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元祖は「アマミノクロウサギ」訴訟。その内容を眺めると、「近代」へのマッスルな異議申し立てだった。

2023-09-16 00:12:18 | 京都大学


県が昨年計画を承認し、必要な許認可の審査を進めているが、県が事業者に求めた調査や保全策の一部がなされておらず、環境保護団体が見直しを求めている。
 こうした訴訟は、人間が生物の代わりに自然の価値を主張する「自然の権利訴訟」と呼ばれる。原告は訴状で、貴重な生物が見つかった予定地周辺の自然が破壊されると主張。石垣市が事業者と交わした協定書では、市が一部の土地を無償提供しており、適正な対価のない貸し付けや譲渡を原則禁じる地方自治法に違反するとしている。

という二番煎じに接した。

動物を原告に据える
という訴訟、
その元祖は「アマミノクロウサギ」訴訟。

この一見ユニークな訴訟は決して冗談半分ではなく、利潤追求を際限なく求める私 たち人間が、希少な動物たちの生命を脅かし、やがて私たち人間にも様々な影響を及ぼすことに なるという、自然との共生や私たち現代人の生き方そのものについて、南の島から大きな問題提 起をしているのだと、

判決では、
原告適格なしゆえ、訴え却下となっています。

が、
却下判決にして随分と丁寧に、
自然環境や原告の示した法的枠組みについて触れています。

四 本件訴訟の特徴  本件訴訟は、本件各ゴルフ場の 開発によって開発予定地及びその周辺地域の自然環境が破壊され、そこに生息する アマミノクロウサギ、オオトラツグミ、アマミヤマシギ、ルリカケスなど奄美の貴 重種である野生動物がその種の存続に大打撃を受け、これらの野生動物を含む奄美 の自然の「自然の権利」が侵害されるとして、奄美大島において野鳥観察活動等野 生動物の観察活動を行ってきた原告ら(別紙当事者目録(一)の自然人の原告ら) 及び同原告らで結成した自然保護活動団体である原告環境ネットワーク奄美が、自 然観察活動や自然保護活動を通じて奄美の自然をよく知り、奄美の自然と深い結び つきを有することから、奄美の自然の代弁者として、本件各処分の取消し及び無効 確認訴訟の原告適格を有すると主張して提起しているものである。本件訴訟の主要 な争点は、ゴルフ場開発予定地及びその周辺地域において自然観察活動・自然保護 活動を行う個人や団体に対して、ゴルフ場開発を許可した林地開発許可の取消し・ 無効確認を求める原告適格が認められるかどうかであり、ここでは「自然の権利」 という新しい概念を原告らに原告適格が肯定されるべき根拠として主張している点 に本件訴訟の特徴がある。

こんな文が付く判決は珍しいです。

しかしながら、他方で、自然の価値を侵害する人間の行動に対して、市民 や環境NGOに自然の価値の代弁者として法的な防衛活動を行う地位があるとして 訴訟上の当事者適格が一般に肯定されると解すること、そしてその根拠として「自 然享有権」が具体的権利として憲法上保瞳されているとまで解することは次のとお り困難である。

 原告らの主摂する「自然享有権」に具体的な権利性を認め得 るか否かについては、自然破壊行為に対する差止請求、行政処分に対する原告適 格、行政手続への参加の権利等の根拠となるような「自然享有権」の具体的な範囲 や内容を実体法上明らかにする規定は環境の保全に関する国際法及び国内諸法規を 見ても未整備な段階であって、いまだ政策目標ないし抽象的権利という段階にとど まっていると解さざるを得ない。 

自然に影響を与える行政処分に対して、当該行政処分の根拠法規の如何に 関わらず、「自然享有権」を根拠として「自然の権利」を代弁する市民や環境NG Oが当然に原告適格を有するという解釈をとることは、行政事件訴訟法で認められ ていない客観訴訟(私人の個人的利益を離れた政策の違憲、違法を主張する訴訟) を肯定したのと実質的に同じ結果になるのであって、現行法制と適合せず、相当で ないと解される。  


第四 終わりに  本件は、わが国で初めてアマミノクロ ウサギ等の野生動物を原告として提起された訴訟として注目され、一般には「アマ ミノクロウサギ訴訟」と呼ばれている。

こんな一文も見たことない。


このような自然保護に対する法的評価の高まりについては、原告ら、あるいは その他の自然保護団体による自然環境活動・自然保護活動等に負う部分も大きいも のと解され、その意味においては、原告らが、アマミノクロウサギをはじめとする 奄美の自然を代弁することを目指してきたことの意義が認められると言ってよい。 

なぜか褒めている。。。

わが国の法制度は、権利や義務の主体を個人(自然人)と法人に限っ ており、原告らの主張する動植物ないし森林等の自然そのものは、それが如何に我 々人類にとって希少価値を有する貴重な存在であっても、それ自体、権利の客体と なることはあっても権利の主体となることはないとするのが、これまでのわが国法 体系の当然の大前提であった

 現行法上でも、自然保護の枠組みとして、いわゆるナショナ ル・トラスト活動を行う自然環境保全法人(優れた自然環境の保全業務を行うこと を目的とする公益法人)の存在が認められており、このような法人化されたもので なくとも、自然環境の保護を目的とするいわゆる「権利能力なき社団」、あるいは 自然環境の保護に重大な関心を有する個人(自然人)が自然そのものの代弁者とし て、現行法の枠組み内において「原告適格」を認め得ないかが、まさに本件の最大 の争点となり、当裁判所は、既に検討したとおり、「原告適格」に関するこれまで の立法や判例等の考え方に従い、原告らに原告適格を認めることはできないとの結 論に達した。 


しかしながら、個別の動産、不動産に対する近代所有権が、それらの 総体としての自然そのものまでを支配し得るといえるのかどうか、あるいは、自然 が人間のために存在するとの考え方をこのまま押し進めてよいのかどうかについて は、深刻な環境破壊が進行している現今において、国民の英知を集めて改めて検討 すべき重要な課題というべきである。原告らの提起した「自然の権利」(人間もそ の一部である「自然」の内在的価値は実定法上承認されている。それゆえ、自然 は、自身の固有の価値を侵害する人間の行動に対し、その法的監査を請求する資格 がある。こ れを実効あらしめるため、自然の保護に対し真率であり、自然をよく知り、自然に 対し幅広く深い感性を有する環境NGO等の自然保護団体や個人が、自然の名にお いて防衛権を代位行使し得る。)という観念は、人(自然人)及び法人の個人的利 益の救済を念頭に置いた従来の現行法の枠組みのままで今後もよいのかどうかとい う極めて困難で、かつ、避けては通れない問題を我々に提起したということができる。

と絞める判決、見たことない。

世の中に一石を投じた、
という事件として、法学入門や民訴法では扱われます。
法学入門の講義にて、教官は


「アマミノクロウサギ訴訟の主任弁護士は、
前田ゼミ(民法)出身者」

と。
前田ゼミ(民法)は、
京大法を代表する名門ゼミです。

自然と実在するものと感じた社会が持っていた優れた部分を現代社会に応用する試みが必要なのであり、それが「自然の権利」運動である。訴訟が正義に関する思想を提起し、それが多くの人々の共感をよんだ時、正義の思想は現実の社会を動かす力となって現れる。
 

なお、
当方は、
籠橋隆明の(学部の)後輩ではあるものの、
前田ゼミ(民法)出身ではありません。


そして、思います。


一々、原告適格を引っ掻き回すよりも、
キッチリ条文・制度を作って、
客観訴訟で争えばいいじゃん
と。
消費者法には、クラス・アクションに近い制度もありますから。

アマミノクロウサギ野郎のように、
法解釈で無理に捻り出そうとする姿勢は、
筋肉使って、ビンの蓋を開けようとするようなもの。

重力と高低差を使って、ビンを割れ!

労苦をつぎ込まない方法を作って、
サクッと解決するも、
問題解決のアプローチ。


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