ドラ映画「新大魔境」同人創作小説
作:カビテル(横濱kabitan)
寝台特急に飛び込み、ボクはとある港町を目指した・・・・・・何故だろう、無性に潮の匂いを胸いっぱいに吸い込みたくなったのだ。
海岸近くの駅に着くなり、たまらず飛び降りた。目の前に広まる、白波立つ海に思わず飛び込んでしまった。散歩中の小型犬に随分吠えられたが、ボクは何とも言えない解放感に浸りながら、しばらく仰向けで海に漂っていた―海岸警備員が走ってきたので急いでその場をかけて逃げ出した。我ながら、年の割には子供じみた事したともおもいながら心で笑ってしまった。
子供のごろは本当に自由だった・・ドラえもんがいて仲間と色んな所に出かけて大冒険したものだった。ドラえもんがボクをしずちゃんに託して未来に帰り、二人にやんちゃな坊主が生まれその子ももう結婚してロケットで月へハネムーンだ。ボクもすっかり年を取ったものだ。しばらく、海岸線を当てもなく歩いていると夕暮れかかった浜の向こうから何ともずんぐりむっくりな懐かしい影があった―そう、ドラえもんだ!
「のび太君、ずぶぬれじゃないか!!」
と、聞き慣れたドラ声で叫びながら駆け寄っていつものようにポケットから慌てて関係ないモノ出しながら未来のドライヤーを取り出し急いでボクを乾かしてくれた。
「もうのび太君だら、いつまでもドジなんだから!!」
先の事は知らなかった様子。ドラえもんの後ろから、妹のドラミと玄孫のセワシが駆け寄ってくるのが見えた。
いつものように頭にタケコプターつけて、4人でボクの家に戻った。
ドラえもんたちを久しぶりに見たジャイアン・スネ夫は懐かしさに大泣きし、しずちゃんも抱き合っていた。皆で久しぶりに大冒険しようかという事になり、タイム風呂敷で子供の姿に戻ってどこにしようかと相談-ボクは、「あのイチの子孫たちが気になる」といったので皆でイチの子孫が地球から離れた所から、ドラミちゃんが的確に子孫たちの追跡調査した。
そうするとどうだろう!!
以前行った事ある、アフリカ奥地にあった犬の王国に行きついたのである!!大冒険から帰ってから妙に心に引っかかっていた妙な気持ちがはっきりした、≪どうして、あそこだけ犬が人間のように進化したんだろう?≫と・・・その後にいった恐竜から進化した恐竜人の国ではドラえもんが進化に介入していたけれど、火山噴火して地盤沈下によってできた盆地に残った犬が進化するのだろうか?出木杉君にも、何気に聞いたけれど頭がよく雑学な彼も「それは難しい条件じゃないかな」と首をひねっていた。確か進化にはちょっと無理な気がする―人間も部分的にいまだに解明できない所ある―そうか、あの犬の王国はイチの子孫が地球に戻って国を造ったのか・・・初代の王様もイチのように心優しい人だと思うと何とも嬉しくなる。
皆で、タイムマシンで初代王様バウワンコ1世が納める時代に向かった・・・
王国につくと、セワシ君未来人顔負けの随分科学が発達した街並みだった。前に王子のペコに話は聞いたがここまでとは思わなかった、ドラえもんはアニマル惑星に行ったときに使った動物ごっこ頭巾を出して
「皆これで化けるよう」
といって、皆で犬の頭巾を付けて着せ替えカメラで犬の国の服に着かえて早速街に繰り出した―人間がただ単に犬の頭巾しているだけのように見えるが、ひみつ道具の効果で他人から見れば犬そのものに見え子犬たちが連れ立って歩いているとしか思われないのである。随分街中には沢山植木や花壇があって、家のベランダから玄関先まで緑で埋まっていた。この時代では、王室はペコの時代よりは権力は強くないようで兵士も穏やかでボクたちを見ると
「転んだりするなよ」
交番のお巡りさんのように、声かけてくれた。
王宮の正面玄関だけでも見ようと、ペコと一緒に行った時の記憶を頼りにそれらしい方向に行った。王宮に向かう道すがら、がっしりした体つきをした高貴そうな人が木の下で休んでいたので、ボクはいつものうっかりでついその顔を覗き込んでしまった、その人はまさかの初代王様だった!!
それに気づいたボクは、思わず、小さく声を上げてしまった。その声を聴きつけた、王様がボクの方に顔向けた。巨人像の印象が強く怖い人かと思って縮みこんでいたら、
「子ども達か。これでも食べるか?」
と、後ろに置いてあった袋からお菓子を出してくれた。
気さくで優しげな王様だった、一瞬、顔にペコの面影が重なった―あっ、ペコもこの王様の血が流れているんだとおもろげに思いつつ王様に誘われて一緒に木の下に座る事にした。
お菓子を食べつつ、色々話していると王様がぽつりと
「こうして平和だから別にあそこまで行かなくとも・・・」
とつぶやいた。それを聞いた、ドラミは何気に訳を聞くとペコが言っていた兵器開発の事だったが子供には関係ないよと、途中で話を切って王様は帰り支度し始めた。
ふっと、王様が
「今夜、王子の誕生日だからおいて」
と誘ってくれた。
夜、民もやってきて王宮で王子の誕生日会がなされた。王子はペコに似た賢そうな子犬だったーボクたちも、ドラえもんのひみつ道具「手土産風呂敷」で土産を出して王子に渡した。王子も、見た事ないような食べ物に驚きながら目を輝かして喜んでくれた。
誕生会も終りかけた頃、部屋の後ろで王様が線の細いのともめていた。
丁度近くにいたセワシがその話を聞いていたー
≪何のために兵器開発するのだ?!このままでは地上を壊しかねないぞ≫
と、相手を諌めていた。
王様はいきり立ち相手を追い払った。王子は心配して寄り添うと、
「父様、どうしたんですか?」
「すまん、けんかしてしまった。悪かった」
と言って、王子の頭をなでると奥に行ってしまう。
そこまで見ていたセワシは、小走りにボクたちの所に戻ってこの事を知らせた。
その後は無礼講で、国民も兵士も一緒になって一晩王宮で騒いていた。うるさがったのでボクたちは、中庭の方に行くと噴水の所で王子がひとり寂しく座っていた。
優しいしずちゃんとドラミが声をかけると、王子がぐずりっぽく
「父様、いつもけんかしている」
と話し出した。王子によると、さっきのは科学者で無暗やたらと兵器を強化しているのを王様が諌めているが、一向に聞かずにいる。まさにボクたちの時代杜同じ事が、起こっているのだー確かに、王子の父様バウワンコ1世がそれをやめさせて兵器封印、技術を巨人像建造に費やす事にしたはずだが・・・王子によると、どうやらどこからか資材を調達してきて兵器開発しているとの事。そのため王様が気付かない内に次々と新兵器が出来ているという、いたちごっこになっているようだ。。
そういうのが黙っていられないドラえもんは
「それを止めようよ!!」
とやる気満々―やっばりドラえもんと行くと必ず大冒険になってしまう運命らしい。ジャイアンたちはいつもの通りにそれにのってセワシは話には聞いた大冒険展開に猛烈にワクワクさせていた・・・よーし、久しぶりにやるかぁ!!
翌朝、無礼講も終って人々がまだ日常へ戻っていった後王子の手引きでボクたちは研究所に忍び込んだ。気を配らないようで、ドアには鍵すらかけずすんなり中に入れた―外につながっている大部屋で人影もなく床一面に設計図やらよくわからない書付が散らばっていた。一緒についてきた王子に、手近に落ちているのを拾って読んでもらっていった。
そこには、ボクたちが以前ペコと一緒に戦った空飛び船や火を噴く車を発展させた兵器が書かれていた。大人になってから、悪大臣とその手下の科学者はよくあの兵器で世界征服考えたもんだなぁと、無知からくる愚かさに思わず笑ってしまっていたが、今手にした設計図なら可能になるのではという恐ろしい代物だった。
船は強固な装甲とそれにあった動力源を搭載し、先の科学者が乗っていた旗艦にあった巨人像も倒す大砲が常備となり、さらに破壊力強化された主砲が装備された主力艦が製造開発されー車も、火炎から大砲形式になり玉も火力増加が容易にできる計算がなされていた。一番恐ろしいのは、それらがすべて容易に大量生産できる設計になっていたのだ。しかし、さすがにここまで強化したために資材不足で基盤さえ製造が出来ていないらしい。ここで、この部屋にあるものすべて王様に出せば止められるがそれだけでは済まないような気がしたのは、大冒険した経験で感じた。
元凶は別にあって、それを捕えたうえで資材元を差し止めるべきであるー運よく、研究所には皆で隠れる所があったので科学者が戻ってくるまで身をひそめる事にした。
間もなく部屋の主が戻ってきたが、ボクたちが隠れているバンワンコ1世像のそばにあるソファで寝始めた。これでは、身動きできないーとうとう、暗くなるまでこの状況が続くことになったーかわいそうに幼い王子は少々ぐったりしてしまったようだが、がんばっていた。
夜遅くなり、すっかり王宮内が静かになるとふいに寝ていた科学者が起きるとカンテラを手に外に出て行った。ドラえもんも未来の省エネ電気カンテラを何個が取りだし、皆でそれを持ってその後をついて行ったー科学者は王国を囲む川を渡って、向こう岸にある絶壁にある洞窟に向かった。気づかれないようボクたちはかくれみマントで姿を消すと、空気ブロックで川を渡った。
洞窟では身を隠すところないので、ボクたちはそのままの格好でしばらく科学者と離れ離れずの距離でついていくと、急に空間が広まった。そこは古びた宇宙船らしきものがずらりと並んでいた。かなり切り取られていて、床に部品が沢山散らばっているーそこに後をつけていた科学者が、電動のこぎりで外装を切り取っていた。
それを見て、ドラえもんが
「あれ、きっとイチの子孫が乗ってきた宇宙船で忘れられたのをあの科学者が見つけ出したんだ」
そういえば、アニマル惑星でも同じ事あったーあれは、ボクたちが仲良くなった犬の少年が見つけ出して事件解決に使ったけれど・・・ここでは悪用されているー作業場の真ん中にあるテーブルの上に、かなり古びた本が置かれていた。
ボクは、うっかり根っこに足を取られて転んでしまった。ボクが倒れた音に驚いて科学者がボクの方に駆け寄るがかくれみマントのおかげで見つからずに済んだ。でも、ジャイアンにポカリとこっづかれてしまった。ぶつぶつ言いながら、切り取った部品を手押し車に乗せてまだ奥の方へ行ってしまった。急いで追っていくと、巨大な格納庫のような場所に出た。そこには、巨大な戦艦が造られていた。
セワシが
「両脇に太陽パネルまである!!」
ドラミも
「太陽が出ている間は無尽蔵に動かせるわ」
と、眉をひそめた。思った以上にとんでもないモノを作っていたのであった。
科学者は戦艦をしばらく眺めると、
「ほぼ出来上がった。一度実験飛行してみよう。古代の技術で一番難しかった奴だったが、これさえできれば他は簡単じゃわい」
ほくそみながら、さっきボクが見た古びた本を手にした。
彼はすぐに実験したかったようで、すぐに戦艦に乗り込んでいた。ボクたちはその後追って乗り込む。
戦艦は音もなく格納庫天井にある穴から飛び立ち、絶壁を超えて眼下に広まるジャングルを目指した。かなりの速度で、ボクたちが通った危険地域も難なく通り越してサバンナ上空まで来た。丁度、夜明け前で空が赤みかかっていた。
科学者は
「丁度いい、夜明けの太陽の光で試せるわい」
というと、両脇のパネルを展開させて発射準備を始めた。
「これはいけない!!」
とドラえもんは慌ててポケットに突っ込むが、こういう時はいけない―相変わらず役に立たないものばかり出す。ドラえもんがほうり出したのをふっと見たら、なおしバンこわしバンがあった。
それに気づいたスネ夫が
「これって貼るだけで機械が使えなくなる奴じゃん!!」
と拾い上げ、うまくパネルの付け根に貼っていった。
意気揚々と、エネルギー充填していた科学者が急に吸収しなくなったのでどうしたのかと操縦席をいじっていたらそれが悪かったらしく、そこから黒い煙が出てきて突然爆発した。その途端に戦艦が墜落し始めた。ボクたちは慌てて逃げ出したが、運悪く当の科学者が逃げそびれて恐れおののいていたのをドラえもんが見て見逃すことができず、拾いに行ったー
夜が明けたサバンナ平原で燃え落ちた空中戦艦とボクたちと腰を抜かしたまま呆然としている科学者―
王子は散々科学者をなじっていたが、その科学者は肝をつぶす思いしたのですっかり魂が抜けた様子だった。
ドラえもんは、科学者をなじっていた王子の肩に手を置くと
「大丈夫だと思うよ、自分で造ったもので肝つぶすような事あったからこれからはこんなものは造らないだろうし・・」
ドラえもんが言うように、造る造らない以前にもうこれは決定的なものだったー王国に戻ると、これまであった事を王様に知らすとすぐさま兵器開発製造は封印され、ボクたちが見つけた宇宙船群や古代技術は王様をモデルに巨人像が建造に利用した後、それも封印された。
王様も、これからは二度とそうした技術と兵器が使われないよう複雑な仕掛けを施し今後王家の秘密とすることを決めた。
ボクたちは、久しぶりの大冒険を終えて帰ることにした。最後、王子の名前を聞いていなかった事に気づいたボクは聞いてみたー
「クンタック」
―何か運命のつながりを感じた。
現代に戻って、一瞬達成感と満足感を持ったがすぐ次には
≪あっ、まだ時間改変しちゃった≫
と、ボクらの心に去来した・・