木彫りの鳥の独り言

ちょい悪爺の懺悔録

アレサ・フランクリン

2023年01月23日 | 独善偏見音楽鑑賞記
 "白菜は太き尻して厚着して"
こんにちは、寒さ厳しい折ですが、皆さんお変わりないでしょうか。
過日、久々にこのブログを更新したところ、知人から心配していたとのメッセージをいただき
恐縮した次第、まぁ単なる筆無精と言う事です。
とはいうものの昨年は、妻が阪大病院へ転院して治験での遺伝子パネル検査による新治療への模索、
仕事の方ではコロナによる会社業務への影響、デジタルタコグラフ導入、インボイス制度、電子帳票、
2024年対策など、それなりに忙しく過ぎました、要するに貧乏暇なしということですな、へへ。

さて音楽の話です、、、
年頭に映画「リスペクト」を見ました、ソウルの女王アレサ・フランクリンの半生を描いた伝記ドラマです。
主演のジェニファー・ハドソンが歌唱力と演技で、アレサのちょっと形容しがたいような苦悩を突きつけ
60~70年代のアメリカでの公民権運動やベトナム戦争を背景にした黒人社会の宗教と音楽を活写した作品です。

あの当時のソウルミュージックとして私の記憶に残っているのは、なんといってもオーティス・レディングです
今、「ドックオブザベイ」のsittin' in the morning' sunの歌い出しを聴いただけであの頃のやるせない思い出の
数々がよみがえってきます、そのオーティスの「リスペクト」をアレサがカバーしたものが大ヒットになったそうで、
(私はオーティスのリスペクトのほうが好きですが)その映画の中でも描かれた1972年1月のロスアンジェルスの
パプテスト教会での伝説的なコンサートのドキュメンタリー映画が当時技術的な問題で公開されてなかったのが
技術の進歩により「アメージング・グレイス/アレサ・フランクリン」として公開されていました、早速見ましたが
予告編でティッシュじゃなくタオルとあったのが大げさじゃないほど、感動ものでした。
パプテスト教会の牧師である父親がゲストとしてスピーチを終えたあと、歌う彼女の歌声と表情に泣かされました
父母の離婚、母との死別、父親の暴力、協会関係者の性的いたずらによる12才での妊娠、出産、、、
神から授かった特別な才能はそれらのすべてを乗り越えたように思えます、まさに天才ですね。
アメージング・グレイスについては、きれいなメロディの曲としか認識がなかったけど、アレサの歌を聴くと
この歌詞の意味する事が腑に落ちてきます、それにしてもアレサの歌はすごいですな。
と言うわけでその Amazing Grace: The Complete Recordings (Live)やら、ARETHA等のCDを聴きながら早朝の
ジョギングに励んでいる次第、、、以上、今さらながらの "アレサ・フランクリン" の顛末です。
https://www.youtube.com/watch?v=WZJtU03FAAA ミックジャガーが映ってます!
https://www.youtube.com/watch?v=lGeKXvYzE80
宗教と音楽をテーマにした映画として「天才バイオリニストと消えた旋律」という2019年のカナダ映画も先日
見たのですがこれも秀作でした、原題は「The Song Of Names」でこっちの方が内容に合致してるんだけど
それはおいといて、1951年ロンドンで将来を嘱望されたバイオリニストがデビューコンサート当日に失踪すると
いうお話、ポーランド出身のユダヤ人である主人公がユダヤ教を棄教してバイオリニストとして生きていこうと
するが、両親兄弟がホロコーストで亡くなったのをロンドンの場末のユダヤ教教会でラビが歌う,口述で歌い継がれて
きた犠牲者の名前を聞いて知る場面で、あまりにも美しく悲しいミサ曲の旋律に衝撃を覚えた次第。
話の締めくくりで主人公が償いのコンサートで演奏したブルッフのVn協奏曲とアンコールで演奏したホロコーストの
犠牲者を悼む曲は深く心にしみました。

先日、毎日映画コンクールの受賞作品が発表され外国映画部門で「ベルファースト」が選ばれたそうです。
私も今年に入ってこの映画を見ました、泥沼のアイルランド紛争のさなか、プロテスタント教徒の一家を
描いたもので、対立するカトリックとの争いを少年の目を通して生き生きと活写したもので肩の力を抜いた
後味のよい作品でした。
ではこの辺で、、、
 "尾は長く黒ずくめなる猫寒の夜に

謹賀新年

2023年01月08日 | 独善偏見音楽鑑賞記
"寒き夜の絵に描きたるよな月と雲"

 遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。
無沙汰しておりますが、小生身体だけはすこぶる元気で過ごしております。

昨年は不安や焦燥を感じさせるようなことが次々と起こった年でしたね、一年を表す漢字は「戦」でした。
例年の如く年末恒例のN響の第九を聞きましたが、井上さんの指揮も見事、オケの技術もすごかった、でも
ケチをつける気はさらさらないけど、終楽章の盛り上がりに今までは感じてた明日に対する希望や高揚感が
いまいち湧いてきませんでした、、、やはり「戦」の字が重たかったですね。
年が明けてAmazon Musicでキリル・ペトレンコ指揮ベルリンフィルのチャイコフスキー6番悲愴が目にとまり
好きな指揮者なので聞いたんだけど、まことに端正かつ雄大な演奏、おまけに録音も優秀。   
ウクライナに出自を持つロシア人であるペトレンコのチャイコフスキーは、以前に紹介した鬼才クルレンティス指揮
ムジカエテルナの6番とは対照的な優しさと美しさにあふれた中間の楽章をたっぷりと聞かせてくれました。
でもエンディングは、やはり深い苦悩と絶望のうめきを冷たくつきつけます、今もウクライナなど各地で続く戦いや
抑圧された暮らしを強いられている人々を思うとつくづくとこの世の不条理と人間の業の深さを感じさせられます。

考えてみれば、私は私の生きてきたこの社会がここ70余年の間に少しずつ進歩してきたように思っていました。
根拠のない差別、弱者への思いやり、隠蔽された特権、情報の公開など改善すべきところについて遅遅としたもの
であるにせよそれなりに進んできたなと感じていましたが、昨年の安倍氏襲撃から明らかになった統一教会による
政権与党の取り込みやオリンピック開催にまつわる巨額利権疑獄、誰も責任を取らない組織の腐敗した体質など、、、
いやはや、この国はというよりも私たちはあいも変わらずなんだなと気落ちしてしまいます。

年が明けてから、防衛力強化が声高に論議されています、防衛問題がまっとうに議論されるのはいいことだと思う。
平和というものは、外交努力によってしか得られないと声高に訴える人物が周囲の人々には強圧的な態度で接して
まともな議論もできない、議論の帰結によっては暴力的手段で訴えるなんてことよく見聞きしてきました。
しかしいっぽう、関連予算が実現していけばまたぞろオリンピックみたいにミツに群がる蟻の如く(蟻に失礼やね)
権力やお金が生きがいの輩がワンサカわいてくるんでしょう、、、。

宗教の問題もそうですね、平和や愛を説く宗教家がご本人の家庭内でのトラブルも解決できないのに家庭の幸福を
説く、はたまた法敵を倒せと説くなんてのは普通に考えれば欺瞞そのものなのに信者は素知らぬ顔、なんて言うのは
信仰というものの不思議な面です、でも本当の聖人は至る所にいるんだと思うし、我々の内面にも清らかな面と
どす黒く汚れた面は混在しています(私なんか比率として後者が圧倒的かも、ふふ)
宗教にどのように接していくのか、科学技術がどんなに進んでも答えは出ないでしょうね、私は人それぞれでいいのだ
と思います、ただしあくまでカルト的な馬鹿馬鹿しいものは宗教ではないという前提です。

願わくば孫の時代くらいには世界から経済力や軍事力でなく文化や芸術でそして何よりも幸福度で一目置かれるような
ニッポンになってほしいなと思います、そしていつも自由にものが言える国であり続けてと願います。
うだうだと駄文を書き連ねました、我慢して読んでくださった諸兄、諸姉ありがとうございました。
皆様が息災なく過ごされますようにと祈念して、この辺で失礼いたします。

"はらからはいずくで光る冬銀河"