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ハマノヒロチカブログ

ピアノ弾き、ハマノヒロチカの雑記的ブログです。

「I'm a Songwriter」全曲レビュー#8 マイ・バック・ページ

2025年06月08日 23時57分33秒 | レビュー

 ── 若いとは、いったいどういうことなんだろうか。

 なんて、なんだかそれっぽい小説の書き出しみたいにも思えますが、もともとそういう哲学めいた問いかけを頭の中で投げかけたり、何気ない言葉の定義をあれやこれやと考えて遊んだりというのが好きな性分だったので、そんな「若さ」についてもあれこれ想いを巡らせたことはままあります。
 若さというのも、実際に年齢の若いときにはその意味だとか、若さの持つその特権の素晴らしさをやはり理解しきれておらず、そこから離れたときに初めてその価値に気づくという皮肉な性質のものだなあとは思いますが、時の流れの中で、いわゆる若さからはどんどん離れてゆくことは明々白々、決して抗えないことは太古の昔から不変の事実であることはわかっているはずなのに、それでもなお若さを追い求めてしまうというのは、これはもう人類の性なんでしょうね。
 しかして、若さのその本質や真髄を若いときに振りかざすことは叶わず、つい大人びた振舞いに憧れてしまったり、若さゆえの過ちで核心を見失ってしまいがちな一方、老いてからその真価にふと触れたときの感動は、何とも形容しがたい甘美なものがあるなあとも思います。

 ボブ・ディランの「My back pages」、そしてそれを日本語詞でカバーした真心ブラザーズの「マイ・バック・ページ」。昔から真心ブラザーズが大好きだった僕は10代でこのカバーバージョンに出会ったのですが、“私はとても年老いている、そして私はあの頃よりもずっと若い”というリフレインが印象的なこの歌の本質を、やはり若い頃はあんまりわかっていなかったなと思います。
 そんな10代の頃は夢にも思わなかったミュージシャンとしての人生を、ひょんなことから歩み始めた20代。順風満帆かに思えたけれども結局バンドは解散し、なし崩し的に30代で始まった一人旅。悩んで苦しんでもがき抜いて、ようやく自分の人生の羅針盤が示す方向が見つかった気がした今はもう40代が終わろうとしています。
 でも、今まさに自分の意思で、自分の力で、自分で決めた方向に自分の船を漕ぎ出していくこの瞬間の、この純粋さ、期待と不安が織りなす胸の高鳴り、これこそ今までの人生のどんな瞬間よりも本質的な若さに満ち溢れているではないか。
 ボブ・ディランが「My back pages」を書いたのは23歳の時だそうで、当時の彼が描きたかったことがこういうことなのかどうかはわからないけれど、「若さとは何か」という人類の大きな命題について、僕なりに必死に年月を重ねて、僕なりに人生を切り開いて、そうしてたどり着いた一つの答えのようなものを、偉大なミュージシャンの言葉を借りながらですが、描けたんじゃないかなあと思っています。

 楽曲としては、最初からバンドサウンドのイメージがあったので、丁寧にそのイメージをなぞるようにバンドアレンジを重ねました。なんと言うか全編を通じてバンドメンバー含めて特殊なことはほとんどしていないのだけど、王道のポップスアレンジ、エバーグリーンな雰囲気がこの歌詞のテーマに非常にマッチしていて、チームとしてとても良い仕事ができたんじゃないかなあと思っています。山とケの山ちゃんのハーモニカも本当に良い存在感で素晴らしい!
 個人的には、コーラスのアレンジだとか、Bメロでちょっとだけ入る転調、さりげないオーギュメントの使い方、みたいな目立たないけどいぶし銀的に効果のあるギミックをちりばめてあるところがお気に入りです。

 ミュージックビデオを作ったのも非常に印象深いですね。グンジケンゴとYajiさんにお願いしていろんな素材を撮ってもらって、自分で編集しました。これもプロの作品と比べるとやはり物足りないしレベルの差を痛感してしまうけれど、素人なりにいろいろと工夫を凝らして作ったのは良い思い出です。あとやはり撮られ慣れていない!笑
 ミュージックビデオを作ったおかげもあり、実質的なアルバムのリードトラックになりました。これからもたくさんの方に聴いていただきたい、きっと多くの人に共感してもらえるメッセージなんじゃないかなと思っていますし、僕もずっとずっと「どこまでも歌えるさ」の通りにいつまでも歌っていきたいと思っています。

ハマノヒロチカ「マイ・バック・ページ」Music Video

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「I'm a Songwriter」全曲レビュー#7 クジャクソウ

2025年04月17日 01時05分38秒 | レビュー

 クジャクソウは別名クジャクアスターというキク科の多年草で、秋に白から薄紫の鮮やかな花を咲かせます。
 ……なんて、知ったふうな書き出しで始めてしまいましたが、クジャクソウという花のことも僕は全然知りませんでしたし、なんなら歌詞にあるように、タンポポとヒマワリと、あとは桜とかバラとかチューリップとか、それくらいしか花の名前なんて知りませんでした。
 カレー屋さんの名前とか、ドラクエの呪文の名前とか、のめりこんでしまったら細かいことまでとことん追い求めてしまうのですが、興味がないと全然知らないままのことってすごく多いな、と思います。草花や木々とかの名前とかもそうですし、季節や時間といった目に見えないものにも名前があったりします。雲の形や足元を這っている虫にも名前がありますし、道や橋、交差点やトンネルといった建造物にも名前がありますね。
 「道を歩いているとそこに咲いていた花の周りにチョウチョが飛んでいた」と言われると、ふーんそうなんだという平坦な感想しか出てきませんが、「イチョウ並木を歩いているとそこに咲いていたシロツメクサの周りにモンキチョウが飛んでいた」と言われると、イチョウの黄色が鮮やかに目を引く並木道の風景や、道端につつましくも可憐な白のワンポイントが敷き詰められた草むら、そこにふわふわと漂う黄色い小さな蝶の姿など、より鮮明に立体的に想像が膨らんでゆく感じがします。
 あの人が名前を教えてくれたおかげで、それまで平坦だった風景に生命が吹き込まれてゆく。その景色は、たとえあの人がいなくなっても、瑞々しく生命を宿ったまま。

 「最後の青春」とか「古い日記帳」のようなむき出しの感情のままに叫ぶような歌詞も確かに僕の作風のひとつではあるのですが、言葉にせずとも行間で語るような歌詞だとか、直接的な表現はなくても感情に訴えかけるような表現といったものにも憧れがありまして、そういう楽曲を書きたくて作ってみました。
 秋の空のちょっと色褪せた青色の下に揺れる薄紫色のクジャクソウ、澄み渡る晴れ間の情景、拭いきれない淋しさとのギャップ、言葉少なな中にそんな景色が描けているんじゃないかなと思います。
 道を歩いていても花の名前もロクに知らない、トーストくらいは辛うじて焼けるけれども、フルーツの皮の剥き方もわからない。そんな朝食の風景を例えばあの人の「本当にあなたは何も知らないのね」という声が埋めるでもなく、ただVelvet Undergroundのレコードが回り続けているだけ。
 角食というのはいわゆる角形食パン、四角い長方形の形の食パンのことですね。角食と呼ぶのは北海道だけみたいですが、どうしても歌詞の収まり的に「角食」じゃないとダメだなあと、ここは食パンやトーストだとちょっと違うんだな。

 丁寧に情景を描く歌詞に寄り添うように、曲もいたってシンプルで珍しいことはほとんどしていないですが、シンプルイズベストとはこのことだな、と思えるくらいにとても歌詞にマッチした曲だなと思います。
 秋の季節にはとかく歌いたくなってしまいますが、季節問わず歌っていきたいと思うくらいに気に入っています。
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「I'm a Songwriter」全曲レビュー#6 月と独り言

2025年01月22日 22時20分17秒 | レビュー

 仮タイトルは「流行りうた」⇒「不思議ちゃん」。
 やれ「最後の青春」だの、やれ「情熱の行方」だのと、シリアスだったり暑苦しかったりするテーマの楽曲を書いてしまいがちな性分なのですが、そういうのとはまた違う切り口の軽いタッチの恋の歌なんてのも書けたらいいなあ、なんて夢想して書いた曲です。
 「不惑も過ぎてだいぶ経つのに恋愛の曲なんて」という気持ちもありましたし、「書き慣れてないから、やけに生々しくなってイメージダウンになったらどうしよう」なんて余計な心配もしましたが、なんとなくふんわりカラっとした不思議な恋愛の曲になったかなと思います。
 主人公は何歳なんだろう、フラれちゃったのかな、それとも違う何かが二人を引き裂いたんだろうか。イメージは広がりますが、確かなことはわかるようでわからない。そんな断片的な独り言が、なんとも言えない絶妙な切なさを醸し出せているんじゃないかなと思います。

 ランランラン、という楽しそうなステップを踏んでいるようなリズムも、独り言なんだと思うとどこか切なくもの悲しい。そんな切ないステップをイメージさせるサブドミナント始まりのサビ、そして軽快で牧歌的ながら逆説的に孤独な寂しさを感じさせるようならっきょ君のパーカッション、ハミングと歌詞が入り混じる感じもこういう曲ならではのテクニックかな、なんて自画自賛してみたり。笑

 なかなかライブでは出番は少ない曲ですが、他にないタイプの曲ですし、歌詞も行間の描き方がすごく気に入っていまして、これも大事に歌い続けていきたい曲です。
 わかんないけど、女性ボーカルが似合うんじゃないかなあ?歌詞の主人公は男性のイメージではありますが、女性ボーカルで聞いてみたい気もします。誰か歌ってくれないかなあ?
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「I'm a Songwriter」全曲レビュー#5 旭橋

2024年05月28日 01時27分59秒 | レビュー

 僕の故郷・旭川は北海道のほぼ真ん中に位置しており、北海道の屋根とも言われる大雪山系の山々の麓にある上川盆地に広がる街です。大都会・札幌に次ぐ北海道第二の都市として、道東、道北方面への交通の要衝としても有名ですが、川のまちとしても知られておりまして、石狩川の上流に位置する旭川は、大雪山系の山々から注ぎ込む大小合わせて130もの川が流れております。
 川が多いということは当然橋も多いわけで、市内にある橋の数は760。そしてその中でも最も歴史があり、街のシンボルとなっている橋が旭橋です。
 街のシンボルだけあって、旭川市民は旭橋の話になると熱くなるし長くなります。このブログも延々と続いてしまう恐れがあるため、その概要とか歴史とかについてはいろいろと詳しいページ詳しいページがたくさんあるので、そちらに委ねたいと思いますが、そのくらい故郷・旭川を象徴するような存在だということはお伝えしておきたいのです。

 そんな旭川という街で僕は高校卒業の18歳までを過ごし、大学生となってからは旭川よりもさらに北、オホーツク海沿いの紋別という街に住み、そこで竹原ピストルと出会います。
 野狐禅の結成前のエピソード等でも話すことがありますが、学生時代、卒業後のことについて僕は何も動いたり考えたりできていませんでした。大学は単なる滑り止めで特に意思もなく入ったため、そこで学んだ福祉を仕事にすることも考えられず、なんとなく抱いていた漫画家やゲームプログラマーの夢も叶えるために熱心に動くこともなく、ぼんやり空からシアワセでも降ってこないかな、みたいな感覚で音楽への夢をぼんやり浮かべたままアルバイトに明け暮れ、友人たちと遊び倒し、気づけば大学を卒業していました。それでもなお僕のぼんやりは終わることがなく、なんとなく旭川に帰り、実家の近所のコンビニでアルバイトを続ける生活でした。
 周りの友人たちはどこそこに就職した、どこそこに住んで働いている、みたいな話も聞こえてくる中、自分の心の中をずっと占めていた未来への不安と、何かを決断することへの恐怖、それを紛らわすかのように日々の生活に没頭しては現実逃避している自分に対しての自己嫌悪がどんどん強くなり、動き出すことへのハードルがどんどん高くなるという悪循環。バイトのシフトが入っていることが言い訳であり救いだった、そんな生活でした。
 振り返れば高校だって大学だって、なんとなく行くもんなんだろうというくらいの認識で、あらかじめ誰かに決めてもらっていたような感覚がありました。思えば、自分の意思で自分の人生のことについての決断をちゃんとしたことが一度も無かった。それで自分で自分の職業や就職先などを決めることが怖かったし、自分は何ができるのか、自分の強みは何で弱点は何なのかも知らなかった。意思を持っている周りの人たちがとても眩しく見えて、自分とは圧倒的に差がついているように見えてしまった。そんな意識から悪循環を生んでいたのかな、と思います。
 そんな僕だったので、野狐禅を組んで音楽活動を始めるというのは、僕にとっても衝撃的な出来事でした。
 本当に一人では何もできなかった僕なので、絶対に一人では音楽活動なんてやっていなかったでしょう。竹原ピストルがいてくれて、二人だったからこそ決められたんだと思います。音楽活動をするということも、旭川を出て札幌に住む、東京に住むということも、たぶん僕は自分一人では怖くて何も決められなかったと思います。

 それから時は経ち、僕もいろいろな経験をして、本当にいろんな選択や決断を重ねて、悩んで学んできました。もちろん今でも怖いこともありますし、後悔していることだってありますが、それも全部飲み込んで積み上げてきたからこそ、こうして今の充実した人生を楽しむことができているんだな、と思います。あの怖さを克服できたことは、自分にとってとても大きな成長だったなと思います。
 例えばあの時、やはり恐怖と不安に押しつぶされていたら、何も踏み出せず何も決められずに過ぎ去ってゆくチャンスを見送るだけだったなら、僕は今も旭川のコンビニで働いていたんだろうか?今も悪循環の中で震えていたんだろうか?などと想像するとゾッとしたりもします。
 旭川は四方を山に囲まれた盆地に広がる街。そこから夢やチャンスをつかんだ者が、旭橋を渡り、遠い街を目指します。

 サウンド的には、今回のアルバムにおいてもバンドやパーカッションなどで楽曲のイメージをより鮮明にしていきたい曲がある中で、弾き語りの曲もその対比が活きるように効果的に配置していきたいというイメージがあり、この曲は弾き語りでもメロディや歌詞の美しさが十分伝わるかな、と思いました。
 ナカノステレオのピアノにイッキ君がマイクを立ててくれて、アットホームな良い雰囲気の中でレコーディングできました。
 わりと終盤でのレコーディングだったこともあり、ピアノに若干チューニングが怪しい鍵盤がありまして悩みましたが、そこをなるべく避ける運指に変えて弾いたことが逆にそれまで想定していなかったアレンジになって、個人的には怪我の功名的な良いテイクかなと思っております。

 大好きな故郷・旭川のことを歌にしたい、旭川の良さを表現したり、旭川に恩返しがしたい、みたいな気持ちもあって旭川のシンボル・旭橋を題材にしたものの、歌詞のテーマはそういったことからは大きく外れてしまいまして、若干申し訳ない気持ちもあったりします。笑
 それでも、旭橋から見る石狩川の美しさ、夕暮れに街灯を灯す旭橋の美しさ、みたいなものが少しでも表現できていたらいいなあ、とも思います。
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「I'm a Songwriter」全曲レビュー#4 ヒーロー

2024年01月30日 00時58分47秒 | レビュー

 もう何度その話をするんだと感じるかもしれませんが、去年の一番のトピックと言えば毎月新曲チャレンジ。筆が遅い僕がヒイヒイ言いながらもどうにか毎月新曲をこさえては発表し続けるという企画、僕の中ではかなりチャレンジングな目標で、それだけに達成感もひとしおでございましたが、一年通してではないものの過去にも似たようなチャレンジをしたことがあります。
 そのうちの一つ、2019年5月の幡ヶ谷36°5でのワンマンライブでは、この日に新曲を4曲発表します!というチャレンジをやってまして、この時に書いたのが、表題曲の「Songwriter」と、今回レビューする「ヒーロー」です。あとの2曲は忘れました。笑

 日常の中から浮かんできて生まれてくるような歌の場合は、そのときの強い想いが歌詞になって世界を作っていくことが多いのですが、こういった締め切りがあったりして書く歌の場合は違うスイッチが入って生まれてくる場合が多いです。「ヒーロー」の場合は、なんとなくピアノのリフや曲全体のイメージが先にあって、今までのレパートリーとはちょっと違った感じの曲が欲しいなあというところから生まれてきたように思います。
 僕の場合、アップテンポの曲となると最後の青春やハロー・グッバイといった縦ノリ系の曲のほうが多く、こうしたグルーヴ感のあるピアノロック的な楽曲にちょっとした憧れがあったり、こうした楽曲をライブに織り込めるようになると幅が広がるなあ、なんて想いもありました。大袈裟になりますが、僕の中では満を持して生まれた、新しい世界を開く一曲でもあります。
 曲のイメージは、敬愛するKANさんの影響が非常に色濃く出ているかなあと自分でも思いますが、いろんな曲のいいとこ取りをしつつ、それらの真ん中にいい塩梅に着地できたんじゃないかなと思っております。笑

 歌詞のほうは、日々一生懸命に働いている大人の皆さんへのエールですね。大人になるとなかなか褒められることも少なくなり、真面目に頑張っていても報われないと感じてしまうような瞬間も少なからずあったりしますが、いやいや大丈夫、そんなことないよ、頑張ってたらそれだけの実りが必ずあるぜ、とりあえず今日疲れてたら頑張った自分を褒めてやろうぜ、なんて気持ちで書いてみました。
 艱難辛苦とか悲歌慷慨とかインテリ四字熟語を無理やり突っ込んでしまったので譜割りがえらく厄介な感じになってしまったり、はたまた僕の歌詞には珍しく英文のフレーズがあったりと、僕の作風からはだいぶ冒険した感じになってしまいましたが、そんなところも妙なクセになって結果的に良かったのかなーと思っております。

 僕の作品の中ではちょっと異色と言うか、他にないテイストの曲なので、ライブでもいろんな使い方ができて、良い働きをしてくれています。何より演奏していて楽しい!ライブでは手拍子をしていただくのが定番になってきました。みんなで楽しく盛り上がれるような楽曲として、これからも大事にしていきたいなと思っております。


ハマノヒロチカ「ヒーロー」@福島Outline 2022.7.16
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「I'm a Songwriter」全曲レビュー#3 こんな僕で良かったら

2023年07月24日 01時00分24秒 | レビュー

 いわゆる新型コロナも5類感染症に移行して、マスクの着用や濃厚接触者の自宅待機みたいなこともだんだんと任意となり、ようやく長かったコロナ狂騒曲も終焉しそうな雰囲気なのかなと思いつつ、でもかたや第9波みたいな話も聞こえてくるようになり、また僕の周りでもちらほらと感染の話を聞くようになりました。
 本当に厄介なものだなとうんざりしますが、ただ毒性の強弱はあれど、気をつけなくてはいけないウイルスは他にもありますし、消毒などは常日頃から気をつけつつ、とにかく健康を維持することを心掛けて、ストレスをためすぎないようにしたいですね。

 3年前の緊急事態宣言の頃の街の様子は、非常に衝撃的なものだったなと思います。
 目に見えないウイルスに怯え、街からは人が消え、お店の灯りも消え、漫画か何かで見た世紀末の荒廃した世界のように錯覚するような気がしました。学校も会社も休みになり、とにもかくにも自宅待機。ライブもスポーツも次々と中止に追い込まれました。かたやネットでは不安や悲しみから、いろんな言葉が飛び交い、いざこざも頻発していたように思います。
 そんな中で生まれた配信の文化は、音楽の在り方を少しだけ変えてくれたようにも思います。
 結局、生の感動には勝てないんだという主張ももちろん頷けますが、あの頃、たくさんの人たちがいろんなスキルや活動を配信するようになって、それまでの生活様式ではなかなか出会えなかったであろう作品に出合えるようになったことは、あの時代に生まれた数少ない幸せなことだったのかなと思います。
 僕自身も、自分の音楽活動において配信をどう活用していくかというのは、いろいろと考えもしましたし、楽しみながら試行錯誤もできたかなと思います。
 もともと僕は自分のライブが動画という形で残ることに否定的でした。それは、自分自身まだまだ未熟であるという自信のなさ、自分の持ち味はライブハウスの音響や空気感の中で最大化されるのだから持ち味が十分に楽しめない状態のものを見て欲しくないという意識、そして自分はまだまだ現在進行形で成長途中なので過去の一時点のライブが残って欲しくないというワガママなどもあったと思います。なので、あんまりライブ映像などをYoutubeに上げたりといったことも積極的にやってきませんでした(単純に全然撮影していないというのもありますが)。
 けれどもあの頃、当時の世相の中で僕がツイキャスで自分のライブなどを配信するようになったのは、音楽人の端くれとして、音楽の持つパワーを届けたい、音楽人として誰かのチカラになりたいという想いのほうが勝ったのかな、と思います。たかが僕一人が動いたからと言って、大金が動いたり、なにか大きなムーブメントが起こるようなことはありませんが、それでも何かのご縁で僕のことを知ってくださった皆さんが、ネットの向こうで、何かしら笑えたり、安心できたり、ほっとしたり、そんなことができるのなら、それこそが音楽人としての喜びの原点なんじゃないかなと思います。

 楽曲としては、コロナ禍で全国各地のライブハウスの経営が危ぶまれる中、野狐禅時代からの故郷である札幌LOGの救済応援企画として作られたコンピレーションアルバムへの参加の話があり、せっかくなので既存曲じゃなく書き下ろしで、ということで書いた曲です。
 当時は完全に自宅レコーディングで、電子ピアノ音源で作ったトラックにボーカルを乗せた、いわばデモ音源的な手法で収録したテイクでしたが、アルバムへ収録するにあたり、改めて弾き語りの一発録りで録音し直しました。
 この、もともと自宅レコーディングだけで作成した曲というのがキモで、自宅だとやはりライブのようなテンションで歌唱することはできず、自宅っぽい歌い方になってしまうのですが、そのせいで歌のキーが若干低すぎるんですね。自宅で歌うぶんにはそれで歌えてしまうのですが、ライブだとちょっと低すぎて、なかなか大変でした。だったらキーを上げればいいじゃないかという話ではあるんですが、この曲に関しては、そういう背景だということも含めて、このキーが合ってるんじゃないかなと思い、そのままにしてあります。

 コロナ禍で始めたスタジオ配信ライブ「こんな僕で良かったら」も、外出が制限されていた頃は積極的にやるようにしていましたが、最近はライブが活発なこともあって、ご無沙汰しちゃってますね。
 もうあの頃のような世界には戻りたくないなとは思いますが、ツイキャスでコメントをいただいて、それに返事をしてという双方向のやりとりをしたり、はたまた全国いろんなところから見ていただいて、みなさんの名前を見ながら全国に想いを馳せたり、そんなことを思いながらの配信ライブは楽しかったですね。
 なかなか時間もとれていないですが、また機をみてぜひやりたいなとは思っております。そのときは、ぜひまた皆さんで集まってくださいね。こんな僕で良かったら、ぜひお付き合いいただけたら嬉しいです!
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「I'm a Songwriter」全曲レビュー#2 Songwriter

2023年05月19日 01時14分52秒 | レビュー

 アルバムタイトル曲でもある「Songwriter」、このアルバムは、思えばこの曲を盤に収めたくて作ったようなものという気もします。
 2019年にこの曲を書いてから、ずっと大切に歌い続けている歌で、この歌に込めた想いの丈もMCでずいぶんと語ってきましたが、アルバム発売から1年が経ったタイミングの今、改めて振り返ってみようかなと思います。

 思えば、この曲を書いた頃、2019年と言うと、わたくしは前年にリリースしたセカンドアルバム「Wonderful World」のリリースツアーを続けておりまして、野狐禅解散、ソロ活動開始から10年と言う節目を迎えていた頃ですね。
 ソロ活動10年と言っても、最初から歌に本気で取り組んでいたわけでもなく、紆余曲折しながらいろいろとトライしていたこともブログで書き連ねてきた通りで、2013年に「ヒカリ」という歌を書いた頃から歌うたいとしてちゃんと頑張っていこうという気持ちが芽生え始め、ちょっとずつライブでも手応えを感じはじめ、仕事や生活のバランスも変わってゆき、40歳を迎えて考え方も徐々に変わり、ハマノヒロチカという歌うたいとしてどういう歌を書いて歌っていくかというテーマに対して深く考えるようになっていた、そんな頃でした。
 自分が何をやりたかったのか、自分は何が好きなのか、40代を迎えて自分の価値観もずいぶんと変わってゆく中でそんなことを改めて掘り下げて考えてゆくうちに、やはり自分は音楽というものに魅せられていて、これまでの人生においても音楽にたくさんの勇気や元気をもらってきて、言葉とメロディの掛け合わせでものすごくいろんな世界や物語を描ける音楽というものに心を奪われているんだなと思いました。そして、自分はやはり歌を書きたいんだと、自分にしか書けない歌を生涯をかけて求め続けて、究極の歌をいつか書きたいんだ、なんてロマンチックなことを改めて思ったりしたのです。

 歌詞は本当に自然にスラスラと書けました。ソロも10年経ってようやく、という気もしないでもないですが、実力もないのに意地と嫉妬だけでどこかに幸運が転がってないかとフラフラしていた時代に見切りをつけて、売れるとか向いているとかじゃなく、自分が残りの人生を賭けられる夢としてソングライターとして生きてゆこうと、そんな覚悟と矜持を込めて、私小説を書くような気持で書きました。
 曲もほとんど悩まずに出来ましたが、タイトルを「Songwriter」にしようと思った時点でそうなることは予想できていましたが、敬愛するKANさんの影響が色濃いなあとは思います。
 楽曲としては、この構成は自分が理想とする完璧な構成になっているなあと、全編通して一切の無駄がない、とても美しい構成になっているなあというところは自画自賛したいところです。一音たりとも、一小節たりとも無駄がない。流れるように物語が進み、サビに向かって、そしてDメロの大サビに向かって感情の通りに曲が流れ、間奏で象徴的なフレーズが流れ、最後のサビできちんと物語が完結し、アウトロの最後の一音まですべてに存在意義がある、非常に芸術的で完成度の高い楽曲になったんじゃないかと思っております。まさしく、自分のこれからの名刺的な楽曲としていつまでも歌っていけるような楽曲かなと、とても気に入っております。

 アレンジは非常に悩みまして、この曲が持つドラマ性を再現するのにバンドでやろうかなとも思っていたのですが、上で触れたようにピアノ弾き語りの状態でもピアノのフレーズやアレンジの完成度が高かったので、これをそのまま活かしつつ、ドラマ性にほんの少しドライブをかけるようなイメージで、らっきょ君にパーカッションをお願いしました。ライブでも何度か合わせていたので、テンポが揺らいだり、ボーカルのテンションに呼応したりといった呼吸もばっちり合わせてくれまして、一発録りでピタっと合わせてもらえました。特にDメロから間奏、サビへと続く世界観を彩るさまざまな楽器のアンサンブルはたまらないですね。

 そして、ロットン瑠唯さんが描いてくださった絵についても触れなくてはいけないですね。
 この楽曲をアルバムのタイトル曲にしようというのは構想当初からありましたが、ではそのアルバムのジャケットはどうしよう?というところで、なにか文章を書いているところの写真にしようかとか、楽譜をモチーフにしたデザインにしようかとか、いくつかアイデアは出たものの、どれもピンと来ず、決めあぐねているような状況でした。
 アルバムの制作も佳境に入り、そろそろ決めなくちゃならなくなって焦っていたある日、急にフクロウのような鳥が、夜空のような、宇宙のような、神秘的な世界を飛んでいるようなイメージが閃いたのです。フクロウは知恵のシンボルと言われますが、叡智の限りを尽くして捧げる歌を求めるソングライターの姿が、そんなイメージと重なったのかもしれません。
 そんなイメージを、ロットンさんは見事にキャンバスに描いてくださった。一見冷たいように見える世界はとても彩り豊かで、繊細で混沌としていて、その中で孤独に堂々と翼を広げているさまに勇敢さや聡明さも感じられて、本当に味わい深い素敵な絵で、一生の宝物になりました。

 人生を悩み、運命に抗い、涙流す人に捧ぐ歌を求めて。
 この歌と共に、ずっとずっと歩いてゆけそうに思います。


ハマノヒロチカ「Songwriter」@ARTRION 2022.6.15


 
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「I'm a Songwriter」全曲レビュー#1 はじまりの唄

2022年11月25日 00時41分26秒 | レビュー

 今年はアルバムのレコーディングに始まり、5月にリリースしてからは全国ツアーに明け暮れてと、サードアルバム「I'm a Songwriter」にどっぷりだった一年でしたが、おかげさまで半年かけて全国あちこちを駆け回りましたし、まだ廻れていないところはありつつも、ある程度は全国の皆さんの手にも行き渡ったのかな、なんて思っております。
 ただ、発売からはもう半年経ってますし、買ってすぐの頃はまあ何回か聴いたけども、最近は新鮮味も無くなってきているし、新しいCDもいっぱい出てるし、そろそろメルカリに……という方もいらっしゃるかもしれません。
 ……ちょっと待った!!
 そんなアナタのために、また新鮮な気持ちでアルバムを聴くことができるかもしれない、全曲セルフレビューをお届けしたいと思います!……という、まさかの前2作と同じ導入でスイマセン。

 というわけで、1曲目「はじまりの唄」。
 この曲は、2018年のセカンドアルバム「Wonderful World」のリリース記念ワンマンの時に、アルバムに収録されている曲や古い曲で始まるのではなく、新曲で始まりたいなあと思って書いたのを覚えております。セカンドアルバムで納得のいくアルバムを作れたことで、一種の燃え尽き症候群みたいになってしまうのが嫌だったという気持ちがありました。それで、リリース記念のワンマンという一種のゴールのようなイベントでも、新曲で始まることできちんと「次」に向かって動いていけるんじゃないかという目論見ですね。
 歌詞のテーマとしては「はじまり」ですが、今にして思うと、この頃漂っていた、この感じでやっていけば未来が見えるんじゃないかという手応えめいたものを感じ始めているようにも感じます。
 それと、あんまりガツガツとした曲ばかりじゃなく、サラっとした手触りの曲が欲しいなと考えていたこともあって、すごくライトな感じに書きました。自分が好きな作風とはちょっと違いますが、だからと言って物足りないかというとそういうわけでもない、なかなか良いバランスのところに着地できたのではないかなと思っています。
 ガツンとメッセージを!というタイプの曲ではないぶん、遊び心みたいなものも散りばめてあるのも、自分の中では楽しいポイントです。あの曲のアンサーソングのような部分もあるし、あの曲のオマージュになっている部分もあるし、みたいなところは、なんというか音楽家ならではの贅沢な遊び方ですね。

 レコーディングは、前作「Wonderful World」でも「夏にサヨナラ」で手伝ってくれた仙台ハマノヒロチカバンドの面々と。今回はプリプロも仙台できちんとやって、曲のイメージなども何度もメンバーとやりとりしました。
 構想としてひとつ最初にあったイメージがありまして、僕の曲は(当然ながら)ほとんどの曲がピアノの音から始まるのですが、今回のアルバムは、CDを再生して1曲目の冒頭の音が鳴ったときに、その音はピアノではなく違う楽器の音であって欲しいなあというのがありました。そんな冒頭のイメージから、おそらくこの曲が1曲目になるだろう、この曲からアルバムが始まるんだというイメージが膨らみ、そんなイメージから全体のアレンジを作り上げていきました。8ビートのダウンピッキングだけで引っ張る数十小節はさぞかし大変だったと思います!笑
 仙台ハマノヒロチカバンドは「最後の青春」や「夏にサヨナラ」をゴリゴリと演奏することが多かったこともあり、わりとやんちゃな印象を持っていたのですが、さりとてみんなさすがの手練者たち。むしろこういう曲でこそ本領発揮できるような節もありますね。サビに向かってじわじわと盛り上がっていくアンサンブルは、メンバーそれぞれの引き算の美学も光る、素晴らしいアレンジだと思います。
 間奏のフレーズは「はじまり」繋がりということで、野狐禅のデビュー曲「自殺志願者が線路に飛び込むスピード」の間奏のフレーズをしれっと引用していたのですが、やっちゃんのドラムもそれに合わせてゲンタ兄貴風にしてくれたのも嬉しかったです。笑
 あきのりさんのベースは屋台骨という感じで、バンド全体をしっかり引き締めてくれて、かつ感情の移ろいも感じさせる名フレーズがそこかしこに光っています。静と動のコントラストも良いですね。
 そしてタンクさんは今回はなんと言ってもスライドギターですね。90年代のJ-POPを彷彿とさせるような、そうそうそれが好きなんだよ!という我々世代のツボを突くようなフレーズが、この曲の瑞々しさを演出してくれているように思います。
 仙台での出張レコーディングも前回に続いて2回目ですが、1日のうちに1曲集中で全パートを録りきってしまうこの形式も楽しいですね。レコーディングエンジニアをやってくれたヒロオ君にも大変助けられました。

 仙台バンドでは、今回のツアーでは福島と仙台で2本ライブもさせてもらいました。このレコーディングの経験があったからこその、ライブでの一体感もとても心地よく、いつかはこのメンバーでワンマンなんてことも夢見てしまいますね。
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「Wonderful World」全曲レビュー#10 Wonderful World

2022年02月12日 00時15分09秒 | レビュー

 だらだらと続けてきたセカンドアルバム「Wonderful World」の全曲レビューも、ようやくこれで最後ですね。
 ラストを飾るのは、アルバムタイトル曲でもある「Wonderful World」。この歌は、今回のアルバムの収録曲の中では一番最後に書いた歌です。

 子育ての本などを読んでいると「親は初めから完璧な親だったわけじゃなく、親だって初めての子育てなんだ」というようなことがよく書いてあります。本当にその通りで、自分が子供だった時は、親をはじめ、周りの大人たちは、もう自分が生まれるずっと前からすでに立派な大人だったかのように思えましたが、みんな迷いながら、悩みながら、必死に大人たらんとしていたのかもしれません。赤ちゃんの親、幼児の親、小学生の親、中学生の親、高校生の親と、もう親になって17年が経ちましたが、いまだに初めてのことだらけだなあと思いますし、果たして自分は子供たちにとって立派な大人なんだろうかと自問したりもします。
 長引く不況、政治不信、低い投票率、変化する価値観、それについていけない教育やリテラシー、僕自身もついていくのに必死だったり、次の世代に満足に夢を見せられていないんじゃないかと不甲斐なく思ったり、情けなく思ったりもします。と同時に、もしかしたら上の世代も同じように、戦争だ、経済成長だという激動の時代をサバイブしながら必死だったりしたのだろうかと思うと、案外そうやって時代は廻ってきているのかもしれないなと、ふと気持ちが軽くなったりもします。
 そんなことを考えながら、せめて自分は自分に嘘をつかずに、自分に誇れるような生き方をしたい、必死に生きて必死に家族を守って、そうやって全力で生きている背中を子供たちに見せられたらなと、願わくばその先に幸せを見つけられるような価値観を共有できたらいいなと思っています。

 セカンドアルバムの曲を並べてみたときに、ふと、このアルバム全体を包んでいるテーマは「愛」だと感じた、ということをリリースのときの紹介文に書きました。その中にはいろんな愛の形があって、僕が一人の音楽人としてここまで関わってくれたいろんな人たちへの大きな感謝の気持ちも大きいのですが、親が抱く子供への愛情というのは、いろんなものを超越しているなとつくづく思います。
 言わば、究極の自己犠牲、献身の精神。
 僕なんかはもともとワガママで自己中心的な性格なので、そんな自分でもこんな感情を抱くようになるんだという驚きもありました。僕自身も、子供たちのおかげで成長させてもらってきたという面もあるんでしょうね。
 「斜陽」のレビューでも書きましたが、自分の音楽人生はここまで紆余曲折ありながらも本当にシアワセなものでした。そんな素晴らしい人生を味わせてくれたすべての人たちに感謝するとともに、子供たちにも、彼らなりの豊かでシアワセな人生を歩んでいってほしい、彼らが生きていく世界がWonderful Worldであってほしい、と強く思います。そしてそんな営みそのものが、僕にとってのWonderful Worldなんだな、とも思います。

 レコーディングは、これもピアノの一発録り。
 優しく静かに歌う曲も今でこそ増えてきましたが、この曲がその道筋を示してくれたのかなという気もします。アルバム全体のトーンとしては決して底抜けに明るいわけではないですが、この曲で締めくくることで、アルバムの印象がとてもあたたかいものになったかな、とも思います。


 さて、2018年にアルバムをリリースして、そこからだらだらと続けてきたセカンドアルバム全曲レビューも、これでようやくフィニッシュ。やっぱり4年近くかかってしまいましたね。笑
 そんなタイミングで、サードアルバムのレコーディングも佳境に差し掛かり、春のリリースに向けて順風満帆、そう遠くない時期にみなさんのお手元に届けられると思います!
 サードアルバムのセルフレビューもやっぱり4年かかるのかな?こんなサイクルで怒られないかな?なんて思ったりもしますが、とにかく今はアルバム制作に全力を注ぎます!どうかご期待ください!
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「Wonderful World」全曲レビュー#9 ヒカリ

2021年11月26日 00時51分21秒 | レビュー

 ヒカリは、今回のアルバム収録曲の中では一番古い曲ですかね。2014年2月に自主制作シングル第2弾としてリリースしました。
 なかなか当時の記憶ももうおぼろげですが、その頃のことを思い返してみると、ファーストアルバム「最後の青春」をリリースしたのが2013年ですから、アルバムにその時点でのすべてをつぎ込んで、これがハマノヒロチカのアルバムです!という集大成を作り上げ、さあその次の一歩はどうする?という大事なタイミングですね。
 そして‥‥このブログでも何度も書いているので、いい加減飽きてきたかもしれませんが‥‥どんな手段を使ってでも売れたい、世に出たいと思って、バンドを組んだり、才能ある人を探したり、インパクトのある企画を求めたりと足掻き続けた時期が終わり、それよりも自分は歌うたいとして頑張っていきたい、という気持ちが芽生え始めた頃ですかね。
 このへんこのへんのブログにも当時の想いを綴っていますが、ハマノヒロチカのソロ活動は野狐禅解散後の2009年から始めてはいるけれども、本当の意味での歌うたい・ハマノヒロチカとしての人生は、この頃がスタートだったのかな、というのは今でも考えるところです。
 大袈裟に言うと、僕の中での大事なものや人生観などの価値観が大きく変わった、その入り口のタイミングで書いた曲だったな、と今にして思いますが、そのタイミングでこの歌を書くことができたのは、もしかしたら必然的なことだったのかもしれない。あるいは、この歌を書いたことで、自分の中の覚悟が確固たるものに変わっていったのかもしれない。いずれにせよ、自分の中で、ある種の決別をもって、歌うたいとしての新しい人生を歩み始めた、そんな時期の歌だなと思います。

 でも、「ヒカリ」はそんな夢への挫折と再起の歌なのかと言うと、それだけでもない。
 それこそ、そんな夢との別れも大きなものだったけど、例えば引っ越しや就職、転勤、失恋、結婚、あるいはもっと切実なものだったり、もっと深く悲しいものだったり、人生にはいろんな別れがあるもので、大切な人が増えれば増えるほど、そういう別れのタイミングも悲しいことに増えてしまいます。嫌だ嫌だと思うけれど、でもこれはしょうがない。
 例えば小説家が死んでも書いてきた言葉が残り続けるように、音楽家が死んでも作ってきた音楽が鳴り続けるように、それまで過ごした時間、想い出、風景、言葉、仕草、その時に言えなかったこと、いつか言おうと思って胸にしまっていたこと、そういういろんなものは、きっとそれぞれの場所で生き続けるのでしょう。誰しも、そんな風に胸に生き続けている言葉や想いがあったりするんじゃないかと思います。
 たまたま僕は、音楽家としての夢にこだわること、そこに邁進することが自分のアイデンティティになっているけれど、人によっては、大切な人に愛されることだったり、没頭できるものをとことん愛し続けることだったり、仕事で成功して巨額の富を築くことだったり、なにかしらの名声や評価を得ることだったり、いろんな形があると思いますし、またそのアイデンティティも、長い人生の中で、ときに失われてしまったり、揺らいでしまうこともあるでしょう。
 自己のアイデンティティの危機は、ともすれば人生の挫折にもつながりかねないほど辛く苦しいこと。でも、そんな経験を積み上げることで、人生はより強く、より豊かになってゆくんじゃないかとも思います。
 比喩ではなく本当に人生を賭けた挑戦だった音楽の夢への積年の想いと挫折、そして新たに見つけた新しい夢への挑戦への想いと覚悟。そんな時間を悩みぬいてきた自分にとって、ひとつの答えになる歌が書けたんじゃないかと、ちょっと大袈裟な表現になってしまうけれど、個人的なことではなく普遍的な人生の応援歌が書けたんじゃないかと、そんな風に思っています。

 歌詞は長いですが、一曲の中でここまで物語性のあるものを書けたというところは自分でも気に入っていますし、曲も非常にドラマチックな、やはりストーリー性のある曲になったなと思っています。よく、良い曲は映画一本分の感動が5分の中に詰まっているなんてことを言いますが、そこまでかどうかはわかりませんが、ある種の読後感に近いような満足感はあるんじゃないかなと思います。
 レコーディングは、井上大地&ANTONさんのチカチカバンドで。楽曲の持つストーリー性、ドラマ性を表現するべく、ドラムのパターンやギターのフレーズなどにもいろいろと要望を出してしまいましたが、二人とも意図するところをばっちり理解してくれて、より感情を衝き動かすような刺激的な曲になったと思います。
 特に、Bメロの揺れ動く感情を表現した部分や、大サビの衝動的な感情の昂ぶりを表現した部分などは、バンドのグルーヴと相まって、珠玉のテイクが録れたんじゃないかなと思います。
 メロディも非常にドラマチックなラインになっていて、歌うのも本当に難しい曲で、最初はなかなか歌いこなせず苦手意識があった曲なんですが、最近はようやく身体が馴染んできたような感覚があって、ライブでやるのがとても楽しくなってきました。

 願わくば、僕の書く歌も誰かの胸に残って、誰かの人生を照らすヒカリになれたらなと、そんなことを想いながら、この歌を歌い続けていきたいと思います。


ハマノヒロチカ「ヒカリ」@Roots 2020.12.28
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