転がる雪だるま

10年間に渡り借金をし続けた。最初はすぐ返すつもりだった。絶対返せるはずだった・・・

多重債務道<完> 春の追憶

2008年11月04日 | 多重債務道
東京の会社に入社をして3ヶ月がたった。会社の寮から満員の電車を乗り継ぐ生活も慣れたものになった。給与は妻が持っている通帳に振り込まれ、自分の生活費分で7万円を振り込んでくれる。必要なものは殆んど寮に揃っているので、毎月使うものといったら食費と交通費、たまにある会社での飲み会ぐらいであった。

昔は毎日のようにやっていたパチンコも一年近くやっていない。一度完全にやらなくなると今更ながら「お金がもったいない」という気持ちになった。タバコも毎日少しづつ減らし半年後には完全にやめる事に成功した。しかしタバコをやめると口が寂しいのか、ついつい食べ過ぎてしまうので体重が増えてしまった。

毎月安定した給与が入る事になり弁護士さんに毎月3万円の銀行振り込みを行い任意整理した計画通りに返済を行っている。

お盆休みには帰省し、久しぶりに直に見る元気そうな妻の顔と大きく成長した子供も顔を見ると、今まで溜まっていた仕事の疲れなどは直ぐに吹き飛んだ。楽しく1週間を家ですごし、また東京での生活に戻った。その後も、がむしゃらに働いた。家族に今までの迷惑をかけたお詫びの気持ちも込めて一生懸命働いた。

半年の研修期間が終わり正式な部署に配属になる時が来た。自分の希望通り営業部に配属となったが、運がよく来年度より妻と子供がいる自分の地元に営業所が出来るので、来年度から、そっちに行ってくれという事になった。自宅から出勤できる出来る事になり妻に言うと大変喜んでくれた。子供はミッキーさんに会う前にパパが帰ってくるという事で大変残念がっていた。

年が開け自分を含め数名の上司や同僚と共に営業所の立ち上げの為、半年振りに自分の家に帰郷した。営業所を立ち上げ営業所として機能するまでは忙しがったが、ふた月もすれば平穏な感じの勤務となり余裕が出来た。



桜の咲く季節となり、自分は家族、仕事、自己再生と充実した日々を送っていた。

息子が「パパ休みなら、どっかに連れて行ってよ~。暇だよ~。」と言って来た。妻も「たまにはみんなでどっか行って、外でお弁当でも食べない?」「弁当つくるよ~」とはりきっている。どこに行こうかと悩んでいる自分に、妻は子供の幼稚園で行った事あるからと公園に案内してくれた。

その公園とは自分がバイクで何回も行った公園だった。最後にこの公園に来たのは一年半前。冬が近い夜中、警察官に職務質問された日以来だった。自分がよくバイクを止めた駐車場に車を止め、妻と子供と自分と仲良く手を繋ぎ公園に入っていった。

以前に自分が来た時の様な静粛さはまったく無い。自分が見上げていた木々の枝は沢山の青々とした葉が付き葉と葉の間にはピンク色の花が咲いていた。綺麗な桜の花々が春を主張していた。

公園のいたる所から子供の声が聞こえてくる。
息子はあの大きなトンネルの滑り台に走っていった。
「ぱぱー。すべりだいにのりたい~」

滑り台に夢中になっている息子を見ながらも思い出のトンネルに入ってみた。

色んな思いが頭の中を駆けめぐる。

過去の人とこの公園に来たのも桜の咲く春だったかな?

死のうと考えた事もあった・・・

甘酸っぱさと切なさの思い出に浸ろうとした瞬間

妻がトンネルの入り口からニッコリと顔を覗かせる

「パパ、お昼にしよー」

ふと自分は我に帰った。

「ねぇ、ぱぱ~、ご飯たべようよ~」息子も催促する。

自分は過去の思い出に浸るのはしばらくの間止めようと思った。

決して過去を投げ出せるわけじゃなく、借金を踏み倒した訳じゃない。

事実は事実として生きている間、永遠に心に残る。

でも今の自分に必要なもの、大事なものは今の家族だ。

「家族で幸せになりたい」

ただそのひとつの思いが自分の行動を変える原動力になってる。

「二度と同じ過ちはしない」

永遠に自分と妻に誓った。


永遠に・・・



トンネルから出ると太陽がまぶしかった。




「ぱぱ、ふんすいにいきたい~」息子が走り出す。





「よしっ!」





自分は陽が当たり




キラキラしている




噴水と未来に向かって




走り出した  









にほんブログ村 その他生活ブログ 経済苦・借金苦へ

人気ブログランキングへ

今まで読んでくれたみなさん
本当にありがとうございました。
この多重債務道は1996年から2008年5月までの事を綴っています。
今後何か変化がありましたら「転がる雪だるま」内で報告致します。
gomi






最新の画像もっと見る

30 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
泣いちゃいました。。。 (ちぇりー)
2008-11-04 08:23:21
辛い、辛い冬の時期を家族の愛情で乗り越えて、普通の生活に戻れたgomiさん、本当に良かった。。

画面の前で泣いてしまいました。

思い出の公園、今後も行く度に色んな事を思うんでしょうね。

ちぇりーは借金はしたことないけれど、gomiさんのブログを見て、人間辛い事があっても努力しだいで本当に再生出来るんだ。って改めて勉強になりました。

gomiさんの話、本にならないかな~ そしたら絶対に買うのに!

お疲れ様でした。&これからgomiさんはどうするんですか?

もし良かったら今度は系統の違うブログ作ってみませんか? 何かあればすぐに見に行きたいので、是非教えてください。
返信する
良かったです。 (なお)
2008-11-04 09:48:07
最後というか現在はどうなんだろうと
心配しながらいつも更新を心待ちにしていました。
奥さんと会社から逃げているあたりは読むのが
辛かったです。
現在は、普通でいる幸せを手にしていらっしゃるようで
安心しました。
更新お疲れ様でした。
返信する
思わずコメントしました。 (通りすがりの旅人)
2008-11-04 09:57:30
いい話でした。ありがとう。
あの時選択を間違えなくてよかったね。
声をかけてくれた警官たちに私も感謝します。
二度と借金という間違えをしないでね。
今度は楽しい報告を待っています。
返信する
初めてコメントします (まめ)
2008-11-04 12:48:56
ずっと更新を待って読んでいました。
私は今も苦しんでいます。でも頑張ってみます。
これからもご家族で幸せに暮らして下さい。
ありがとうございました。
返信する
Unknown (Unknown)
2008-11-04 23:11:50
まるで小説みたいですね。
稀なケースだと思います。

楽しい時間をありがとうございました。

ハッピーエンドでよかったです。
返信する
最後はハッピーエンド (サライ)
2008-11-05 14:11:21
一度、コメント致しました。

今は落ち着いた生活をおくっていらっしゃるようで何よりです。奥さまの葛藤も凄かったのではないかと思います。借金を返して生活するというのはストレスもたまりますし、信じれるのか?ということをいつも考えるだろうと思います。
私は設計事務所を営んでおりますが、借金という文字が頭から離れることはありません。事業を起こすというのは借金から逃れることはできません。今 大丈夫でも少し先にはあなたと同じようになる可能性があります。

これからも家族が仲良く暮らせますよう祈っております。
返信する
Unknown (S)
2008-11-05 22:19:34
関心高く、最後まで拝読しました。

最終回はちょっと昼ドラのような低イメージでしたけど、事実であればそうなのでしょうね。

任意整理終わるまでが一つの目安でしょうね。
この整理が終わったら、またご報告されてください。

本当にお疲れ様でした

返信する
ちぇりーさんへ (gomi)
2008-11-06 02:42:01
最後まで読んでいただいてありがとう御座います。
今、返済進行形ですが、これで終りと言う事無く最後まで無事に払い続けて借金はゴール。&新しい人生のスタートと思ってます。

ブログは前半の1~40話ぐらいまでは改行が変でおかしな文章も多々あるので少しずつ修正を行いたいと思ってます。
消費者金融がらみの話題等も書けたらなぁと思いますので少しずつは更新する予定です。
新しいブログも楽しそうですね。今度は軟派なブログも書いて見たいですね。

返信する
なおさんへ (gomi)
2008-11-06 02:52:10
コメントありがとう御座います。

現在は普通の生活をしていますが、ここまで来るには自分なりに多難の道のりでした。
現在は直りましたが円形脱毛症にも悩まされました。

多重債務道はしばらくお休みですが、他の借金がらみの話題を書けたらなぁと思ってます。

今後も少しずつですが更新していきますのでよろしくお願い致します。
返信する
通りすがりの旅人さんへ (gomi)
2008-11-06 03:02:28
コメントありがとう御座います。
そうですね。あの警察官2人には大変感謝しています。あれが無ければと思うと、人生って本当に連続したタイミングの流れの中にいるんだなと思います。

そう考えると、他の面も含め自分は本当に運が良かったなと思います。今こうしているとやっぱり生きるってすばらしい事なんだと実感しています。
もう、二度と同じあやまちは犯しません。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。