日々の便り

男女を問わず中高年者で、暇つぶしに、居住地の四季の移り変わりや、趣味等を語りあえたら・・と。

蒼い影(34)

2024年07月11日 05時55分33秒 | Weblog

 宮下女史との話が終わると、節子は理恵ちゃんの担任先生である自分と同年齢位の高橋女教師のところに挨拶に行き、日頃の指導に丁寧にお礼を言って席に戻ると、入り口の戸が少し開き、理恵子が手招きで合図してくれたので、正面の会長さんや宮下女史に頭を下げ周囲にも軽く会釈して、静かに戸を開けて廊下に出て一息ついた。 
 二人で正面玄関に出ると、丸山医師が別の入り口から出て来て二人を追いかけてきた。
 
 丸山医師は理恵子を見ると
 「あの~ 娘さんですか?。まるで、歳の開いた御姉妹のようで、山上さんにお似合いで美人ですね」
と、笑いながら語りかけ
 「お帰りならば、玄関のところに車を止めてありますので、宜しければお送りいたしましょう」
と案内しようとしたが、理恵子は
 「あのぅ~ 切角の御親切ありがたいですが、私、これからお母さんと買い物に行く約束がありますので・・」
と、そんな約束などしていないのに勝手に断りの返事をして、尚も、節子さんを睨みつける様な顔つきをするので、節子も宮下女史の言葉が何故か心に影を落とし気乗りしないので、理恵子の咄嗟の返事に便上して丁寧に断った。

 駐車場に向かう途上、理恵子は不機嫌そうな顔をして
 「なによ~ お母さんの御機嫌をとるために、わたしをダシに使って、いきなり御姉妹だとか美人だとか、歯が浮く様なお世辞を言って、失礼しちゃうわ~」
 「大体 今まで美人なんて人に言われたこともないし・・。そんなことくらい、自分でもわかっているわ」
 「小説の世界でも、おおよそ美人なんて将来災いのもとになるってゆうことになつており、それに見る人の好みによって全然違うと思うわ」「ねぇ~ そうでしょう!」
と、丸山先生の派手な服装と大げさな褒め言葉に反発し
 「あの人 お母さんと、どの様な関係なの?」
と聞くので、節子は
 
 「あの人は、丸山先生といってお母さんと同じ病院の手術室勤務で、主任教授からも、その技術は高く評価されているのよ」
 「それに、患者さんや付き添いの人に対しても、親切に病状を説明しているし、見かけとは違い、自分の仕事については責任感の有る人と、母さんは見ているんだけれどもねぇ~」
と、簡単に説明すると、理恵子は
 「わたし、あのような派手で口の上手な人は、ダァ~嫌い!」
 「若し、わたしが重病になっても、あの先生のところには絶対に連れてゆかないでね」
と、完全に拒否反応を示したが、節子さんは、そんな話を聞いていて、やはり、若い看護師達が噂話をしているように、処女の本能が直感的にあの様な派手な服装と馴れ馴れしい男性の態度に拒絶反応を示すのかなぁ~。と、思いながら黙って聞いていた。

 理恵子は、余程腹の虫が治まらないとみえて、更に続けて「ねぇ~ 母さん聞いてよ」と節子さんの腕にすがりつき甘えるような声で
  「この間、織田君のところにお使いに行った帰り道に、彼に途中まで送ってもらったの」
  「そのとき、お前は決してクレオパトラみたいな美人ではないが、男が惚れる優しさを持ち合わせていて、何処となく可愛い女だよ」
  「少し我侭で、理・数に関する限り、呑み込みが少し遅いことを除けば・・、足は近代女性を象徴して長くてチョッピリだがセクシーでもあり、それに、なんと言っても尻が大きく安産型で、人の面倒見が良く、俺には理想的な彼女だよ」
  「な~んて 自然な言葉でさりげなく言って、彼らしく素直にわたしを観察してくれているのよ」
  「わたし、それを聞いていて、今まで以上に一層彼が真面目であることがわかり、わたし達の恋が本物だわと確信して、安心感とゆうのか、とても嬉しかったわ」
と、感激たっぷりに表現して、このときとばかりに、自分の話に置き換え得々と話していた。
  「最も、頭とお尻のことは、彼特有のジョークなのよ・・」
と、付け加えることも忘れなかった。

 一通り話を終えると、迎えに来ていた健太郎の車に乗り、運転中の健太郎に対し理恵子は
 「お父さん お母さんに何があったか知らないが、なんだかお疲れの様ですので、今晩は外食にしましょうよ」
と、話しかけ「わたし おそばが食べたいゎ」と言い出して、街場の食堂に行くことにした。
 健太郎にしてみれば、二人の会話から察して、なにか何時もとは雰囲気が違うなと敏感に察して、節子を代理出席させたことがまずかったなと、心に引っかかるものがあった。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする