木彫りの鳥の独り言

ちょい悪爺の懺悔録

独善かつ偏見的音楽鑑賞記

2019年04月29日 | 独善偏見音楽鑑賞記
"10連休何処いく事もなく山笑う

まずはショパンのピアノ曲
BS 3/13放送のアリス・紗良・オット Pリサイタル
いつものごとく、スタスタとはだしのアリス登場 ピアノはスタインウェイ。
ノクターン9番 48番 時折見せるあのコケティッシュかつセクシーな表情とは裏腹の骨太なタッチの
演奏、やっぱり音楽演奏においてビジュアルはかなり重要やねとつくづく思わせられる。
アリスもデビューした頃の惹句は美少女だったけど、今や才色兼備、天は二物を与えとるという事ですな。
いつまでも才色を保ってほしいものであります。
さてメインのバラード1番です、実を言えば幻想即興曲と並んでこの曲は私の大好きな曲で、今まで
聞いてきた中で印象に残るのは2005年ショパンコンクールの優勝者である、ラファウ・ブレハッチの大阪公演
ショパンの再来と惹句された白のタキシード姿のブレハッチが奏でるキラキラと輝く音、最後の最後で聞かせた
半音階の上下するフレーズの喉に匕首を突き付けられたような緊張感、、、忘れられません。
アリスの演奏は淡々とした入り方から中盤にかけての盛り上げが実に巧み、ねばりつくように音を重ねて
最後は叫ぶような終わり、、、無茶な表現だけど、ちあきなおみと北島三郎をミックスさせたみたいな感じで
ありました、やっぱり聞かせるね!

Eテレ 4/21放送の反田恭平
アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ
聞き始めて思ったのは、なんか音の感じが違う、、、キラキラとしてスピード感があるけど硬いというのでもない
と思いつつピアノのロゴが映ったところで腑に落ちた、「FAZIOLI」のピアノだったんですね。
スタインウェイのグランドピアノみたいに低音が腹に響くことはないけど、すっきり出てる オーディオで
いえばJBLのモニターSPとB&WのモニターSPの違いみたいなもんやね(私のSPはB&W)目を引いたのはマイクの位置が
相当高かったこと、録音スタッフの魂胆やいかにというところですね。
この曲はこのピアノの音で聞くと一層キャラが立っていいですね、2曲目のマズルカはあんまり合わないかな、、、
反田恭平 いいですね、近年、日本の若手ピアニストはどんどん凄い人が出てくる、ヤマハの貢献大ですな。

同じくN響1906回定演
Pヤルヴィ指揮 アリョーナ・バーエワのRシュトラウスのVn協奏曲
この曲初めて聞いたけど、シュトラウス17歳の作品だそう。
冒頭から清楚でみずみずしく抒情たっぷり、こんな素晴らしいVnコンチェルトがなんでもっとポピュラーに
ならんのか不思議、演奏のA・バーエワはカザフスタン出身の黒髪が美しいエキゾチックな美人 いいですな。

メインのハンス・ロットのSym1 惹句はマーラーと同時代に生き25歳で世を去った天才の作品という事だったけど。
確かにマーラーに影響をあたえたフレーズなんかは感じられたけど、オケの演奏が大雑把な感じがして、、、
作品の完成度が低いのか、それともリハが足らんかったのか、私にとってはいまいちでした。
それとこの録音はホールトーン(暗騒音というべきか)のレベルが大きいのが気になった次第。

"背丈のび昨日より大人びてチューリップ 

ショパンノクターン20番とアワビ

2019年04月21日 | 旅行
先日、H交通社の伊豆半島周遊ツアーに連れ合いと二人で行って来ました。
飲みかつ喰うのがメインの熟年ロマン旅、体重1.5キロ増のおまけ付きツアーでした。

"桜花ひとひら浮かべ露天の湯"

二日目の南伊豆で泊まったホテルのダイニングでの夕食時、ショパンのピアノ曲が流れていて実にいい雰囲気
大体この手の観光ホテルのBGMは当たり障りのない万人向きの音楽を流してるんだけど、ここはチェックインから
ずっとショパンのピアノ曲、、、暮れ行く伊豆の海、暗がりの奥にかすかに見える伊豆七島を眺めながらビールを飲む
いやいや、ほんにショパンはこのシチュエーションにピッタリやねセンスいいわ、、、
目のクリクリした可愛らしい仲居さんにそのことを伝えるとにっこり会釈して次々とテーブルに置かれた窯の燃料に
点火、最後の窯に火をつけるとおもむろに蓋をとり「ごゆっくりお楽しみください」、、、中にはアワビがひとつ
熱さに苦しみくねくねと身もだえ、いつもそんなの気にせず食べてたけど、やっぱりショパンのノクターン、それも遺作を
聴きながらこんな残酷料理食べるというのはどうもなぁとつくづく思った次第、食べちゃったけど。

"ショパン聞き鮑喰いおり春の闇"   

愛を読む人

2019年04月20日 | 日記
"平成を惜しみて冴えり春の月"

先日、WOWOWで見た映画「愛を読む人」タイタニックでヒロインを演じたケイト・ウィンスレットが2008年の
アカデミー主演女優賞を受賞した作品だそうで、軽い気持ちで見始めたのに最後は深いため息をつくしかない
秀作でした。
ざっくり言えば1958年のドイツ、15歳のマイケルは21歳年上のハンナとベッドを共にし、彼女に頼まれて本を朗読
してあげるようになるが彼女は突然姿を消す、後年彼は在籍する法科大学のゼミで取り上げたナチスの戦争犯罪を
審理する裁判の法廷で被告として裁かれる彼女と再会する、彼女は実は文盲であったがそれを隠す為、甘んじて罪を
かぶり終身刑を下される、一方マイケルは鮮烈な青い性の呪縛から抜けられず結婚生活は破綻、一人娘とも普通の
親子関係が築けない、獄中のハンナにマイケルは文学作品を朗読しカセットテープに吹き込み延々と送り続ける
結末は、ハンナが送られたテープをもとに何年もかかって文字を覚え、ナチスの戦争犯罪の本を読むことで分かった
自身の罪の呵責から、ようやく刑務所からの出所が決まりマイケルが迎えに来る前日に首をくくり自死するというもの。

原作のドイツのB・シュリンクの「朗読者」新潮文庫も買って読みましたが、印象的なのはナチスの犯罪に対する
ドイツ人の考え、例えばマイケルはナチスの犯罪に加担したハンナを愛した自分もまたその加担者であると自分を
責める、ナチスの犯罪はそれほど重いものだったという事でしょう。  同じように隣国から戦争犯罪を責め続け
られる我々日本人、この国に生まれたことですなわちその責任を負わなければならないのでしょうが、先の戦争での
日本の戦争犯罪はいわば国同士の喧嘩による行き過ぎた殺傷行為、当然のこと謝罪反省は必要です、しかしナチスの
ホロコーストはあまりにも罪が重すぎます、そんな背景で進む裁判でハンナは文盲ゆえの重刑、原作では彼女の出身は
ルーマニアの田舎町とありました、おそらく彼女がロマ(ジプシー)出身だったと暗喩してるんですね。
ナチスによるロマの人々への抑圧はユダヤ人に劣らずすさまじいものでありました、伝説のロマ出身のジャズギタリスト
ジャンゴラインハルトの生涯を描いた映画「永遠のジャンゴ」なんかでも差別抑圧のすさまじさがよくわかります。

結局ハンナは差別から必死で生きのびた末、たどりついた安息の場は牢獄だったんですね。
映画で印象的だったのは、マイケルとハンナが自転車旅行の道中、田舎の教会で聖歌隊の子供たちが歌う美しい
旋律にハンナが聞き入り涙ぐむシーンでした、おそらく彼女が初めて聞く聖歌だったんでしょう、美しい音楽に
対する鋭い感性を持つすなわち祖にして野だが卑ではない人間の証です。

この映画の惹句に切ない恋物語とありましたが、それにしても切なく重い映画でありました、機会があればお近くの
レンタルビデオで探してみてください、ではこの辺で。

"鶯が巧みに鳴きて四月尽く"

桜満開

2019年04月07日 | 日記
"白蓮の花に露せり朝まだき"

前回の記事でフライングしてしまいました、新元号「令和」のスタートは5月1日からでしたね
読まれた方は1ヶ月の前倒しはないぞ、オイオイと突っ込まれた事でしょうな、いやはやお粗末さま。

当地の桜も今日あたり満開です、それにしても「桜花追われし如く咲いて散り」という事で
この先、季節はぐんと進み又一抹の喪失感を味わう事になるんでしょうね。

さて、半藤一利著 「なぜ必敗の戦争を始めたのか」~陸軍エリート将校反省会議 <文春新書>
という本を過日、新聞の書評で知り買い求めました、その感想です。
アメリカの国力を精査して正しい報告をした人は前線に飛ばされ、自国の国力統計には粉飾した数字で
取り繕う、参謀本部は仲のいいお友達だけで国を指導する、挙句は結論を先送りして益々の状況悪化
ひたすらヒトラーのドイツ頼みの他力本願、、、なんだか最近の世情と似ているような気もします。
大して進歩しとりませんな。

この極東の島国はどこまでいっても極東すなわち東の果ての国なんですね、近代までは、国境を接してせめぎあう
事もなく、異民族との戦いもなく、まして異文化との抗争なども経験せずにやってこれた稀有な国です
欲を張らず勤勉に猥雑だけど清潔、そんな東の果てのいっぷう変わった小さな国として新しい「令和」の時代が
続いてほしいと思います、というところで本日は統一地方選挙前半戦の投票日ですがどうも投票意欲がわきません
地方議会でこのメンツ、いかんなと重々わかっとるんですが今回は棄権であります。

"閻魔堂閻魔に供えし苺あり"