心すなおな人たち(1)
CŒURS SIMPLES
————————————
Charles-Louis Philippe
短篇集(2)より
シャルル=ルイ・フィリップ (1874-1909) の作品を
読みながらフランス語の学習をしましょう.テキスト
は第三書房「フィリップ短編選集(IV)」
(フランス名作短編双書)を使って学習します.
——————————【1】—————————————————
Elle avait installé les deux couverts l' un en
face de l' autre sur la table. Il était sept heures
et demie. D' ordinaire, il ne se mettait pas trop
en retard. Enfin, puisqu' il était sept heures et
demie, il allait bientôt rentrer.
.——————————(訳)—————————————————
彼女はテーブルの上に差し向かいでもう二人分の食事の
用意を整えていました.午後7時半でした.
普段なら、こんなに遅くなることはなかったのです.と
うとう7時半になってしまいました.彼はもう戻るはず
でした.
——————————⦅語句⦆—————————————————
cœurs simples:訳せば「素朴な心」なのですが、解説書
によると、「ひと」をcœur という語で代表
させているとのこと.よって心素直な人々.
辞書で確認したところ、確かにcœur には
心の持ち主としての人という意味がありま
した.
elle:いきなりelle が出てきました.学校の先生ならこ
ういう答案はペケにするところ.これは筆者読者
あい了解済みの人物、あるいは事物について使う
代名詞だからです.敢えて使っているということ
は作者の意図は「お互い了解の例の彼女」という
ことで物語が始まっています.そのあとの il も同
様.
avait installé:大過去形なので、「~をもう済ませていた」
というところから物語が始まります.不定
詞はinstaller、他動詞.意味は「設置する」
「整える」
couvert:[クーヴェール](m) couverts と複数で描かれています.
意味は「食卓用の品々」でナプキン、皿、グラス、
ナイフ、フォーク、スプーン.
l'un en face de l'autre :差し向かいに;
en face de がl'un l'autre に割り込んでいます.
en face de qn/qc:~に向き合って
l'un en face de l'autre :一方がもう一方に向き合って
↓
差し向かいに
まだわかりにくいかたへ:l'un のあとにétant を補ってみ
てください.分詞構文からくずれてできたフレーズです.
sur la table:テーブルの上に
d'ordinaire:普段は、いつもは
se mettait:
il allait bientôt rentrer:彼は間もなく帰って来るでしょう.
aller + 不定詞=近接未来
allait bientôt rentrer:彼は間もなく戻るはずだった.
se mettre en retard:遅くなる、
se mettre en colère 「怒る」
se mettre en + 無冠詞名詞で、動作や、状態の移行を
表わします.状態をいう時はêtre を用います:
être en retard:おくれている
——————————≪文字≫—————————————————
フランス語には「合字(リガチュア)」というものがあ
ります.
その合字はŒ (大文字) œ (小文字)とæ (小文字のみ)
の2文字3種類です.
名前は:Œとœ は« e dans l'o » [ウ ダン ロ]
æ はめったに出てきませんが« e dans l'a » [ウ ダン ラ]
この文字が出せない場合は Œ はOE 、œはoe
æはae と書きます.かく言う私めも特殊文字ページから
コピペして書いております.こんなの頻繁に使うのなら
お手上げです.œ は比較的よく使うので、シフト・キー
とF3キーを同時に押して、そこへコピペして入れてお
けば次使いやすいです.