、「なんでしょうか」とその男性に応じています。すると30代前半とおぼしき体格のよいその男性が、聞くに堪えないような罵声をその婦人に浴びせかけ、さっさと婦人の前に出て先に下りていったのです。その婦人は、ようやくのことでローラーのついた旅行カバンを持ち上げて、階段を下りています。その婦人の仕草が遅いので、くだんの男性はいらついて爆発したようです。私はその婦人を見ながら、もしこれ以上体がふらついたらお手伝いをしようと身構えていましたが、その必要はありませんでした。
 その状況では、誰もがいらいらしていました。しかし、この男性はなんというマナー違反をしでかしていることでしょうか。老人、女性、子供を助けてこそ、立派な大人ではありませんか。


 なんとも言えない恥かしさと憤りが翌日になっても心の中に残っていました。そしてその夜、イルカが人命救助をしたという心温まるニュースを耳にしました。
 場所は、ニュージーランド北島のワンガレイ海岸沖。3人の少女たちと一緒に泳いでいた海難救助隊員が、イルカの群れの助けでサメの襲撃を免れたという体験を披露しています。海岸から百メートルの沖を泳いでいた時、イルカ一頭が彼らに近づき、目の前に来て潜ったといいます。目を凝らすと、体長約3メートルの灰色のサメが周囲を旋回しているのが見えたそうです。サメは、離れて泳いでいた娘たちに向かったのですが、イルカの群れが現われて、彼ら全員を取り囲むようにして40分あまり一緒に泳ぎ、サメの襲撃から守ってくれたといいます。
 イルカが遊泳者を守った例は、ほかにもあるそうです。オークランド大学のコンスタンチン博士のコメントを聞いて、感動しました。「イルカには弱者を助ける習性がある」。
 マナー違反の人間は、イルカ以下です。イルカに恥かしいような行動を取ってはなりません。

 「それと同じように、信仰も、もし行ないがなかったなら、それだけでは、死んだものです」 (ヤコブの手紙2・17)


 感謝の心を忘れず、小さなことから実行することを、今年一年の目標にするつもりです。皆様にとって、よい一年でありますように、お祈りします。