のぞき穴のむこう

後援:博愛主義ネクロフィリア協会(嘘)

風の物語

2006-06-26 00:13:08 | Weblog
ずっと前から、題名だけ書いてそのままになってるページがひとつあって、
いつか手をつけようと思ったから消さないで残したんだと思うんですが、
どうにも内容が思い浮かばず、ここのところすっかり忘れてましたが、
今日いろいろ読み返してるうちに、思い出した。書いてみようか?


田舎とはいえ国道沿いは、交通量もそれなりに多くて。
このまま行けば、田んぼが畑になって、人家もまばらで。
夏の陽光が青くにじむにつれて、目の前にだんだん大きくなる山々も恐ろしげになってきた。
大きな坂の二車線道路。ごうごういう二輪四輪の排気ガスに追い立てられて、
歩道が切れるところで、ガードレールをくぐった。

しんと静まる田舎道。傍らには四角い廃墟。白いペンキがいやに生々しい。わざと目をやらず、そばにひょろんと立ってみる。背中に感じる無遠慮な振動。右と前と後ろの方と、それぞれ際立つ別世界。しらんぷりしてその境界にいる。つまんない顔。なにも見ない目。足元の草むらから突然、虫の声。

ライトを点けない軽トラックが、ごとごといく。山すそのくねった道に、ぽつんと明かり。あっちにふたつ、そっちにひとつ。右のを選んで歩を運ぶ。機嫌よくたどれるゆるいカーブ。ただ、ちょっとさびしげ。かび臭いコンクリートだったら、どうしよう。フェンスで囲まれてて、ぶーんと機械がうなってたりしたら、泣いてしまうかもしれない。

玄関の灯り。いまどき引き戸で、傍らに自転車。ちいさいのと、おおきいのと。
並んだ鉢植え。ふと見ると、真ん中の鉢にもりもりした白い幼虫が、涼しげに光ってる。見つけたら悲鳴を上げられるかも。ばたばたばた、からからん、しゅーってやられるかも。くびをふって苦しむ姿思って思わず腕を抱く。いい子、いい子だから、おいで。なかなか人差し指にのらないいもむしつまんで、薮にとまらせる。

あがりかまちは昔風。座れば便利だけど、10年後には高すぎかも。げた箱の上に、花。暗い廊下。

居間から明かりがもれている。がたがたん、とガラスの音を立てて戸をあけると、横になってテレビ見ているおじさん一人。

「ただいま。」

眉根よせた妙な顔。ふっと力が抜けて、腕枕。袋に手をつっこんで、つまみのイカ燻をあさる。

「ああ、ん。  おかえり。」

頭のそばに、膝つめて座る。気の抜けたナイター中継。紙パックのコップ酒。
今日、早かったんだね。
ん、早くもなにも、野良だから。日が落ちれば、終わりよ。なあ。
待つけど起こらぬ歓声。イカはもう残り少ない。
突如高まる緊張感。近づくエンジン音。どん。ドアが閉まる音。

ただいまー!
お。
ごめんね!遅くなっちゃって。買い物してきたけど、なんか作る?あら?
おかえりなさい。
・・・ほら、その、あれだ。
ああ、いらっしゃい。晩ごはん、食べてく?
ええ、あ、えーと、おかまいなく。
遠慮しなさんな。大したメニューじゃないし。さてさて。

晩ごはんは、煮魚だった。ぼくは好きだし、ぱくぱく食べた。でも、お子さんたちはご不満らしく。
またさかなー?    ・・・・。
また、じゃないでしょ?たまには魚も食べなさい。
お肉がいーいー。   ・・・・。
太るよ。また。やめたんでしょ、バドミントン。
だってさ?エロいんだもん。コーチが。   ・・・残していい?
だめ。ほら、さっさと食べる。見習いなさい、ほら。

集まる視線。ややうらめしい。ぼくはというと、箸をくわえて、目を白黒。

かこん。ざばー。お風呂の時間。白いパンツを眺めていると、浴室から響く声。
なにしてんのよ。入んなさいよ、はやく!
湯船に鼻までつかって息を吐く。潜水艦です。ぶくぶく。
それ、楽しい?
しゃぼんだらけでふわふわ。赤くなるまでこするこする。すりむけちゃわないか、心配になる。
いやに、その、念入りね?洗うの。
きれい好きなの!いろいろ汚いから。世の中。
弟くんとは、入らないの?
だってエロいもん。アイツ。こないだだって、
手が止まる。
なに?
まさかして。
え?
何みてんのよ!
え?え?

湯上りほてったパジャマ顔。ベッドに座ってしみじみ眺める。頬と髪にやさしく触れても、嫌がるそぶりはみせない。
寝た?
ううん。

鼓動が刻むものは

2006-06-25 15:34:42 | Weblog
 
そろそろ、なんかしないと。

なんかって、なにさ。

わからないけど、意味のある、なにかを。


意味のあることなんて、あるの?


じゃじゃーん!
やけくそ気味に大仰な身振り、振り上げた刃に集まる視線。
サァっと振り下ろせば血にまみれた夢のはじまり、
しぶき上げてのたうち飛び出る極彩色の世界の臓腑は、
みな真実の子供たち!おぎゃーっと産まれてぶちゅっと潰れて押し寄せ絡まりねじれ連なり積み上がっては倒れこむ!耳を裂くのは怒号か悲鳴か渦巻き地を這い穴を穿って流れ出す。四方八方惨烈凄愴阿鼻叫喚の地獄絵図。
じゃじゃん!
鼻をつまんだ興行師、タクトよろしく血刀を振るう。
最後はやさしいセレナータ。横笛は骨、眼窩の虫。慇懃なお辞儀を繰り返す。
ぱたんとオルゴール閉じるように。まぶたは重く、鎖にからまって、遠く夜空を想う。


勢いだけでわめくと、ぜんぜん違ったものになる。
ふしぎだけど、不気味。つま先でつついて、とびのく。
ちゃんと読み返して構成し直したりすれば、なんか“作品”めいてくるのかもしれないけど。





死体がいっぱい並んでるとこ、どこだ?

え?   ・・・霊安室?

ブブーッ!こたえは、                     さかなやさん!


 

無音調・分離回転式音叉発振機

2006-06-19 02:12:09 | Weblog
 
自分で読み返してみて、
へーって思うときと、なんじゃこりゃ?って思うときがある。

最近のは、どうも、


なんというか、つぶれたカエルみたいだ。

もう跳ばないし、鳴かない。




どういう動揺が隠されてるわけでもないのだが、
書く気が起きなかった。ぜんぜん。
ここに座って画面に向かうことが、忘れられたバカンスみたいなものになっていて、
半年前の手紙の封を、今さらながら切るような。
クーラーの壊れた部屋みたいだったのに。

机に便箋広げて、いちべつして、
一枚取り上げて、なんとなく4つに折って、
ペーパーナイフで正方形にしてみる。
ツルしか折れないんだけどさ、
よくできてると思わない?       これ。

指先でつまんで空をゆけば、窓の前通るたび模様みたいな文字を透かせて、ご満悦。
どこかで電話が鳴った?
羽の先に単語が読み取れて、鼻白む。
もっと小さく切り取るべきだった。
放り投げて、頭を抱える。



土曜、日曜と、ウィスキー飲みながらずっとゲームしてました。
ネットにつながってたりしない、ぼく好みなやつ。
ベッドの上でコントローラー握って、横になったりタテになったりしながら。
時にうなったり、悪態ついたり、うとうとしたり。

画面みつめてる間は確かにあったんだけど、今思い出すと、いやにソラゾラしい。
アレも、コレも、結局ただの作り物だからなぁ。うすっぺらの。



なんか、思い出さなきゃならないことがあった、みたい?
そうだっけ?えーと。




透明なケース

2006-06-07 02:08:00 | Weblog
車で事故ってひしゃげるように
ぽつんと死ねればそれがいい

今日でも明日でも今すぐにでも
ぱしんと弾けて跳べばいい

悲しいのでなく
寂しいのでなく
じっと座って見てるだけ

今を私をこの場所を
圧を痛みを絶望を