メメント・モリ

このブログでは司法試験関連の受験日記・講座・書評について色々掲載していきたいと思います。

問題集:辰巳論文実況中継シリーズ 手形法 田邊光政教授 会社法 石山卓磨教授

2004-10-27 10:00:44 | 司法試験:問題集
 いまは答練の商法の時期ですので,商法過去問に関する情報をお伝えします。

 商法はその対象領域があまりに広く、しかも答練スケジュールの関係で十分な予習をせずそのまま進むかたも多くいらっしゃると思います。 商法の苦手克服について、即効性のあるものはありませんでした。答案のコツをつかむというより、広く確かな知識をどんどん蓄積していくことが安定した合格答案作成に効果的だと考えます。その意味で、答案を集めるより、基本書またはテキストをしっかり読み潰すことが攻略の鍵になります。
 とはいえ、あの広い領域について漫然と読んでいても、なかなか効果的な学習にはならないでしょう。まずは商法を好きになることが攻略への一歩と考えます。

 そこで、今回ご紹介するライブ本シリーズになります。両書は論文過去問を素材に、各科目の教授が関連論点を非常に興味深く説明してくださいます。手形法では比較法的観点から、会社法では実務や学説の状況を踏まえつつ、一見無味乾燥な論点を楽しく解説してくださいます。説明個所は司法試験レベルを超える場合が少々ありますが、知的興味を刺激するのに一役買ってくれるのでよしとしましょう。
 
 手形法では、田邊先生が人的抗弁について属人性説という少数説をとられているので、その点注意が必要です。問題数が少ない(H12初版では19問)ですが、少数精鋭で参考になる問題ばかりです。小切手法や為替手形など、予備校テキストでは説明しない個所を解説してくださいます。ただ、勉強があまり進んでいない方は飛ばしてもいいでしょう。出題可能性は低いです。 
 また、大きな特徴として、田邊先生の監修答案が実況中継シリーズ中もっとも出来がいいということが挙げられます。過去問参考答案としても、日常の学習に役立ちます。これは本当におすすめします。

 会社法は、頻繁に版の改訂が行われます。改訂の度に問題数が増加してゆくのですが、あれはちょっと多すぎではないでしょうか。ご自身で検討する順序を決めてから取り掛かることをおすすめします。

 最後に、ここ2年の商法の本試験は簡単でしたが、それ以前の問題を見てください。ギョッとする出題がされていることに気付かされます。「もうああいう難しい問題は出ないよ」と考えるかた、それは希望的観測に過ぎません。相手方は意表をつくことが大好きです。ここ2年の本試験の成績が良くても、必ず難問対策を怠らないでください。来年あたり、きそうな予感です。

10 コメント

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口述おつかれさまでした (TK)
2004-10-28 23:30:13
 田邊先生のLIVE本は買おう買おうと思いつつ、わからないことがある時にちらっと立ち読みする程度で済ませてました。

 昨日GMさんのコメントを見て、意を決して今日買って来たのですが、ほんとわかりやすく、細かいところまで説明してくれてますね。



 早速更新を開始してもらって、大変参考になるのですが、一つリクエストしてもいいでしょうか?

 もしよければ、各科目ごとに答案作成のさいに気をつけていたこと(特に答案構成段階でしょうか)、そこから遡っていい答案を書くために普段の勉強の際に気をつけるべきことといったことについてコメントしてもらえないでしょうか?

 時間に余裕があるときでいいので、できたらよろしくお願いします。
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TKさん (GM)
2004-10-29 00:54:22
ご要望がありましたので、お答えいたします。

答案作成の注意点は、各科目はもちろん問題ごとに各々異なります。私は答練を受講後「もっとああしておけば」という反省を必ずメモし、それが一定程度蓄積すれば、弱点や悪い傾向を抽象化して一枚のレジュメにしていました。



それで、以後の答練直前にそのレジュメを見返し、注意して答案作成するように心がけていました。それでも時々間違いをしてしまうのです。なんと物覚えが悪いんでしょう。

このレジュメを公開しても別に支障はないのですが、個人の弱点を抽象化したものなので、皆さんにとってはあまり役立たないと思います。



なお、おそらくTKさんが疑問に思われるのは「その反省のための材料・知識はどこから仕入れるのか」ということでしょう。

これは、採点講評とか、優秀答案の書き方、永山先生の本、参考答案とレジュメなどから断片的に寄せ集めていきます。決定版といえるものはないです。(ただし、今まで読んだ勉強法の本についてはまた追々講評していきますので参考になさってください。)

憲法(人権・統治)、民法事例、刑法、民訴一行、刑訴の捜査などは、ある程度方法論が固まっている、と言えなくはないです。ただ、わかりやすく説明すると、ひとつひとつについてブログ10回分は掛かりますので、今は勘弁してください。

エッセンスだけいうと、憲法人権:論理性、あてはめ以前を重視 統治:対立利益衡量、主権を意識 民法:請求権からの遡り型 刑法:体系の維持と趣旨、構成要件と実行行為、因果性、詐欺からの派生 民訴一行:原則例外、論理性の最重視 刑訴:原則例外、必要性許容性、歯止め、司法論文の原始形態 なんかが挙げられます。



最後に、弱点は人によって相対的なものですが、ひとつだけ、誰にとっても絶対にやってはいけないものがあります。

それは、問題文の読み違い、読み落としです。これをやった場合は本番では「死」とイコールであることを覚悟していました(択一にも妥当します)。これだけは絶対にダメです。
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論文の科目別方法論 (ドンパチ)
2004-10-30 19:54:47
非常に気になります!



教科書ガイドのような形で出品されることは

考えていらっしゃらないのでしょうか?



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長いコメント (TK)
2004-10-30 20:55:11
ありがとうございます。

やはり、反省ノートをつくるなど地道なことを繰り返すしかないんですよね。

何か絶対的な方法論があるんではないかと思ってしまうのですが、そんなものがあったら誰も苦労しないわけで。



刑訴で歯止めを意識するというのは大事ですね、しっかり意識しながら刑訴を勉強してみます。
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長いレスを (GM)
2004-10-30 23:06:58
読んで頂いてありがとうございます。TKさん、ドンパチさん。

TKさん:絶対的な方法論はありませんが、合格答案作成の技術のようなものは市販の書籍にいろいろ載っています。私が参考にしたのは永山先生の優等生シリーズのほか、セミナーの「論文合格の基礎」LEC柴田の「機械的合格法」法学書院の「サバイバルレースを勝ち抜く技術」などが参考になりました。 よければご参考にされてください。



ドンパチさん:方法論「だけ」を編集してガイドにするのは、市販の方法論を寄せ集めるだけになるので、作成する気はありません。各ガイドの中に適宜指摘するに留めます。



それよりも、私が受験生時代に必要性を痛感したのが、それらの方法論を備えた合格者に実際に答案を見てもらい、どこが今の自分に足りないのか、悪い癖を指摘してもらうことでした。私は常々合格したら、こういった担任制の添削をやりたいと考えていました。

本当は、全国の悔し涙を流す受験生のところへ行って、答案や勉強法を見て回りたいのですが、物理的に無理です。ネットならそれが可能なので、悩める受験生のため、なにか指針が示せたら、と今思案中です。今後の展開にどうかご期待ください。
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口述おつです (バーバ)
2004-10-31 16:05:19
商法ライブ本いいですね。さくさく読めるのであの厚さも気になりません。

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バーバさん (GM)
2004-11-01 10:12:40
厚さが気になりませんか・・・すごいですね。私なんかは会社法があまり好きではないので、いつも途中で失速していました。そういうときは後から読んだり、まん中から読んだり。
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レス遅れました (TK)
2004-11-03 23:31:33
実は、永山先生の優等生シリーズ、セミナーの「論文合格答案の基礎」、法学書院の「サバイバルレースを勝ち抜く技術」はすでにもってます・・・。



まだ(?)受験三回目なので、方法論以外の部分で足りないところがあるのに、方法論に走りすぎて、永山先生がいつかのガイダンスで言っていたように方法論過剰という状況に近くなってしまっているような気もしています。

今年は、合格者に答案を読んでもらえそうなので、積極的に弱点を指摘してもらおうと思います。
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「論文合格答案の基礎」 (mebidora)
2004-11-07 09:05:59
セミナーの「論文合格答案の基礎」、私も使っており、私の論文作成の原点になっています。GMさんはこの本、どう思われますか。これはどうかな??と思われる点がありましたらお聞かせいただければ幸いです。
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mebidoraさんへ (GM)
2004-11-07 21:28:45
 ファンダメンタル、基本的にはいい本ですよね。

 特に趣旨からの論証、必要性許容性のくだりはそれまでなんとなく論証を眺めていた自分にとって「本当に論証で必要な部分は何か」を考えながら読めるようになったので、効用はあったと思います。 

 アーティクルで連載されていた答案ゼミのような記事も、論点以前をよく認識されていて、勉強になる部分がたくさんありました。



 ただ、あの先生はなにか「青臭い」というか、思い込みの激しいようなニオイが文章からただよってくるんですよね(年齢に似合わず、心は学部生のような)。ネットでセミナーのへの不平不満をくどくど書いていたのを読んだ時も、言っていることはわかるんですけど、何かひっかかるものを感じました。 まあ、こういうことは勉強とは関係ないんですが。



 また、あの本は割と抽象性が高い話をしています。ここの勉強の中ではあの本の考え方が使えない「例外」も多かろうと思われます。 あくまで、答案作成の基本的姿勢を学ぶ本だ、という認識をもっていました。 論文答案作成のスタイルをまだもてない人には、是非読んでいただきたい本です。
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