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滅多に使わない道具。事情変更の法理編。

2020-05-21 20:16:30 | 法学
は、結論から言えば、

愛知県(あいちトリエンナーレ2019実行委員会)の請求は立たない

でしよう。

その理由は、名古屋市の
「あいちトリエンナーレ名古屋市あり方・負担金検証委員会について」
にある
「あいちトリエンナーレ名古屋市あり方・負担金検証委員会報告書 」
に詳しい。

そもそも交付決定通知書の中で、3(4)「市長は、 負担金の交付決定後、事情の変更により特別の必要が生じたときは、負担金の交付の決 定の全部若しくは一部を取り消し、またはその決定の内容若しくはこれに附した条件を 変更する場合があります。」という留保条件を付していることから、この条件に当ては まるのであれば、交付されないことが明白なので、そのような無条件の期待権が発生す る余地はない。従って、交付するか否かは、専らその留保条件である「事情の変更によ り特別の必要が生じたとき」の解釈の問題に帰結する。
 
(事実1) 予め危機管理上重大な事態の発生が想定されたのにもかかわらず、会長代行には知らされず、運営会議が開かれなかったこと。 

(事実2) 「表現の不自由展・その後」の中止が、事前に会長代行には知らされず、 運営会議が開かれないまま会長の独断で決定されたこと。

(事実3) 中止された「表現の不自由展・その後」の再開が、事前に会長代行には知 らされず、運営会議が開かれないまま会長の独断で決定されたこと。

会長代行とは、河村たかし名古屋市長このとです。

本件の解釈に当たり参照すべき適切な判例は見当たらないが、このような場合に参考 となる契約上の法理がある。それは、「事情変更の原則」である。これは、信義誠実の 原則の一つの現れで、契約締結時の前提となった事情がその後大きく変化したことによ り、当初の契約どおりに履行させることが当事者間の公平に反する結果となる場合に、 契約の解除又はその改定を認めるという法理である。 

事情変更の原則」(事情変更の法理とも)の分かりやすい例は、

(戦中戦後の)ハイパーインフレ

です()。

これが私法契約上の当事者間の法理の問題であるのに対して、本件の場合は実行委員 会に対して名古屋市長が通知した交付決定通知書の中の「事情の変更により特別の必要 が生じたとき」の解釈の問題という違いはあるものの、信義誠実の原則の現れという同 一の趣旨に由来するものであることから、当該解釈に当たっては、事情変更の原則の要件を類推してよいものと考えられる。

「あいちトリエンナーレ2019実行委員会」という(愛知県と名古屋市とで構成される)民法上の組合に対する出資であると捉えれば、私法契約であると論理構成して、事情変更の原則を直接適用できる余地があるのでしょう。

ただ、前記の事実一ないし三からして、組合の実態が欠けるため、「あいちトリエンナーレ2019実行委員会」が事実上、愛知県の一組織に過ぎない以上、名古屋市による愛知県に対する行政行為であるという見立ても十分立つでしょう。
ならば、行政行為の附款「事情の変更により特別の必要 が生じたときの解釈問題となるでしょう。

どのみち、争点は事情変更の原則(法理)が使えるかどうか。
(要件周りは上記報告書でご確認ください。)

で、報告書の結論は、

(事実1)から(事実3)までに記載した通り、実行委員会会長たる愛知 県知事の実行委員会規約を無視した実行委員会の独断的な運営が、3度にわたり続いた わけである。このうち、とりわけ(事実3)展示の再開の判断は、極めて重要な事項で ある。本来であれば、規約第13条に基づき、運営会議を開催して他の委員の意見を聴 き、その結果に基づいて慎重に判断すべきところ、会長たる愛知県知事はそのような同 条に基づく措置を執らずに同条の規定を無視し、専決処分により独断で再開を決めてし まった……そこで、会長によるこのような実行委員会の不当な運営に対して、事情変更の効果と して、3回目として当初予定していた負担金の不交付という形で、名古屋市が抗議の意 志を表すということは、必ずしも不適当とはいえず、他に手段がない以上、当委員会は やむを得ないものと考える。 
 

つまり、事情変更の原則(法理)が使えるから、支払い拒否できる、
と。

この事情変更の原則(法理)周りについて、愛知県・大村らは今に至るまで一切、反論出来ていない。

さて報告書は続きます。
その意味でも、今回、実行委員会会長たる愛知県知事が実行委員会規約を無視し、運 営上の重要な事項である表現の不自由展の中止や再開等について運営会議を開催せず、 会長代行である名古屋市長その他実行委員会委員の意見を聞く機会すら設けなかった ことは、誠に遺憾の極みである。

憲法31条にも規定されている適正手続保障を念頭に置いた記述。
東大法・行政官出身の大村秀章が知らないはずのない規定です(一橋大法出身の河村たかし市長も当然知っているはずの規定です)。

その上で、その時々の名古屋市長が、市議会で認められた予算の範囲内で、負担金を交付するかどうかの判断を 行うことになろう。

この結びの一文は、住民自治・団体自治(憲法92条の「地方自治の本旨」)を念頭に置いた一文。

滅多に使わない道具も、きちんと使えるように常に備えておきたいものです。


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