臺灣と瀬田で數理生態學と妄想

翹首望東天, 神馳奈良邊. 三笠山頂上, 想又皎月圓(阿倍仲麻呂). 明日できることは今日しない

1年目の授業がそろそろ終わります

2009-05-21 22:14:59 | 研究
台湾は6月の中旬で後期のセメスターが終わります。今年は、授業一年目、学部専門および修士相当科目として、前期には個体群生態学の数理、後期には進化生物学の数理の講義をしました。後期は自分の専門ど真ん中ではない分野のため勉強しなおしてから講義の準備をしたのでたいへんでした。でもこれは進化の基本も最近の理論も身につけるいい機会でした。進化分野では、古典的な論文も初めて読んで(NashのPNASの論文はただその短さに驚き、内容は理解できなかった・・・)自分がこれまであまり興味を持たなかった手法にも興味がわいてきて、実際、新しく始めた研究に生かされつつあります。そういう準備の過程も実際の講義もとても楽しかった。

局所安定性についても、高次の項の影響がなぜ消せるか、そういうところまで丁寧に説明しました。もちろん丁寧な説明がわかりやすいわけではありませんが。そして、前期も後期も確率過程を扱うモデルの導出とその挙動の説明に多くの時間を割きました。ここでこそ解析モデルの威力が発揮されると思ったからです。それに、ミクロな過程からマクロパターンの挙動を表す方程式を導く過程は、生物に限らずモデリングの根幹のような気がしたからです。おかげで黒板が数式だらけの講義になってしまい、うんざりした学生も多かったかとは思いますが、喜ぶ学生がひとりでもいたらよいのですが。思えば、平均的な学生が満足する講義というよりは自分が受けたい講義をしたことになります。

このスタイルは(来年も貫くかどうかわかりませんが)、科学を科学として初めて体験した高校時代の経験に大きく影響を受けていると思います。このリンクに今晩気づきました。F=maという右辺と左辺の区別もない「呪文」から始まるの魔術から、山本義隆さんの参考書と苑田尚之さんの講義が解放してくれたときです。すべて少数の原理から数学の力を使って導く、これが物理なんだとどきどきしながら必死でノートをとりました。

F=maとあまりに程度の差は大きいですが、線型化して固有値を計算するというプロセスも、そもそも微分という発明も、丁寧に教えないと、たとえば、「dy/dxは分数じゃありません!とか、極限とると 0/0!?」みたいな高校数学のように、「呪文化」してしまうんじゃないかという思いがあります。そういう思いが学生に伝わっていたのならよいのですが。眉間にたてじわを作らせるのではなく、自分が感じたようなどきどきを一人でも多くの学生に届けられる講義ができる、そういうものに わたしはなりたい

授業の参考にした教科書

前期
Dynamics and Bifurcations J Hale and H Kocak

A Primer of Ecology Nicholas J. Gotelli

数理生物学―個体群動態の数理モデリング入門 瀬野 裕美

ランダムな現象の数学 寺本英


後期
Evolutionary dynamics Exploring the Equations of Life  M Nowak

数理生物学入門 巌佐 庸
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