日々の便り

男女を問わず中高年者で、暇つぶしに、居住地の四季の移り変わりや、趣味等を語りあえたら・・と。

蒼い影(42)

2024年08月13日 02時47分35秒 | Weblog

 江梨子は、きのうの朝、通学列車の改札口で偶然に出会って気軽に「お先にどうぞ」と親切に声を掛けてくれた、隣町の高校生である清楚で清々しい感じのする学生服姿の上級生らしき人と、将来、交際できたらいいなぁ~。と、秘かに胸にとめていたが、今朝、早めに改札口に行っていたら、今朝は同級生らしき明るい感じのする女性と笑いながら軽く会釈して、自分の前を通り過ぎて行ったので、夢も一晩で儚く挫けてしまい、気分が冴えないまま登校した。

 興味も湧かない3時限目の数学も終わり、席を並べている小島君も
 「あぁ~ やっと終わったか。 さっぱり理解できないが、腹だけは一人前で、えらく腹がへったなぁ~」
と江梨子の顔を見ながらニコッといたずらっぽく笑いかけたとき、後ろ席の奈津子が耳うちする様に
 「理恵ちゃんが、おかずを沢山もつてきているよ」「隅の方で三人で食べようよ」
と、小声で教えてくれたので、彼女は奈津子について行き、教室の隅で理恵子の開いたご馳走を見ながら
 「凄く豪華だなぁ。理恵っ!これどうゆうこと?」
と言いながら自分達のお弁当を開いて食べ様としたとき、覗きに来た男子生徒にまじって、ひょうきんで愛想の良い小島君が「わぁ~ すげぇ~」と言うや遠慮なく鳥の唐揚げを口にほおばったので、江梨子が「なにするのよぅ~」と言うなり、左手を伸ばして小島君を払いのけ様としたところ、運悪く江梨子の拳が小島君の金的に当たり、小島君が「う~ん いてぇ~」としゃがみこみ、これを見た男子生徒がパチンコの真似よろしく「チ~ン ジャラジャラ~ 大当たり!」と叫んで冷やかしたところ、大柄で次の野球部のキャプテンに指名されている大島君が大声で、小島君を取り囲んでいる者達に
  「馬鹿野郎! これはストライクだ。 見事! 江梨子 みごとだ」
と叫び返し、小島君を抱えて上下に3回位ドスンと落とし、痛みが引いたのか逃げ様とする小島君を捕まえて
 「お前は、捕手落第だ」「江梨子の軟投を満足にキャッチ出来ない様では、とても硬式の捕手は無理だな。次を見つけなければ~」
と、ブツブツ言っていたら、離れた席からこれを見ていた女子生徒が
  「素敵! まさにキューピットだわ」「江梨ちゃん おめでとう~」
と歓声を発し、他の女性徒も黄色い笑い声を教室中に響かせて拍手したので、大島君はそれを聞いて不機嫌になり
 「なんだ その拍手は! ふざけんなよ、本当に痛いんだぞぅ~」「女のお前等には一生判らんが」
と、むきになって言と、女性徒の中から
  「あら~ キューピットが当たると言うことは、将来、二人が結ばれて幸せになると、昔から西洋では言はれているのよ」「知らないの?」
と、返事を返し、またもや大きな歓声と拍手が起きたが、この騒ぎを鎮め様と、奈津子が
  「皆さん お昼の時間なので静かにしましょうよ」
  「小島君 痛い思いをさせて御免ね」「江梨ちゃんも、悪意があってしたのではなく、あくまでも偶然の出来事なので、許してあげてね」
  「わたし達だって、将来、お産をするときには、痛くて苦しむらしいんだから」
  「神様は あくまでも公平だわ」
と言って皆を静かにさせると、理恵子と江梨子に対し
  「切角の楽しみなお昼も、滅茶苦茶になってしまったわ」「午後からは、たいした授業もないので帰へりましょう」
と言って、理恵子の持参したお惣菜を急がしく食べ終わると自分達のお弁当は食べずにしまいながら、二人を促してバックを整理して教室を出てしまった。

 学校を出ると、参人は行く当てもなく、江梨子が「私のために御迷惑をかけて済みません」と、歩きながら詫びると、理恵子も
 「そんなこと ないわ」「わたしも 朝からお母さんが何時もと違い、化粧や服装がなんとなく派手で気になって仕方ないのよ」
 「或いは、私の失敗が原因で、昨夜、お父さんに嫌味を言はれて実家に帰ってしまったのかと心配で・・」
と言うと、奈津子が「以前、わたしの家でも、そんな騒ぎがあったわ」と答え、続けて
 「寒いので、一層のこと理恵ちゃんの家にでも様子を見ることに行きましょうか」
と言い出し、理恵子も「そうしてくれる」「暖かいカップ麺で、お昼をやり直しましょうよ」とゆうことで理恵子の家に向かった。

 広い理恵子の家は人けがないと寒く、居間に入るや江梨子が堀炬燵の炭火を広げ、奈津子は温風器をつけて台所に行き、お湯を沸かしている理恵子のそばで
 「随分綺麗に方付いているわね」「やっぱりり 理恵ちゃんの言う通り本当なのかしら?」
と話あっているときに、突然、江梨子が「炬燵の上に置き手紙があるわ」と叫んだので、理恵子が急いで来て、手紙を見ると父の字で「診療所に定期検査に行き、場合によっては老先生と囲碁をして来る」としたためてあり、三人は「お父さんも、やけくそで面白くないのかしら」「いや そうでない 心配要らないわ」と勝手な想像を言いながら、熱いカップ麺を食べて胃が満たされたあと、掘り炬燵にそれぞれが足を伸ばして座布団を枕代わりに三人が高い天井を見つめながら横に寝そべり、奈津子が
  「江梨子にも とうとう恋人ができちゃったのか」
  「小島君とは 結構お似合いかもよ」 「江梨ちゃんの気持ちは どうなの?」
と聞くので、江梨子は
  「嫌いでもないが、そんなに好きでもないわ」
  「あの子 時々授業が退屈になると、わたしに(今度デートしようか)とか(彼氏いるのか)などとメモをそっとよこし、考えていることがいまいち判らないので・・」
と返事をすると、理恵子が
  「わたし達、まだ子供なのかしら?」
  「織田君も、桜の花びらが散る頃には、東京に出て行ってしまうし、そのあとはどうなるか判らないし、最近、今後のことを色々考えているの」
と呟き、それに同調する様に奈津子も「わたしも、おんなじことを考えているわ」と返事をしたあと
  「今日は どん底ね」「明日から何か良いことがあるといいけれどもね」
と答え、三人揃って起き上がると奈津子が
  「とにかく悩んでいても仕様がないわ」「さぁ 前向きに考えて、がんばろ~っと」
と落ち込んでいる二人を勇気ずけた。
  




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