ハマノヒロチカブログ

ピアノ弾き、ハマノヒロチカの雑記的ブログです。

「Wonderful World」全曲レビュー#9 ヒカリ

2021年11月26日 00時51分21秒 | レビュー

 ヒカリは、今回のアルバム収録曲の中では一番古い曲ですかね。2014年2月に自主制作シングル第2弾としてリリースしました。
 なかなか当時の記憶ももうおぼろげですが、その頃のことを思い返してみると、ファーストアルバム「最後の青春」をリリースしたのが2013年ですから、アルバムにその時点でのすべてをつぎ込んで、これがハマノヒロチカのアルバムです!という集大成を作り上げ、さあその次の一歩はどうする?という大事なタイミングですね。
 そして‥‥このブログでも何度も書いているので、いい加減飽きてきたかもしれませんが‥‥どんな手段を使ってでも売れたい、世に出たいと思って、バンドを組んだり、才能ある人を探したり、インパクトのある企画を求めたりと足掻き続けた時期が終わり、それよりも自分は歌うたいとして頑張っていきたい、という気持ちが芽生え始めた頃ですかね。
 このへんこのへんのブログにも当時の想いを綴っていますが、ハマノヒロチカのソロ活動は野狐禅解散後の2009年から始めてはいるけれども、本当の意味での歌うたい・ハマノヒロチカとしての人生は、この頃がスタートだったのかな、というのは今でも考えるところです。
 大袈裟に言うと、僕の中での大事なものや人生観などの価値観が大きく変わった、その入り口のタイミングで書いた曲だったな、と今にして思いますが、そのタイミングでこの歌を書くことができたのは、もしかしたら必然的なことだったのかもしれない。あるいは、この歌を書いたことで、自分の中の覚悟が確固たるものに変わっていったのかもしれない。いずれにせよ、自分の中で、ある種の決別をもって、歌うたいとしての新しい人生を歩み始めた、そんな時期の歌だなと思います。

 でも、「ヒカリ」はそんな夢への挫折と再起の歌なのかと言うと、それだけでもない。
 それこそ、そんな夢との別れも大きなものだったけど、例えば引っ越しや就職、転勤、失恋、結婚、あるいはもっと切実なものだったり、もっと深く悲しいものだったり、人生にはいろんな別れがあるもので、大切な人が増えれば増えるほど、そういう別れのタイミングも悲しいことに増えてしまいます。嫌だ嫌だと思うけれど、でもこれはしょうがない。
 例えば小説家が死んでも書いてきた言葉が残り続けるように、音楽家が死んでも作ってきた音楽が鳴り続けるように、それまで過ごした時間、想い出、風景、言葉、仕草、その時に言えなかったこと、いつか言おうと思って胸にしまっていたこと、そういういろんなものは、きっとそれぞれの場所で生き続けるのでしょう。誰しも、そんな風に胸に生き続けている言葉や想いがあったりするんじゃないかと思います。
 たまたま僕は、音楽家としての夢にこだわること、そこに邁進することが自分のアイデンティティになっているけれど、人によっては、大切な人に愛されることだったり、没頭できるものをとことん愛し続けることだったり、仕事で成功して巨額の富を築くことだったり、なにかしらの名声や評価を得ることだったり、いろんな形があると思いますし、またそのアイデンティティも、長い人生の中で、ときに失われてしまったり、揺らいでしまうこともあるでしょう。
 自己のアイデンティティの危機は、ともすれば人生の挫折にもつながりかねないほど辛く苦しいこと。でも、そんな経験を積み上げることで、人生はより強く、より豊かになってゆくんじゃないかとも思います。
 比喩ではなく本当に人生を賭けた挑戦だった音楽の夢への積年の想いと挫折、そして新たに見つけた新しい夢への挑戦への想いと覚悟。そんな時間を悩みぬいてきた自分にとって、ひとつの答えになる歌が書けたんじゃないかと、ちょっと大袈裟な表現になってしまうけれど、個人的なことではなく普遍的な人生の応援歌が書けたんじゃないかと、そんな風に思っています。

 歌詞は長いですが、一曲の中でここまで物語性のあるものを書けたというところは自分でも気に入っていますし、曲も非常にドラマチックな、やはりストーリー性のある曲になったなと思っています。よく、良い曲は映画一本分の感動が5分の中に詰まっているなんてことを言いますが、そこまでかどうかはわかりませんが、ある種の読後感に近いような満足感はあるんじゃないかなと思います。
 レコーディングは、井上大地&ANTONさんのチカチカバンドで。楽曲の持つストーリー性、ドラマ性を表現するべく、ドラムのパターンやギターのフレーズなどにもいろいろと要望を出してしまいましたが、二人とも意図するところをばっちり理解してくれて、より感情を衝き動かすような刺激的な曲になったと思います。
 特に、Bメロの揺れ動く感情を表現した部分や、大サビの衝動的な感情の昂ぶりを表現した部分などは、バンドのグルーヴと相まって、珠玉のテイクが録れたんじゃないかなと思います。
 メロディも非常にドラマチックなラインになっていて、歌うのも本当に難しい曲で、最初はなかなか歌いこなせず苦手意識があった曲なんですが、最近はようやく身体が馴染んできたような感覚があって、ライブでやるのがとても楽しくなってきました。

 願わくば、僕の書く歌も誰かの胸に残って、誰かの人生を照らすヒカリになれたらなと、そんなことを想いながら、この歌を歌い続けていきたいと思います。


ハマノヒロチカ「ヒカリ」@Roots 2020.12.28
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